自転車販売、20年度は過去最高を更新 市場は2100億円超に

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電動アシスト自転車など高額商品が好調も、 品薄や調達価格高騰が今後の課題

 自転車の販売が好調だ。帝国データバンクの調査では、通期予想を含めた2020年度の自転車販売市場(事業者売上高ベース)は2100億円を超え、過去最高を更新した。過去最高の売上高・利益を計上した自転車販売店大手のあさひなどが牽引し、自転車販売市場の拡大が続いている。

 自転車販売は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発出を受け、最繁忙期となる学校の卒入学シーズンの来店客が大きく減少。年度はじめから売り上げ大幅減のスタートを余儀なくされた店舗が多かった。特に、ショッピングモールなどに店舗を構える自転車店では臨時休業や時短営業、客足減といった影響がその後も長引いたことで業績面への影響が心配されていた。

 しかし、コロナ禍が拡大・長期化するなかで、感染リスクの低いパーソナルな移動手段として自転車が徐々に見直され、電動アシスト自転車を中心に通勤・通学用としてサイクル人気が高まった。販売店でもオンライン販売を急ピッチで進め、リアル店舗の落ち込みをネット販売でカバーする体制が整うなど販売環境の好転が追い風となり、業績の維持や増収に結びつけたケースも多かった。その後も長期にわたる外出自粛から気軽なレクリエーションとしても注目されたことで、大人から子供向けまで幅広い商品で例年に比べて新車販売が伸び、数年間乗っていなかった自転車のメンテナンス需要も活況だった。ウーバーイーツをはじめ自転車を活用した配送サービスも広がり、配達員の自転車需要が増えたことなども大きく貢献した。

高価な電動アシスト自転車、5年前から販売5割増 小売最大手のあさひは売上高が過去最高

 経済産業省の調査によると、2020年の完成自転車の出荷数量は前年を1000台ほど下回る約162万6000台になり、19年と同水準にとどまる。他方、出荷金額ベースでは前年からおよそ40億円増加、1台当たり単価も5年前の3万4000円台に比べて1万円高い4万7000円台となるなど、自転車の高額化が進んでいる。

 こうした背景には、従来の一般的なシティーサイクルに比べ、より利便性や趣味性が高い自転車のニーズが近年急拡大しており、販売台数の多くを高額な自転車が占めている点が挙げられる。自転車産業振興協会の調査によると、2020年における1店舗当たりの新車販売で最も販売台数が多かったのは、安価な一般車(軽快車)の101台だった。ただ、販売台数自体は前年を割り込む水準が続いているほか、20年の販売台数は15年に比べて約4割の減少となっている。

 代わって近年の自転車販売の主軸となっているのがスポーツタイプの自転車と電動アシスト自転車で、スポーツサイクルは55台、電動アシスト自転車は27台が、それぞれ1店舗当たりで販売された。いずれも一般車に比べて販売台数では大きく差が開くものの、近年は販売台数が大幅に増加しており、特に電動アシスト自転車は5年前から販売台数が5割伸びるなど急激な成長が続く。

 電動アシスト自転車はこれまで、量販モデルでも10万円を超える高額な商品が多く、所得の伸び悩みなどもあって積極的な購買には結びついてこなかった。しかし、都市部を中心に自家用車の代わりとして電動アシスト自転車を購入するなどライフスタイルが変化しているほか、種類も通勤・通学用や子供同乗用など多岐に広がったことで、従来メインだった高齢者層から子育て世代や若者に購買層が広がっていることが追い風になっている。
 とりわけ2020年は、全国民に一律で支給された10万円の特別定額給付金効果も重なって、コロナ禍で利便性の高い移動手段として電動アシスト自転車が再注目されたことも要因として大きい。20年中に大きく販売が伸びたスポーツサイクルも、営業休止したスポーツジムの代替といった健康増進需要に加え、趣味性の強い高級価格帯のロードバイクやマウンテンバイクが人気だった。

 こうしたニーズの拡大も追い風に、首都圏や関西圏を中心に大型自転車専門店「サイクルベースあさひ」を展開するあさひの2020年度売上高は、前年から16.0%増加の694億円となった。純利益も84.4%増の47億円となり、売上高・純利益いずれも過去最高を更新した。21年度もプライベートブランドの電動アシスト自転車を投入するなど顧客のライフスタイルに沿った商品展開を行い、売上高では同社初の700億円を目指す。自転車部品が主力のシマノも、世界的なサイクルブームを受け部品の引き合いが好調で、20年度の自転車部品売上高は前年比2.7%増、21年度も前年同期を大きく上回るペースで推移している。

自転車販売市場は引き続き好調が続くものの、 品薄や輸入価格の高騰などが不安要素

 今後もコロナ禍による外出制限や在宅勤務の普及・拡大による運動不足の解消といったニーズが強く残るとみられ、子供用から大人向けまで、修理需要も含めて自転車販売店には追い風が吹く。また、アウトドアブームの拡大でクロスバイクなどの需要増も見込めるほか、日本市場でも存在感が出始めた、販売単価が50万円を超える電動スポーツサイクル(e-bike)の普及も、自転車販売店の経営を強く下支えしていくとみられる。そのため、21年度の自転車販売市場は20年度をさらに上回る2200億円台の到達も想定され、販売環境全体は引き続き好調を維持する模様だ。

 一方で、世界的なサイクル需給のひっ迫により有名自転車ブランドでは入荷遅れもみられるほか、多くがアジアで生産される自転車部品も、現地のコロナ感染の拡大で操業が不安定なことから供給が追い付かず、修理のメドが立たないといった悪影響も目立ちはじめている。特に完成車は不安定な部品供給を背景に生産量が安定せず、輸入品を中心に2~3万円台の量販価格帯でも調達難から価格が高騰傾向となっており、低価格を武器にしてきた自転車店では利益確保ができず苦戦もみられる。「町の自転車店」をはじめ中小店舗でも、大手小売業者の進出に加えホームセンターなど異業種との競争激化に晒されているケースもあり、市場環境が好調な一方で経営の厳しさが増している事業者も増えている点には留意する必要があるだろう。