「共産党は貧困対策と格差の是正」【各党に聞く福祉・若者政策】 - BLOGOS編集部

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※この記事は2016年03月22日にBLOGOSで公開されたものです

今年7月に実施される参院選。憲法改正の争点化や18歳選挙権などに注目が集まっているが、各党は福祉・若者世代向けの政策についてどのように考えているのだろうか。

BLOGOS編集部では参院選に向け、主だった党の担当者にインタビューを実施。今回は、日本共産党所属の田村智子参議院議員に話を聞いた。【大谷広太(編集部)】

■国民所得の底上げを図ることが重要

ー御党が解決すべき課題とする社会保障・社会福祉分野での課題、とくに若者向けの政策にはどのようなものがあるのでしょうか。

田村:いま私たちが取り組まなければならないと思っていることは、貧困対策と格差の是正です。経済や財政、社会保障の悪循環を断っていくためにも、国民所得の底上げを図ることが重要なのではないかと考えています。

具体策は対象とする世代によって様々ですが、とくに若年層に関して言えば、”働いても安定した生活ができない”ということが根っこにありますから、まずは「最低時給の引き上げ」が挙げられるでしょう。

昔は「時給」といえば、家計の補助として働くパートの専業主婦や、学生のアルバイト、といったイメージが強かったと思いますが、今は違います。「時給」で生きている非正規雇用の社会人がどんどん増えています。でも、生計を立てるためには時給は1000円でも追いつかないん。ですから、それこそ長時間、休みなく働かなければ生活が成り立たないという人たちが大勢出てきています。

最近、「最低時給1500円」を掲げて運動している若い方々(「ファストフード世界同時アクション」など)がいますが、そうした声にどこまで応えられるか、というのが我が党の参院選に向けて政策検討の柱になると思いますね。

彼らの「ファストフードの価格が東京と地方で違いますか?それなのになぜ時給が違うんだ」という訴えはユニークですが、とても真っ当な意見です。大都市圏の時給だけが高いことが、「一極集中」の大きな要因でもあると思いますし、地域の産業を育て、人材を育てていくためにも、全国で同一額になるよう最低時給引き上げを実現させるとともに、中小企業の支援もしたいと思います。

それから、安倍首相が「同一労働・同一賃金」とおっしゃっていますが、やはり非正規雇用が不安定な一番の要因は、契約期間が定まっているということですよね。今やもう半年ごとの契約が当たり前。3ヶ月ごとという人もいますから、これではいつ切られるかわかりません。「育休も取れます」と言うのですが、それは育休から復帰したあとも契約が続くという前提がある場合です。もっと言えば、妊娠した時点で「それが理由ではないよ」と言いつつ、契約を切られてしまう可能性もあると思います。これでは家庭を持つという希望は持てません。「その仕事は本当に半年で終わるんですか」と、企業に問いかけるような政策が求められていると思います。

■ものすごく身勝手な政府与党の政治

ー女性のお話が出ましたが、政府与党の政策を見ていますと、女性の社会進出と少子化を同時進行で解決しているように見えます。

田村:非正規雇用の女性が多いという課題を解決しないまま、「働きに出て、子どもも産んでね」というのは、やはり女性の立場から見ると、ものすごく身勝手な政治だと思います。

まさに私たちが「男女雇用機会均等法の最初の世代」と言われているんですが、女性たちが社会に出て働こうとし始めた80年代、女性の正社員が増えてくると「子どもは3歳まで子どもを母親が見るべきだ」という「三歳児神話」みたいなものが流布され、政府与党は保育園を作りませんでした。働くこととの両立支援はあまりに弱く、産むのを諦めてしまう女性が増え、少子化も激しくなっていきました。すると今度は「将来の働き手が足りなくなる、じゃあ女性に出てきてもらわないと困る」と言い始めました。そのような歴史の繰り返しだったんです。

最近も、政府与党は「待機児童ゼロ」と言っていますが、まともに予算をかけているかといえばそうではなく、「できるだけ安上がりに」ということで、最低基準を満たさない保育園の設置や利益目的の株式会社の参入を加速させています。こんなことをやっていたら少子化に歯止めがかかるはずがありません。

「なにゆえ少子化がこんなに進んでしまったのか」、という分析も反省もないままに、「女性の活躍」「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」などと訴えるのは、あまりに無反省です。

