macOSユーザーにとって、2021年最もホットなトピックだったのが新型「MacBook Pro」の発売です。

 

MacBook ProはMacBookのラインナップの中でもハイエンドに位置付けられる存在です。その歴史は2006年から始まり、これまでに何度かのメジャーアップデートがありましたが、前回のメジャーアップデートは2016年。すでに5年以上が経っています。

 

そんな中、久しぶりにメジャーアップデートを遂げたのが2021年発売のMacBook Pro。最新のプロセッサー「Apple M1 Pro」および「Apple M1 Max」と、新デザインのボディが特徴となっており、買い替えを決意した人も少なくないのではないでしょうか。

 

かく言う私も、2016年にMacBook Proを購入し、これまで5年間使い続けてきました。5年の間にプロセッサーがインテル製のものからApple M1に変わったり、ESCキーがハード仕様になったり、キーボードの世代が刷新されたりと、何度か心動かされるタイミングはありました。ですが、基本的なデザインには変更がありませんでしたし、2016年モデルの性能にも不満がなかったので、買い替えることはありませんでした。

 

しかしながら、今回のメジャーアップデートは何もかもが変わった大進歩。特に、処理性能は段違いに向上していることは明らかです。そこで本稿では、最新MacBook Proを試用し、魅力や処理性能に迫るとともに、「2016年モデルから買い換えるとどれだけいいのか?」を見ていきます。

 

最新スペックに対して適正な価格設定

今回試用した2021年モデルのMacBook Proは、14インチ/Apple M1 Pro/16GBメモリーという構成。また、比較のために所有している2016年モデルのMacBook Pro(13インチ/Core i5 プロセッサー/8GBメモリー)を用意しました。

↑手前が2021年モデルのMacBook Proで、奥が2016年モデル

 

2016年モデルはインテル製のCoreプロセッサーが搭載されていた時期で、当時の定価は19万円(税込)を下回っていました。対して、2021年モデルは本稿で試用している最小構成モデルでも23万9800円(税込)なので、価格が5万円ほどアップしています。

 

ただし、スペックを細かく見ると、プロセッサーのコア数が2から8へと4倍に向上しており、メモリー容量も8GBから16GBへと2倍になっています。

 

さらに、ディスプレイや搭載端子も最新仕様に変更されていることを考えれば、5万円という価格差は、単純に値上がりしたとは言い切れません。スペックの進歩に対して、適正な価格設定と言えそうです。

 

クラシカルさも感じさせる新世代デザイン

外観を一見すると、2021年モデルのMacBook Proは、2016年モデルからデザインコンセプトが大きく変わっていることを感じさせます。

 

2016年モデルは中央からエッジにかけて厚みを絞り、薄さを強調したデザインだったのに対し、2021年モデルは中央からエッジまでの厚みが一定です。

↑右の2016年モデルは端が丸みを帯びているように見えていますが、左の2021年モデルはアルミニウムをそのまま削り出したかのような、一定の厚みが特徴

 

↑底面部分は、2016年モデルが無駄な要素を排除した、シンプルに振り切ったものだったのに対し、2021年モデルはゴム足を大きめに取り、中央には「MacBook Pro」とエンボス加工で刻印

 

薄い箱型の形状とも言い表せる2021年モデルの形状は、2006年モデルのMacBook Proを彷彿させます。2006年の次にデザイン変更があった2008年発売のMacBook Proはアルミニウムユニボディを採用。以降、2016年モデルまでは、やはり中央からエッジにかけて細くなるデザインを採用していて、長らくデザインコンセプトをキープしていました。

 

2021年モデルのMacBook Proは、2008年から続いたMacBook Proのデザインの系譜が区切られ、新世代のMacBook Proが始まったことを感じさせます。

 

前モデルの外観も気に入っていましたが、新しいデザインを見ると、途端に前モデルに古さを感じてしまうのがアップル製品の常。実際に触ってみると、ソリッドな見た目とさらっとした触り心地が所有欲を刺激し、欲しい気持ちがぐんと高まります。また、箱型の形状は持ったときに手のひらのくぼみに収まりやすいため、安定して持ち運べます。

