今まさに100年に1度の転換期を迎える長崎県長崎市。来年秋に開業する西九州新幹線にはじまり、国内3番目となる恐竜博物館の登場、さらには世界三大夜景にも数えられる稲佐山の再開発など、まさに進化を遂げる真っ最中といえよう。今回は完成間近の場所からオープンしたての施設まで、魅力あふれる長崎市の最旬スポットをみていこう。

変わりゆく長崎市


大迫力の長崎市恐竜博物館

日本で3つしかない内の1つが長崎市恐竜博物館。自然光の中で恐竜展示を楽しめるのも特徴


実は長崎と恐竜は非常に関係が深い。日本の古生物学の父とされる横山又次郎は長崎県出身であり、その彼が"恐竜"という訳語をつけたそうだ。

さらに、太古の長崎はジュラシックパークだったという。長崎市恐竜博物館がある野母崎地区をはじめとする長崎半島には、なんと8,100万年前の恐竜時代の地層があることが判明。それらは「三ツ瀬層」と名付けられ、研究者たちの注目を集めた。

通常、恐竜時代の地層は地中深くに眠っていることが多いそうだが、偶然にも地殻変動によって三ツ瀬層は地層が地表に現れているという。そのため、地下深く掘らずとも化石が発掘できる、奇跡的な条件がそろっているのだ。

そんな野母崎に2021年秋オープンしたのが「長崎市恐竜博物館」だ。目の前に海が一望できる博物館には、全長約13mにもおよぶ「ティラノサウルス」の全身骨格レプリカや実物の化石を触れるコーナーなど、中生代の生物を体感できる展示が数多くある。

世界最大級のティラノサウルス・レックスの骨格レプリカ


常設展示は180点を超えるという


それら展示物の中でも特に驚いたのは、実際に動き・鳴く「ティラノサウルス科復元ロボット」。最新の学説に基づき、羽毛やうろこなども精巧に再現しているのだが、あまりのリアルさに子どもが泣き叫んでいたのが印象的だった。

頭長部分の毛なども最新の学説に基づいて表現されている6mの恐竜ロボット


さらに同館のすごさは最新機器がそろう「オープンラボ」にある。国内の自然史博物館では数少ない化石の形を映し出すX線CTスキャナや、3Dデータを立体的に再現する3Dプリンタで最新の研究を支えている。

また、岩石から化石を削り出すクリーニング室なども公開しており、研究の様子を間近で見学することが可能。世紀の新発見に立ち会えるかもしれないワクワク感も魅力のひとつと言えよう。

筆者が見学で訪れた際も、研究の様子を間近でみることができた


長崎市恐竜博物館

場所:長崎県長崎市野母町568-1

開館時間:9:00〜17:00(祝日を除く毎週月曜日)

観覧料金:一般個人 500円、小中学生・幼児 200円(3歳未満の幼児は無料)

※入館は事前予約制。先着順となっている

部屋から軍艦島が望める唯一のホテル「Nomon長崎」

恐竜との出会いに興奮したあとは、心安らぐホテル「Nomon長崎」へ。長崎市の最南端に位置するホテルは、手つかずの自然を生かした贅沢なリゾート。世界文化遺産の1つ「軍艦島」を部屋から望め、日本でも希少な"高濃度炭酸泉"を堪能できるという。

「Nomon」はあじの一種「野母んあじ(のもんあじ)」というブランド魚から名付けられた。地元民ですら食べられない幻の魚だという


また近くの船着き場から「軍艦島ツアー」(予約制)へ行くこともできるので、恐竜博物館とセットで、長崎の歴史を体感してみるのもおすすめだ。

軍艦島を望める唯一の宿


「Nomon長崎」

場所:長崎県長崎市野母町692−1

2022年秋開業予定「西九州新幹線」! 長崎駅の建設現場に突入

「100年に1度の変革期」とされる長崎市において、外せない話題は2022年秋開業予定の「西九州新幹線」だろう。長崎県長崎駅と佐賀県武雄温泉駅を結ぶ西九州新幹線は、ホームで乗り換える対面乗り換え方式(リレー)によって、長崎〜博多間の所要時間が最大約30分短縮するという。

今回は九州の新たなインフラとも言える西九州新幹線の発着駅「長崎駅」の建設現場に潜入してきた。

長崎県庁から臨む「長崎駅」


同駅最大の特徴はなんといっても「海を望む駅」であること。南側は港に面しており、長崎港を見渡せる珍しい新幹線駅なのだ。また、曲線的な造りの膜屋根には、フッ素樹脂膜を使用しているので昼間は光が差し込み明るい印象になるという。

駅南側からは長崎港を見渡せる


建設中のホーム


膜屋根には、フッ素樹脂膜を使用している


さらに駅構内は長崎県の杉材を使用した柵内コンコースや、レンガ調のタイル、あじさいのステンドグラスらを取り入れ"長崎らしさ"を随所で表現している。「降り立った瞬間から土地の魅力を感じてほしい」との想いが建設段階からも伝わってきた。

紫陽花は長崎市のシンボル。長崎市の小学生以下の子どもがガラスピースを配置している


貴重な建設現場見学を終え、次は駅周辺を探索。実は新幹線開業に先立ち、すでに駅西口にあるコンベンションホール「出島メッセ」、ホテル「ヒルトン長崎」の大型主要施設2つが2021年11月に開業した。

