東京五輪で銀メダルを獲得したスウェーデン女子代表【写真:AP】

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ユニクロはサッカーの代表チームとは初のパートナーシップ契約

 東京五輪のサッカー競技で、話題を呼んだチームの一つが銀メダルを獲得したスウェーデン女子代表だった。

 GKヘドヴィグ・リンダール、FWコソヴァレ・アスラニ、FWフリードリナ・ロルフォらが、東北新幹線や宮城の夕暮れ、横浜の景色、オリンピック選手村のボランティアの素顔など、日本の魅力を積極的にSNSで発信。そして、気迫あふれるプレーを支えた公式ウェアが、日本の“ユニクロ製”だったことも注目を集めた。ユニクロ(UNIQLO)広報に、スウェーデンのオリンピック・パラリンピックチームとパートナー契約を結んだ狙いと反響について聞いた。

 2019年1月、ユニクロとスウェーデンオリンピック委員会(SOC)はオリンピック・パラリンピックチームのメインパートナー兼オフィシャル・クロージング・パートナー契約を締結。それまで、スウェーデンは国内のアパレルメーカー「H&M」のウェアを着ていたが、2018年8月にユニクロが北欧初となる店舗をスウェーデンの首都ストックホルムに出店した際、SOCのピーター・レイネボCEOが来店したのがきっかけだったという。

「ピーターさんはオリンピックのウェアパートナーをずっと探されていて、クオリティーや、どういったブランドなのかを見に来られました。その後、コンタクトしたいとすぐに日本に連絡があり、パートナーシップの話が進んでいきました。ユニクロの『LifeWear』というコンセプトに共感していただき、また東京五輪ということで、日本の企業に興味を持ったと伺っています」

 ユニクロは男子テニス選手の錦織圭とグローバルブランドアンバサダー契約を結び、ウェアを提供するなど、スポーツ分野にも進出している。しかし、ことサッカーに関しては、J2リーグのザスパクサツ群馬が群馬県社会人リーグ1部に所属していた2002年から、JFLからJリーグ昇格を果たす2004年までの3年間、オフィシャルユニフォームサプライヤーを務めたのみ。ナショナルチームへの提供は初の試みだった。

「美しくシンプルなデザインや、現代的なライフスタイルを尊ぶスウェーデンの人々の姿、文化は、ユニクロの『LifeWear』の理念に通じています。スウェーデンとの協業により、彼らから文化やサステナビリティーについて学び、それをユニクロの次世代の服づくりに生かしていきたい、という考えがありました。また、北欧進出を加速させ、ユニクロの認知獲得を向上する期待もありました。(テニスの)錦織圭選手、ロジャー・フェデラー選手らアスリートからフィードバックを受け、一般のお客様も買える服を開発していますが、スウェーデンの選手たちや委員会の方々からも声をもらい、ともにウェア開発を進めていくことでの相乗効果も期待しました」

スウェーデン国内では五輪開幕に伴い、関連商品の売り上げが5〜10倍にアップ

 今回、ユニクロは女子サッカーをはじめ、セーリング、カヌー、ゴルフ、ボクシング、バドミントン、競泳、テニス、アーチェリーなど、約20種目の競技のウェアを提供。移動やセレモニー時などで着る公式ウェア、ポロシャツ、パーカー、ノースリーブシャツ、キャップ、ヘアバンド、トップス、ソックス、スパッツ、クーリングベストなど多岐にわたった。スウェーデンは湿度が低く、日本に比べて暑さも厳しくない。スウェーデンチームからは「快適さ」、そして「耐久性」のリクエストがあったという。

「スウェーデンはサステナビリティーの国として知られています。環境に配慮したサステナブルなウェアであることを大事にされていましたし、イノベイティブ(革新的)な方法で競技に耐えられるクオリティーを備えたウェアを提供してほしいと。『クオリティー』『イノベーション』『サステナビリティー』、この3つのポイントがパートナーシップでも重要視されています。

 スウェーデンチームから要望があったのは、競技や日常シーンでより涼しく感じられるように、ということ。スウェーデンは湿度も低いし、夏の暑さが厳しい東京とは気候がだいぶ違うので、汗が乾きやすくて快適なものを求めていました。サッカーウェアに関してはコンタクトが多いスポーツなので、より生地に厚みをもたせて強度を上げる工夫も含めて、開発に1年以上をかけています。実はカラーリングも、多くの方が画面越しで観戦することを想定して、テレビなどできれいに見えるように、また、ナイター試合の照明の中でもより鮮やかに見えるように、試行錯誤しました。委員会やチーム関係者の方から『良かった』と声をいただけました」

 五輪2大会連続で銀メダル獲得と躍進したスウェーデン。今回の女子代表チームのウェアはスウェーデン国内のみで販売中だが、大会期間中に売り上げは大きく伸びたという。

「スウェーデンの初戦(アメリカ戦)が開催された7月21日の週は、サッカー関連商品の売り上げが五輪の始まる前の約5倍になりました。決勝(8月6日)の週は約10倍。勝ち進めば勝ち進むほど、反響がありました。五輪期間中はサイト内で『Olympic Collection』のサーチ件数が急増しましたし、スウェーデン国内の3店舗にもサッカーウェアを購入しにいらっしゃるお客様の数も増えました」

 スウェーデンチームが日常で着ていたウェアの一部は、ロゴがついていないタイプのものであれば、日本の一部店舗とサイトでも購入することができる。

「今後もアスリートたちとの取り組みを継続していきたい」

 開催地・日本の企業がパートナーシップを結んだ話題性、女子代表チームの躍進も重なって、ユニクロの認知度が高まったのは間違いない。「東京五輪で、ユニクロがスウェーデンチームをサポートするというのは、期待通りの相乗効果だったと思います」と広報も語る。

「引き続き、冬季の北京五輪でも、冬の競技のスウェーデンチームをサポートしていきます。選手たちから服作りに関して学ぶことは非常に大きくて、東京五輪でも素材作り、色の開発、デザイン面など、スウェーデンチームから多くを学ばせてもらいました。スポーツのプロジェクトを通して、世界中のあらゆるお客様のための『LifeWear』として届けられるように、今後もアスリートとの取り組みを継続していきたいと考えています」

 今後、世界大会で「UNIQLO」の文字が入ったウェアを目にするシーンが増え、これまで以上に大きな反響を呼んでいくかもしれない。(Football ZONE web編集部)