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これまでは、「売上最大化、利益最大化」が常識だった。
これからは、「売上最小化、利益最大化」が常識になるかもしれない。
「株価上昇率日本一(1164%)の超効率経営」
「従業員一人あたり利益がトヨタ、NTT、三菱UFJ、KDDI、三井住友FGより高い」
「新卒初任給は日本で2番目(2021年実績)の高さ」
という「北の達人コーポレーション」木下勝寿社長、
初の著書『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』
が発売たちまち5刷。中国、台湾、ベトナムからも翻訳オファー。日経新聞にも2回掲載された。
「びっくりするほどよい商品ができたときにしか発売しない」
という圧倒的な商品開発でヒットを連発。
「会社の弱点が一発でわかる“5段階利益管理表”」
「売上を半減させ、利益を1.5倍、利益率を3倍にする方法」
「売上ゼロでも生き残れる“無収入寿命”」
「組織全体にコスト意識が生まれるたった一つの方法」
を記念すべき初の書籍で惜しみなく公開し、
「不況下では、売上10倍はリスク10倍」と断言する木下社長を直撃した。

【利益4】ABC利益

 これまで紹介したとおり、「5段階利益管理」には5つの利益がある。

【利益1】売上総利益(粗利)
【利益2】純粗利(造語)
【利益3】販売利益(造語)
【利益4】ABC利益
【利益5】商品ごと営業利益

 4つ目の利益は「ABC利益」だ。

 ABCとは、アクティビティ・ベースド・コスティング(Activity-Based Costing)の略。つまり商品ごとの人件費だ。

 ABC利益=販売利益−ABC(商品ごとの人件費)

 ABC利益は、販売利益(利益3)からABC(商品ごとの人件費)を引いて求める。

 商品・サービスの販売にかかる間接コスト(人件費)を使用比率に応じて配分することで、商品・サービスごとの収益を把握できる。

 当社の場合、全社員に「商品にかかった時間」「それ以外の時間」の割合を月一回報告してもらう。

 たとえば、「商品1に30%、商品2に20%、商品3に10%、それ以外に40%」などと報告してもらい、その社員の人件費をかけ合わせ、商品ごとの人件費を算出する。

 受注処理や出荷など「きた仕事をそのまま受け、能動的に商品を選んで行動しない」という職種は、部署人件費を商品ごと売上比率で振り分ける(「それ以外」は後述の「運営費」に振り分ける)。

 販売利益1910万円−ABC190万円=ABC利益1720万円
 *ABC利益率17%

 販売利益600万円−ABC50万円=ABC利益550万円
 *ABC利益率9%

 販売利益700万円−ABC120万円=ABC利益580万円
*ABC利益率19%

 販売利益610万円−ABC20万円=ABC利益590万円
 *ABC利益率59%

 この時点でABC利益のトップはどれだろう(本書図表21)。

 商品2の販売利益は700万円、ABC利益は580万円。

 商品3の販売利益は610万円、ABC利益は590万円。

 商品3が商品2を逆転した。

 売上は高いが、ABC利益率が低いことが稀(まれ)にある。

 それは社内で手間がかかっている商品だ。

 特にサービス業ではよくある。

 商品1、2、3のABCを比較すると、商品2が120万円で最も高く、商品3が20万円と最も低い。

 つまり商品2は社内の手間が最もかかっている。

 商品3のようにABCが低い商品は、社内で話題にならない傾向がある。

 このように「売上が高く販促費もかかっていないが、社員の手間がかなり取られ、ABCが高いために利益が出ていない商品」や、「売上は低いがほったらかしでも勝手に売れるので、ABCがほとんどかからず、利益が多い商品」がある。

 社内の手間がかかる商品や事業は、そのまま人件費のコスト増につながる。

ある航空会社のケース

 ある大手航空会社が大型機を導入したとしよう。

 航空ビジネスの場合、大型機のほうが一回の飛行で多くの乗客を乗せられるから、一回あたりの売上が大きい。

 だから、大手航空会社はこぞって大型機を導入する。

 だが、ABC利益に注目すると、別の面が見えてくる。

 新型機の導入は、新しいメンテナンス方法をマスターしなければならないため、ABCが増える。

 大型機導入は、売上は増えるがABCも増えるため、売上が増えたからといって、利益がそのまま大きくなるわけではない。

 一方、LCC(格安航空会社)はなるべく少ない機種で回しているので、メンテナンスの手間が少なくABCが低い。

 だから、中小型機で一回の売上は低くても、ABC利益が高い。

 当社がABCを意識し始めたのは、北海道の特産品から健康食品、化粧品に移行する時期だ。

 北海道の特産品は商品数が多く、それぞれキャンペーンも行うため、商品ごとにかかる手間と生み出す利益に差があった。

 オリゴ糖の健康食品は定期購入で、同じ商品を同じ人に何回も買っていただくため、かかる人数も手間も少なくてすむ。そこで商品ごとのABCに注目した。

 すると、北海道の特産品より健康食品、化粧品のほうが、圧倒的にABC利益率が高くなった。

 そこでABC利益を継続的に管理することになった。

 売るために手間がかかっている商品ほど社内で話題になる。

 一方、手間がかかっていない商品は話題にすらならない。

手間がかかっている=ABCがかかっている
手間がかかっていない=ABCがかかっていない

 社内で話題になっていない商品は、ABC利益率が高いことがある。

 打合せで話題になる商品と利益が出ている商品は違うのだ。

 次回は、【利益5】商品ごと営業利益を紹介しよう。