東京五輪見据え、インフラファンド向け市場にも意欲 日本取引所グループ斉藤惇CEOが会見 - BLOGOS編集部
※この記事は2014年01月30日にBLOGOSで公開されたものです
株式会社日本取引所グループの斉藤惇CEOが１月22日、東京・有楽町の外国特派員協会にて英語記者会見を行なった。2013年１月１日、東京証券取引所グループと大阪証券取引所の経営統合に伴い発足した日本取引所グループは、丸一年を迎えた。統合により世界第３位の規模となった同グループを率いる斉藤氏が論じたテーマは、「アベノミクスと日本経済 -2014年の株式市場-」。外国人記者らからの質疑で、斉藤CEOはウーマノミクスや東京オリンピックへの期待にも触れつつ、グループの展望を語った。【取材・撮影：塩川彩（BLOGOS編集部）】
取引が高速化・複雑化する21世紀、日本取引所グループの使命
「基本的な使命は一切変わっていません。私たちの役割は、価格決定が行われる際の適切な場を提供することです。その価格はできうる限り公正で、効率的であるのが望ましい在り方です。
銀行から融資が受けられない企業に資金を供給する場でもあります。そうしたことがこれからの我々にとっても基本的な使命だと考えます。」
日銀の追加金融緩和について
「根本的に、今日の景気低迷は皆さんご存知のように、金融問題がその根源にあるわけではありません。需要の欠如、過剰供給、過剰設備などが原因なのです。私たちは既に多くの貨幣を保有しており、日本における家計の金融資産総額は、およそ1,600兆円です。日本円においては、金利が下がろうとも需要が戻ってきません。これこそが問題なのです。
やはり私たちは明らかに、供給過剰の問題に面しています。イノベーションの進化によってです。あまりに早いイノベーションの進化が世界中で起こっており、これは歴史的にみても類のないことです。金融政策、予算政策、財政政策が機能しにくい訳はそれなのです。
アメリカでのＱＥ２は比較的良好でしたが、ＱＥ３は過剰で危険な領域です。また世界中が同様の状況に面しています。
もし日銀が過剰な金融緩和を行えば、けして楽観視できない、悪いインフレを起こす可能性があります。それなので私たちは可能な限り注意深く行動する必要があります。」
インフラファンド向け市場について
「インフラファンド向けの市場開設について、非常に関心を持っています。アメリカでは店舗や橋など様々なインフラがファンドで運用されています。東京オリンピックを控えた私たちは、太陽光発電や風力発電などを確立し、インフラファンドに紹介することもできるでしょう。
ベトナム、インドネシア、カンボジア、インドといったアジア諸国でもインフラファンドのニーズが高まっています。」
ウーマノミクスについて
「安倍首相はウーマノミクスや女性の持つ力について本当に真摯に考え、取り組んでいらっしゃいます。ウーマノミクスは1999年、ゴールドマンサックスのキャシー松井氏によって提唱され、日本社会では既に多くの優秀な女性の力が活用されていますし、日本社会は既にそうした方向に動き始める決断をしたと感じます。
個人的に、報道、新聞業界は女性が力を発揮するのに適しているように思います。そういった企業での女性管理職の活躍はよく目にします。英国でも同様のようです。
私たちはやがて、女性の力に多くを依存しすぎないよう注意を払うことが必要なほどになるでしょう。彼女たちは高い教育を受け、才能豊かです。
率直に言えば私たちは変革の時期にいて、明日から女性のCEOや経営者を次々と生み出すようなことはできませんが、それでも女性の力によって既に日本企業の多くが支えられていることは確かです。」
2020年、東京オリンピックにかける期待
「2020年の東京オリンピックに向ける選手たちのコメントは、前回1964年に開催された東京オリンピックのときから完全に変わっています。1964年の選手たちは『私たちはオリンピックに参加します』と言いました。メダルが獲得できるか否かでなく、参加できるという事実が重要だったのです。
今回、若い選手が『金メダルを獲ります』と口にしています。メダルを獲るためにオリンピックに行くという意識です。日本人は変わりました。これは大変重要なことです。
この30年間、日本人は血気盛んな精神を失ってしまいました。なんというか訓練され過ぎて、事なかれ主義で、『競争は悪だ』というような教育がありました。日本人が自尊心を失った原因がここにあります。
けれども、若者は変わりました。それなので、まず景気を刺激してくれること。それから、日本の士気を高揚させてくれること。この二点を私は期待しています。」
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