駅西口も開発進む! 「ヒルトン長崎」ら開業

「ヒルトン長崎」外観


筆者もランチがてら今回は「ヒルトン長崎」を訪れた。館内に一歩足を踏み入れると、特徴的なデザインをした木の階段やモダンなインテリアなどセンスあふれる上質空間が広がっていた。

上質なインテリアが彩る


木目の階段


ランチをしたのはチャイニーズレストラン「蘄海楼」。小籠包や春巻き、担々麺など中華料理の代名詞とも言えるメニューを集めたコース料理「黄龍」をここではいただいた。

コース料理「黄龍」


個人的には小籠包・台湾焼売・海老餃子が一緒になった「蒸し点心」がおすすめ。中からあふれ出る肉汁がたまらない小籠包、香港焼売のふにっとした独特の食感、プリプリの海老餃子はなんとも美味だった。

だが、これだけで長崎市の旅は終わらない。次は再開発によって注目を浴びる「稲佐山」に行ってみよう。

福チャイニーズレストラン「蘄海楼(ふくかいろう)」

場所:長崎県長崎市尾上町4番2号 「ヒルトン長崎」内

営業時間:ランチ 11:30〜14:30/ディナー 17:30〜22:00

●稲佐山へ

稲佐山が生まれ変わる!?「INASA TOP SQUARE」

長崎の街を一望でき、世界三大夜景の1つにも数えられる「稲佐山」だが、2020年から山頂部分のリニューアルがはじまり、長崎の魅力をこれまで以上に体感できる場所に生まれ変わっているという。その噂を聞きつけて、筆者も今回の旅に稲佐山を組み込んだ。

稲佐山から夜景を一望できる


山頂に向かうにあたっては、2020年2月に誕生したばかりの「スロープカー」を利用。ロープウェイとは異なり、移動中も常に水平のためバランスを崩すことなく眼下に広がる景色に集中できる。また、稲佐山の木々が映り込むように鏡面塗装を施してあるので、夜景だけでなく稲佐山の大自然を観賞することが可能だ。ゆっくりと上る車内からは、一瞬一瞬見える景色が変わり山頂とは違った夜景を望むことができた。

高級車フェラーリなどを手掛けた工業デザイナー奥山清行氏が率いるKENOKUYAMADESIGNがデザインしている


木目調の社内は広々としており、近未来のような雰囲気を漂わせていた


長崎稲佐山スロープカー(中腹駅〜山頂駅)

営業時間:9:00〜22:00時(通年)

往復運賃:大人500円/中高生370円/小児250円

片道運賃:大人300円/中高生220円/小児150円

長崎の独特な地形が造り出した絶景

頂上に到着したあとは早速展望台へ。「世界三大夜景」とは果たしてどんなものなのか……ドキドキしながら、展望台の階段を一段一段上っていく。ついに現れた景色は、息をのむほどの美しさ。湾岸から丘陵部が急激に立ち上がる独特な地形が造り出した立体的な大パノラマは、長崎夜景ならではだという。

標高334mの稲佐山からは長崎市内のあらゆる光群やランドマークが鑑賞できる。モナコ・上海とともに長崎の夜景が世界三大夜景に選ばれた


「稲佐山にカップルで行くと別れてしまう」という迷信を後ろでカップルが話していたが、むしろその風光明媚な光景を見ずに愛は語れないのでは?と思わせた。

夜景をバックに長崎の恵みを堪能

その後は、展望台内にある2021年7月にオープンしたばかりの「稲佐山レストランITADAKI」にて夜景を眼下に見下ろしながら贅沢な食事を堪能! 

夜景を愛でながら料理を楽しめる


繊細で色彩豊かなコース料理「ITADAKIコース」(3,500円)は、地元長崎で採れる食材を中心に作られているという。五島うどんを使用したカルボナーラやかぼちゃのカプチーノなど一風変わった料理は、舌だけでなく香りや見た目でも楽しませてくれた。

五島うどんを使ったピンクのカルボナーラや雲仙豚のローストなど、食の宝庫長崎の美味しさを堪能できる


稲佐山レストランITDAKI

場所:長崎県長崎市稲佐町364 稲佐山公園

営業時間:ランチ 11:30〜14:30(L.O.)14:00/カフェ 14:00〜16:30/ディナー 17:00〜23:00(L.O.)21:30

おなかも満たし、帰りはロープウェイを使って下山する。長崎市北側を望めるスロープカーとは異なり、長崎市中心街も一望できるロープウェイはまた違った長崎の魅力をみせてくれた。

帰り際、隣に居合わせた長崎県人と談笑していると「夜景も素敵ですけど、ここは夕景が本当に美しいんです」と教えてくれた。魅力を存分に味わったと思ったが、味わい尽くすところはまだまだあったよう。読者のみなさんも稲佐山を訪れる際は、ぜひ夕景とセットで夜景を鑑賞してみてはいかがだろうか。

最旬スポットの開業、稲佐山リニューアルをはじめ、まさに変わりゆく長崎がそこにあった。そして、その進化の過程を目の当たりにできるのは今この瞬間だけ。ぜひ、あなたも100年に1度の変革期を現場で体感してみてはいかがだろうか。