※この記事は2014年10月16日にBLOGOSで公開されたものです

「原発立地県の首長」として積極的な言動が目立つ新潟県の泉田裕彦知事が10月15日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見をおこない、原発の新しい規制基準について、住民の安全を十分に確保できるものになっていないと指摘した。また、新潟県内に立地する柏崎刈羽原発については「再稼働の議論をする段階にない」との認識を示した。(取材・高橋洸佑)

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日本の規制基準は「世界最高水準ではない」

会見で泉田知事は、原子力規制委員会が策定した新しい規制基準について「福島事故の検証・総括がなされていない中で作られていることに懸念がある」と述べた。

具体的な問題点として、欧米では設けられているメルトダウンへの対策が日本では求められていないことや、事故が起きた際に高線量下で誰がどのように作業するのかという運用面でのルールが十分でないことなどを指摘した。

また、事故が起きた際の安定ヨウ素剤の配布について、原子力規制委員会が5キロから30キロ圏内の住民を対象にしていることに言及。「柏崎刈羽の場合は44万人の人がいる。すべてを配ることは難しい」と指摘し、「指針が不可能を求めている」と話した。

そのうえで、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「世界で最も厳しいレベル」だと胸を張る日本の規制基準について、「IAEAの深層防護の基準の第5層がそっくり抜けていたりする。世界最高水準の規制ではないと考えている」と断じた。

問題に口をつぐむのは「歴史に対する冒涜」

また、原発再稼働の是非に関して記者から問われると、「新潟県知事という立場上、日本全体として、どうするのかということを答える立場にはない」と回答。そのうえで、新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼働に関して、次のように答えた。

「再稼働の話をすると福島事故の検証が後回しになってしまうことを懸念している。東京電力はメルトダウンを2か月以上隠し通した。メルトダウンという大変重要な情報を隠す組織が原子力安全上、原発を運転する資格があるのかどうか。この議論が先にあるべきだ」

このように「再稼働の議論をする段階にない」という認識を示した泉田知事は、他の原発立地自治体の首長に比べ、積極的な発言が目立つ。

この点について記者から質問が飛ぶと、「私自身、地震に伴う原発火災を経験している。それから3.11の原発事故の模様を日本政府・福島県と並んで東京電力からヒアリングをしながら、事故を同時進行的に経験した。そういうことから何が起こるかをイメージすることができる」と述べ、2007年に起きた新潟県中越沖地震のときの経験が背景にあることを明かした。

2007年の中越沖地震が起きた際、柏崎刈羽原発はホットラインのある部屋のドアが地震で歪んでしまい、県庁と柏崎刈羽原発が直接連絡することができなくなったという。この教訓から新潟県は「免震重要棟」の建設を提言。福島第一原発の免震重要棟が完成したのは東日本大震災のわずか8か月前だった。泉田知事はその経験を踏まえて次のように話した。

「もしあのとき、新潟県が求めなければ、福島に免震重要棟はなかったし、いま東京に人が住めていたかどうかも疑わしい」「私自身は、2007年の中越地震のときに問題だったところを直したことが、結果として、日本のためになったと確信している。問題があるところに口をつぐむのは歴史に対する冒涜ではないか」