 

賛否両論のノッチは作業に影響なし。何より画面の鮮やかさがまるで違う

ディスプレイの解像度は、2016年モデルの13インチが2560×1600ドットで、2021年モデルの14インチが3024×1964ドットです。サイズが1インチアップしているうえに、縦横の表示領域が増えています。

 

ディスプレイの精細さを表す画素密度は、2016年モデルが227ppiだったのに対し、2021年モデルは254ppi。2016年モデルでもピクセルが識別できないほど高精細なディスプレイでしたが、精細さがさらに向上しています。

 

本体サイズは、2016年モデルが約幅30.41×奥行き21.24×高さ1.49cmで、2021年モデルが約幅31.26cm×奥行き22.12cm×高さ1.55cm。全体的に少し大きくなっていますが、1インチアップしたディスプレイを収めていることを考えると、それほど差がないことに驚くべきところでしょう。

↑左が2021年モデルで、右が2016年モデル。サイズは一回り違うように見えます

 

また、ディスプレイのベゼル部分は狭くなり、上部にはiPhoneなどでもおなじみの「ノッチ」を設けています。

↑ベゼルを見比べるとかなり狭くなっていることがわかります。また、右の2021年モデルにはノッチを採用。スマホのデザイントレンドを取り入れるあたりに、iPhoneも展開するアップルならではの製品力を感じられます

 

発表時、SNSなどでは「作業時にノッチが気にならないか」と心配する声も散見されましたが、使ってみた印象としては、まったく気になりません。というのも、ノッチがある部分は画面上部のメニューバー部分とぴったり重なっており、アプリケーションの作業領域に影響しないからです。

 

何より、解像度が高くなり、ベゼルが狭くなったことで、写真や映像をこれまで以上に高精細に表示でき、しかも没入しやすくなっています。試しに映像をいくつか見てみましたが、鮮やかに表示され、2016年モデルとの間に明確な差を感じることができました。

 

デザイナーや映像編集をするクリエイターにはもちろん、ここ数年ですっかり定着した映像配信サービスを楽しみたい一般ユーザーのニーズにもピッタリでしょう。

 

復活したSDXCカードスロットとMagSafe

インターフェイス部分に目を向けると、2016年モデルは4基のUSB Type-C端子(Thunderbolt 3)とヘッドホンジャックを搭載。さかのぼって2008年モデルはSDカードスロットを設けていました。2021年モデルでは、これがSDXCカードスロットとして復活しています。

 

2016年モデルが登場した当時は、ローカルでのデータのやり取りを限りなく減らすという考え方が、設計のベースにあったのでしょう。実際、クラウドサービスもかなり普及してきました。

 

ですが、クリエイター向けのハイエンドモデルとなると、まだまだSDXCカードスロットは必要と判断したのだと思います。特に最近のデジカメは写真だけでなく、動画の撮影もこなします。そのデータをPCに転送となると、より手軽なSDXCカードスロットはあるに越したことはないでしょう。

 

個人的にも、遠出できないせいか、せめて日常をちゃんと記録に留めようと思い、どうせならと、スマホではなくデジタル一眼カメラで撮影する機会が増えました。ですので、SDXCカードスロットの復活は大歓迎です。

↑右側面にSDXCカードスロット、USB Type-C端子(Thunderbolt 4)、HDMI(2.0)出力をそなえています。外部ディスプレイと接続して作業をする機会が増えた昨今、このHDMI出力もうれしいという人も多いのではないでしょうか

 

また、復活したものといえば、MagSafeによる充電にも触れなければいけません。

 

2016年モデルではUSB Type-C端子が充電端子を兼ねていたため、充電する際は、USBが1系統埋まってしまうという問題がありました。何かと接続する周辺機器が多い現代において、充電専用の端子がMagSafeで復活しているのは大きなメリットです。個人的には、足を引っ掛けても端子部分のみが外れ、本体が損傷しにくいという設計に安心感を持っており、こちらの復活も大歓迎です。