■「高齢者か、若年層か」という選択自体が"お門違い"

ー高齢者世代のケアも必要ですが、年金も含め、若年層にとっては負担感ばかりが増していく「世代間格差」の問題もあります。

田村:私は「高齢者を取るのか、若年層を取るのか」を選択させるという発想自体がお門違いなのではないかなと思います。

安倍政権になって、公共事業予算は最初の年で5兆円台から7.9兆円(決算ベース)になり、以後7兆円台をキープしています。防衛予算も同様に"枠の拡大"を続けています。ところが社会保障分野に関しては、「枠を抑えなきゃいけない」と言い続けているんですよね。

つまり、社会保障費の中での予算の取り合い自体が間違いだと思っているんです。もっと国の予算全体を見て、「社会保障分野を取るのか、それ以外の分野を取るのか」という選択こそが求められていると思うんです。

さらに言えば、高齢者も子どもも、どちらも基本的には女性の方が支えているんですよ。そこに「どっちか」なんて言われたら、いつまで立っても女性は浮かばれません。やっと子育てが一段落したかなと思ったら、今度は親の介護なんですよ。そこで介護へのサポートを抑えられてしまうと、「自分の人生をこれから豊かに…」と思っても、介護に自分の給料や資産をどう振り分けるか、頭を悩ませることになってしまうのです。私自身もその世代に差し掛かっています。子どもの教育費負担ではあと数年ですがに、今度は親の介護をどうするか、考え始めなくてはと思っています。

女性がまともな給料を得られれば、保険料収入も増えるわけですから、いつまでも女性たちはパートで、保険料を払うか払わないかのギリギリところで働いて、その中で子育てや介護も支えますではダメなんですよね。それでは行き詰まるというのがこの30年で明らかになったのではないでしょうか。

また、社会保障の一番の土台は保険料ですから、働いている人の給与が減ってしまうと、納める保険料も総崩れになってしまうんですよね。そういう意味で、所得の底上げをやって、保険料収入を確保するというのが社会保障にも物凄く大切なことです。

ーこれまでも日本共産党は大企業の内部留保の問題なども訴えていますね。さらに企業や実業界が従業員の待遇改善をしっかり実行するよう、働きかけていくと。

田村:やはり非正規雇用の方々の使い方が自由すぎるんですよね。その仕事はどう考えても季節繁忙でもなければイベント的に発生した業務でもない、基幹的な仕事でしょうと。そのようにずっと続く業務で5年も10年も働いているのに非正規雇用のままなのは、おかしいでしょうと。そういう方は正規・無期限で雇えと。ボーナスや退職金も差別するなという法的規制をかけなければ、やはりいつまで経っても解決しないと思いますよね。

そういう、人をモノ扱いしないような規制を、法律によってかけるというところに踏み出さないといけないと思います。お願いベースではダメです。

ーそうすることで、若者の給与もあがり、社会保障費にも回っていくと。

田村:まさに好循環だと思います。

■雇用の課題では民主党さんと相当に一致

ー民主党も含めた、選挙協力の話も出ていますね。社会保障の分野でも一致できますか?

田村:「税と社会保障の一体改革」は民主党政権時代に始まっているという事実はありますが、「人間のモノ使いはやめさせよう」という雇用の課題では民主党さんと相当に一致しています。また、国民の目から見て「経済が良くなった」と言えない以上、消費増税は無理でしょう、というのも意見もあると聞いていますから、大いに対話しながら、国民目線で物事を見ていけば一致できるところはたくさんあるのではないかと希望を持っています。

(たむら・ともこ)1965年 長野県小諸市生まれ。早稲田大学第一文学部に入学、学費値上げ問題で学生の声を代表する論陣を張る。日本民主青年同盟東京都委員会勤務 日本民主青年同盟中央委員会常任委員 平和などの分野で青年運動の先頭に立つ。 1995年より8年間、日本共産党国会議員団事務局に勤務、石井郁子衆議院議員秘書、井上美代参議院議員秘書として活動する。 この間、日本共産党の参議院比例代表候補(1998年、2001年) 衆議院比例東京ブロック・東京13区候補(2005年)参議院・東京選挙区候補(2007年)として活動。家族は夫と一男一女。

日本共産党 参議院議員 田村智子
・@tamutomojcp - Twitter