AppleのiPhoneは充電やデータの送受信用に、独自開発のLightningコネクタを採用しています。Lightningコネクタは片面8ピンですが、USB Type-Aとは違って表裏に関係なく差すことができるのが利点ですが、ケーブルが破損しやすいことでも知られています。なぜLightningケーブルは破損しやすいのかについて、Apple関連の話題を扱うYouTubeチャンネル・Apple Explainedが解説しています。

Why iPhone Cables Break So Easily - YouTube

2012年9月にDockコネクタの後継規格として発表されたLightningコネクタはデータ転送速度がUSB 2.0と同等の480Mbpsで、表裏を気にせず差すことができるのが特徴。しかし、Lightningケーブルの端子の付け根が破損しやすいというのが大きな欠点となっています。



以下の画像のようにケーブルのシールドが剥がれ、内部の銅線が露出してしまうため、そのまま使い続けるとケーブル自体の断線も起こりやすくなります。



このケーブルが破損しやすい問題はLightningケーブルだけではなく、前世代の規格であるDockケーブルや、MacBook向けの旧MagSafeケーブルでも確認されていました。この問題が報告され始めたのは、だいたい2006年頃からだとのこと。



なぜケーブルコネクタの根元が破損しやすいのかについて、Apple Explainedは「Appleが機能性よりもデザインを優先したから」と説明しています。



ケーブルは抜き差しするものなので、コネクタの根元には特に負荷がかかりやすくなります。そのため、当初Dockケーブルのコネクタの根元には以下のようなケーブルプロテクターが取り付けられていました。



しかし、このデザインを嫌ったAppleは、ケーブルの破損率が上がることをわかった上で、コネクタの根元をシンプルなデザインに変更しました。



そして、iPodやiPhone、MacBookに使われるケーブルはすべてケーブルプロテクターのないデザインに統一されました。



さらにスティーブ・ジョブズは環境問題への取り組みに関する声明を2007年に発表。Apple製品に使う素材から環境に有害なものを排除していくことを明らかにしました。この環境問題への取り組みがLightningケーブルを破損しやすくしたもう1つの理由だとApple Explainedは主張しています。



Apple Explainedによれば、排除された素材の一つであるポリ塩化ビニル(PVC)の排除が大きく影響しているとのこと。PVCを焼却するとダイオキシン類が発生することから、AppleはPVCを有害な素材と認定しましたが、剛性と耐久性が高い素材でもあったため、PVCを排除したことでケーブルの耐久性が下がったとApple Explainedは指摘しています。



Appleがケーブルシールドの素材にPVCではなくゴムを使った結果、ケーブルの軟らかさが向上して取り回しはよくなったものの、負荷がかかりやすいコネクタの根元で破損しやすくなってしまったというわけです。



Appleの純正ケーブルは一般的なケーブルよりも高価格で販売されています。ケーブルが破損しやすいということはApple端末のコストパフォーマンスが悪いということでもあるので、苦情が殺到しました。



Appleは記事作成時点で最新のiPhone 13/13 ProでもLightningコネクタを採用しており、ケーブルが破損しやすい問題は解決していません。ただし、HomePodやiMacのケーブルは織物素材のシールドに変更されており、Appleがケーブル破損問題に対処しようとしていることがわかります。



また、iMacには周辺機器を接続するためのケーブルとして、初めて織物素材を採用したUSB-C to Lightningケーブルが同梱されています。このケーブルは記事作成時点では単体で販売されていませんが、将来的には単体でも購入できるようになることを期待したいとApple Explainedは述べました。