↑左側面にMagSafe、USB Type-C端子(Thunderbolt 4)×2、ヘッドホンジャックを装備。Thunderbolt 4は充電、映像出力、データ転送にも対応。専用のMagSafeケーブルを忘れてしまっても充電できます

 

↑細かな点では、MagSafeケーブルの皮膜が、以前のビニールから、ナイロンの繊維を編み込んだ、より頑丈さを感じさせるものへと変更されています(写真左側のケーブル)

 

SDXCカードスロット、MagSafeが復活する一方で、Touch Barは廃止。Touch Barはアプリケーションに応じて表示されるボタンが変化する動的なタッチスクリーンでしたが、最新モデルでは物理的なファンクションキーに置き換えられました。

 

Touch Bar自体はおもしろい機能でしたが、有効的な使い方を提案できたソフトウェアベンダーがいたかというと、難しいところです。個人的には、意図せずSiriを起動させてしまうことも度々あり、あまり好ましく思っていませんでした。対して物理的なファンクションキーは、キーの位置と用途を覚えてしまえば使いやすいため、こちらもうれしいところです。

↑左がTouch Bar 搭載の2016年モデルで、右が物理的なファンクションキー搭載の2021年モデル。物理的なファンクションキーが復活するのに合わせて、キーボード部分全体はフレームごとブラックに変更され、操作エリアが明確になりました

 

処理性能は文字通りの桁違い

最後に、「Geekbench 5」というベンチマーク用アプリケーションで、プロセッサーの進歩による処理性能の差も検証しました。

 

結果は、Core i5搭載の2016年モデルではマルチコアのスコアが1794、シングルコアのスコアが699でしたが、Apple M1 Pro搭載の2021年モデルはマルチコアのスコアが9953、シングルコアのスコアが1751でした。シングルコアの処理性能は、文字通り「桁違い」で、マルチコアの処理性能も大きく差が開いています。

↑2016年モデルのマルチコアのスコア(左)とシングルコアのスコア(右)

 

↑2021年モデルのマルチコアのスコア(左)とシングルコアのスコア(右)

 

では2016年モデルが非力なのかというと、そのようなこともありません。古いモデルであるとは言え、やはりMacBook Pro。画像処理や映像の編集、エンコードなどもそれなりのスピードでこなせますし、日常使用する分には、大きなストレスは感じない範囲の性能です。

 

つまり、2021年モデルのMacBook Proは、それだけ驚異的な処理性能の高さを持っていることになります。特にプロセッサーに負荷がかかる映像のエンコードや、3D CAD、PCゲームに触れる機会の多い人が買い換えれば、作業効率や快適さは大幅にアップすることでしょう。

 

日常利用でもその性能の高さは発揮されます。実際に数日間使ってみたところ、アプリケーションの立ち上がりやウィンドウが開くスピードなど、細かな部分も含めて、あらゆる面で処理速度の速さを体感できました。

 

MacBook Proユーザーなら必ず手に入れたい完成度

2016年モデルとの比較で、2021年モデルのMacBook Proの魅力を探ってきましたが、デザイン、仕様、処理性能の、どこをとっても世代が変わったことを大きく感じさせる完成度の高さを持っています。

 

Apple M1を搭載している2020年モデルと比較した場合、処理性能の差はもう少し縮まると考えられますが、処理性能を抜きにしても、インターフェイスやディスプレイ、デザインといった本稿で紹介した数々の魅力で惹き付けてくれるのが、最新のMacBook Proです。

 

最小構成で23万9800円(税込)という金額だけを見れば、高価な製品であることに違いはありません。ですが、私個人で言えば、これまでも5年間MacBook Proを使ってきており、2021年モデルも同じくらい使用することを考えると、コストパフォーマンスに優れていると言うこともできます。そして、それだけ使用するに耐えうる、最新の技術が備わっています。買い替えを検討している人にとっては、間違いのない買い物になるでしょう。

 

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