安倍首相が隠す参院選の裏テーマ「憲法改正」~田原総一朗インタビュー - BLOGOS編集部

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※この記事は2016年06月21日にBLOGOSで公開されたものです

今後の国政の行方を大きく左右する参議院選挙がいよいよ6月22日に公示される。18歳選挙権の解禁が注目を集めているが、肝心の争点はいったい何だろうか。田原総一朗さんにポイントを聞いた。【亀松太郎】

■消費増税の「再延期」は争点ではない

今回の参院選で、争点の一つとされるのが経済政策だ。世界経済の悪化を理由にして、安倍内閣が「消費税増税」を再延期したことに対して、野党は「リーマンショック前に似ているという安倍首相の言い方はウソだ」と批判している。しかし、「増税の再延期自体に反対だ」という野党はいない。つまり、消費税は争点ではない。

また、野党はアベノミクスは失敗だったと批判しているが、それに代わる具体的な経済政策を示すことはできていない。したがって、経済政策が争点化しているわけではない。

参院選の隠れたテーマは「憲法改正」だ。

ただ、自民党は憲法改正を前面には出さない。安倍内閣は常にそうだ。2014年12月の衆院選のときも、アベノミクスで安保関連法を隠して、選挙を戦った。そして、選挙が終わると安保関連法を持ち出して、国会で成立させた。今度も同じだと思う。

なぜ、自民党が憲法改正を争点に持ち出さないのかといえば、国民の半分以上が憲法改正を望んでいないから。もし自民党が憲法改正を進めるなら、民進党を抱き込むような憲法改正を打ち出すべきだ。

たとえば、自衛隊を正式に認めるような条項を入れるというだけの憲法改正ならば、民進党も乗るし、国民の支持も得られると思う。何をするか分からないという憲法改正では、国民も支持できない。

自民党が2012年に発表した憲法改正草案では、9条に「国防軍」という条項が追加され、戦力や交戦権を認めている。言ってみれば、イギリスやフランスのような「普通の国」の軍隊と同じようにしたいということだ。このような改正案だと、国民の多くは賛成しないと思う。

自民党は昨年、憲法解釈を変更することで、集団的自衛権の行使を認めてしまった。そのため、憲法をわざわざ改正する必要がなくなってしまったともいえる。それでも、自民党が憲法を改正したいのは、公明党の要望で集団的自衛権の行使に新3要件がつけられたのが気に入らないのだと思う。

現状のままだと集団的自衛権を自由に行使できない。自民党はフルスペックの集団的自衛権を行使したいので、そのためにはやはり、憲法改正が必要だ、と。

だが、自民党はそういう「憲法改正の本音」を今回の選挙でも明言しようとしない。安倍さんが総理になったのは、憲法を改正したいからだが、そこを隠したまま、選挙に臨もうとしている。