「別解力」で圧倒的な成果を生む技法。じげん平尾が教える“優秀な人たちの中での戦い方”
「まわりが優秀ななかで成果を出す」ってどうしたらいいんでしょうか。
自分に特別な才能がなかったり、新しく入ってくるメンバーは皆そろって優秀だったり…。突き抜けるきっかけがないというR25世代は多いかもしれません。
そんな疑問をぶつけさせていただいたのは、株式会社じげん代表取締役・平尾丈さん。リクルートを経て、25歳でじげんの前身となる会社を設立。30歳でマザーズ、35歳で東証一部上場を遂げた起業家です。
今回、著書『起業家の思考法』が発売となったタイミングでのインタビューが実現。まわりが超優秀な環境で突出した成功をおさめた平尾さんから、R25世代の会社員が学ぶべきことを聞いてみると…
平尾さん:
・「自分らしい」「別の」「優れた」方法を用いて「別解」を出すこと
・マネジメントより「リーダーシップ」を身につけること
お答えいただいたお話は、平尾さんいわく「私の考え方のすべて」。“叩き上げのリアル”が詰まっていました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「自分らしさ」「優秀さ」の序列では勝てない。「別解を出す力」が必要だ
天野:
優等生的なシゴトを脱する“突き抜ける方法”を探してまして、こんなテーマでお話を聞いてみたいなと。
平尾さん:
なるほど。難しい問いだと思いますが、私は“若いうちから成果を出すためにどうすればいいか”をずっと考えてきたので、ヒントになるお話ができるかなと思ってます。
そのひとつが「別解力」。
私は仕事の“やり方”をこういうベン図で理解してて…
出典 『起業家の思考法』
平尾さん:
「自分らしい」「別のやり方」「優れた」要素を含んだ仕事を「別解」と定義してます。
いわゆる起業家タイプは、「自分らしいやり方」が強く、“自分はこういう世界をつくる”とビジョンを掲げる人が多い印象で…
天野:
たしかに。強烈な起業家の方に取材するたびに「自分はこの人たちみたいに個性的にはなれない」と痛感しております…
平尾さん:
一方で、優秀な人たちは仕事において「優れた」やり方を探す場合が多い。
私のまわりでも最近は優秀な方々がたくさん起業していて…以前は起業って“勇気があって、ちょっと変わった人がするもの”みたいな世界だったのに、今ピッチ(※事業説明のためのプレゼン)大会とか行くと、出てる人何割東大ですか?みたいな。
それどころじゃなくて海外の一流大出てます、全員投資銀行出身です、っていう世界になってきている。
天野:
「優秀な人」ってめちゃくちゃいますもんね…その戦いでもまったく勝てそうにありません…
平尾さん:
優秀な人たちは“早く答えにたどり着く訓練”をしているから、その序列で戦わないほうがいい。
だからこそ、「自分らしい」「優れた」に、「別のやり方」という観点をくわえて“別解”を出すのをオススメしたいんです。
強烈に自分らしさがあるわけでも超優秀でもない方は、この後出てくる「別解のつくり方」をメモるご準備を
天野:
別解…「頭いい人の逆張りをする」ぐらいは思いつくんですが、どうやって別解をつくればいいでしょうか?
平尾さん:
私は「別のやり方」をフレームワークに落とし込んでいて…
たとえば別のやり方を引き出す31の“ヒント”はこんな感じです。
【変える】
ヒント1:要素に分解して、一部を変える
ヒント2:パラメーターに分解して、一部を変える
ヒント3:時間軸を変える
ヒント4:場所を変える
ヒント5:値段を変える
ヒント6:集客や販売チャネルを変える
ヒント7:登場人物を変える
ヒント8:業態を変える
ヒント9:濃度を変える
ヒント10:原材料を変える
【探す】
ヒント11:お金を払ってでも欲しいものを探す
ヒント12:いらないものを探す
ヒント13:強い部分と弱い部分を探す
ヒント14:特化して価値が出るものを探す
ヒント15:タイムマシンを探す
ヒント16:定数より変数を探す
ヒント17:法改正を探す
ヒント18:新しいテクノロジーを探す
ヒント19:臨界点を超えたり、特定の状況になったりすると価値が出るものを探す
ヒント20:複利になるものを探す
ヒント21:LTVで戦えるものを探す
ヒント22:マイナスが低いものを探す
【考える】
ヒント23:反対(NotA)で考える
ヒント24:規模の違うもので考える(相似形)
ヒント25:哲学的に考える
ヒント26:仮定法で考える
ヒント27:未来はどうなるかを考える
ヒント28:みんながいやがりそうなことを考える
ヒント29:アイデアを結合して考える
ヒント30:古い概念をアップデートして考える
ヒント31:他に転用できるものはないか考える
※『起業家の思考法』より。詳細は同書P.116〜でも解説されているので、ぜひ手に取ってみてください
起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法
http://amazon.co.jp/dp/4478114242/
天野:
こ、こんなに!!!
メモしてモニターの横に貼っておこうと思います。
平尾さん:
私がビジネスに携った20年かけてフレーム化してきた「別解」のつくりかたがこれです。
一つひとつは大したことないかもしれないけど、ビジネスのあらゆる局面でこの31個を駆使して考えるんです。
平尾さん:
最近「自分らしく生きよう」って言われるようになって、みんな「自分らしい」の部分を起点に考えすぎて悩んでいるように見えます。
天野:
「自分らしさ」を追求すれば人とはちがう仕事ができる気もするんですが、別解にはならない?
平尾さん:
自分らしさはエンジンのようなものなのでとても大切ですが、それ単体ではなかなか価値を生み出しづらい。
「自分らしさ」はどんな小さなことでもいいのですぐ決めてしまって「優れた」「別の」に考えを移していったほうがいいです。
若くして活躍したいならそういう意識を持たないと。
はい
平尾さんが「マネジメントよりリーダーシップが重要」と語る理由
天野:
最近は、プレイヤーとして仕事ができる以外に「マネジメント」もできると優秀と評価されると思うんですが…
平尾さん:
私は、マネジメントはとても大事だと思うんですが、マネジメントスキルだけが評価される風潮は疑っていいと思ってます。
ビジネスの実際の現場で、「角を矯めて牛を殺す」みたいになってしまっていることが多いと思いますね。
※角を矯めて牛を殺す(つのをためてうしをころす)=曲がった牛の角を矯正しようとして、牛を殺してしまう。欠点を直そうとして全体がうまくいかなくなること
平尾さん:
それに、座学でマネジメントの技術だけ身につけても実践できないことが多い。
有名な「お前はどうしたいの?」も、マネージャー側に意思がないとただの“引き出すテクニック”。私は「それを聞いてあなたはどうしたいんですか?」って逆に聞いてました。
私のマネージャーは大変だったでしょうね(笑)。
今度面談で言ってみようかな…いややっぱり言えないです
天野:
ただ実際、若いうちはプレイヤーとして頑張って、30〜40代ぐらいからはマネージャーとしてキャリアを積ませる…っていう会社は多いと思うんですが…
平尾さん:
それが今後も代替されないのならいいと思いますけど…
実際欧米でもAIや他の要素を使って、1人が数十人から数百人を管理できる技術が出てきている。
私は、希少価値や難易度を考えたらマネジメントより「リーダーシップ」のほうが何倍も重要だと思ってます。
「私自身もリーダーシップ型だと思いますし…」
平尾さん:
今のように世界が不安定になったとき、世の中に求められるのはリーダーシップがある人。
他の人が考えつかなかった「別解」を推し進めるためにリーダーシップが必要なんです。普通に考えたら「優れたやり方」のほうが安心できるから、チームはそちらの道に行きたがる。
それでも道を先導していけるのは、当事者意識を持ったリーダーですよね。
天野:
リーダーは「圧倒的当事者意識」を持つべきだと。
平尾さん:
リーダーシップは結局そういう立場や環境にいることで身につくもの。
だからこそ、若いうちから手を挙げてリーダーになる努力をすべきだと思います。
「すべての戦略は世に出した瞬間に陳腐化する」が…「別解は無限に存在する」
天野:
平尾さんが以前、新R25ワイドショーの“戦略”についてのお題に「戦略とは戦略になり得た瞬間にコモディティになる」って回答されてたのがすごく気になってて…
哲学というか禅問答みたいな(笑)。
平尾さん:
答えになってないですよね(笑)。でも残念ながらこれが実感なんです。「すべての物事は世に出した瞬間に陳腐化する」ってことですね。
本も出した瞬間に古くなる。
起業家としての私の考え方を書いた内容なので、今後はさらに自身をアップデートしていかないといけないと思っています。
天野:
そんなに大事な「手の内」を明かすのはなぜなんでしょうか?
平尾さん:
「ダイバーシティが大事だ」って言われてるなかで、組織や働き方には多様性が生まれてる。
でも、肝心の“仕事のやり方”に多様性が少ないと思ったんです。
だから「別解」が必要だなと。
天野:
起業家というよりは会社員にもそういう考え方を伝えたいんですか?
平尾さん:
そうですね。「起業家の思考法」は起業家の方に書いたものではなく、企業でお勤めの方にこそ読んでいただきたいと思っています。
会社員にこそ起業家のような「別解力」が必要。逆説的だがわかる気がします
天野:
今日はありがとうございます。正直平尾さんの思考についていくのがやっとな部分もありましたが…
ちなみに、インタビューで話したり書籍に書いたりした内容が“陳腐化”していったら、じげんの戦略はどうなるんですか?
平尾さん:
さらにその先を考えていくしかないですよね(笑)。「別解2.0」を考えるか、そもそも新しいフレームワークを生み出すか…まだまだやり方はたくさんあるはず。
「別解は、無限に存在する」と考えています。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/編集協力=清水紗良(@r25_shimizusara)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
「起業家の思考法――『別解力』で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法」
起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法
http://amazon.co.jp/dp/4478114242/
本日3月9日発売となる『起業家の思考法』では、インタビューにてお話しいただいた「別解力」のほかにも、別解を実際のシゴトに落とし込んでいく「実現力」など、ビジネスに重要な思考法が多く紹介されています。
また、じげんが実行した「別解」の例なども掲載されているため、今まさに現場でアイデアを求めている人の参考になるはずです。
平尾さんが「これまでの考え方のすべてを書いた」とまで語る本書を、R25世代のビジネスパーソンもぜひ手に取ってお読みください。