ウィシュマさん死亡の最終報告書、遺族側が反発「死因もわからない」「責任逃れの内容だ」
名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が亡くなった問題で、法務省・出入国在留管理庁は8月10日、名古屋入管の対応を検証した最終報告書を公表した。
医療・介護体制に不備があったことなどを認めているものの、一時的に身柄を解放する「仮放免」を不許可としたのは「不当とはいえない」と結論づけたほか、ウィシュマさんの死因について「特定は困難」としたことから、遺族側は反発している。
●遺族側代理人「責任逃れの最終報告書だ」
ウィシュマさんは今年3月6日、名古屋入管の施設で亡くなった。
1月中旬ごろから体調不良を訴えたが、適切な治療を受けられなかった。亡くなる直前は、歩けなくなるほど衰弱しており、支援団体が、治療と仮放免を求めていたが、どちらも対応されていなかった。
最終報告書は、入管の体制について一部責任を認めたうえで、(1)職員の意識改革、(2)適正な情報把握と共有に基づき医療的対応をおこなうための組織体制の改革、(3)医療体制の強化など――改善案もまとめている。
この報告書を受けて、来日中のウィシュマさんの妹2人(ワヨミさんとポールニマさん)と代理人がこの日午後、記者会見を開いた。
ワヨミさんは「(姉の)死因も明らかにされていません。これで最終報告書といえるのでしょうか」と訴えた。ポールニマさんは「医療体制に問題があったと言っているが、(入管で人が亡くなったのは)初めてじゃない。何人亡くなったら、医療体制を変えていくんですか。(姉の死に)だれが責任をとるんですか」と話した。
遺族の代理人をつとめる指宿昭一弁護士は「一見、名古屋入管の責任を少し認めているかのようだが、結局は、入管の制度や、組織の責任は認めておらず、責任逃れの最終報告書だ」と指摘。そのうえで、「名古屋入管は、収容者の生命、健康を守れる体制を有していなかった」と批判した。
今回の調査は、問題のあった入管自身によるものだったことから、高橋済弁護士は「自己調査の限界は、責任の矮小化にある。(最終報告書は)名古屋入管固有の問題だった、現場の職員固有の問題だった、という書き方だが、一方で、仮放免しなかったことは適正だったとしている。これで、なにに向かって改善していけるのか」と述べた。
●編集された映像を遺族にだけ開示する
指宿弁護士によると、この日の午前中、入管側から、ウィシュマさんが入管施設内にいる様子を映した映像を今月12日に一部開示するという連絡があったという。
ただし、2週間分の記録を2時間程度に編集したもので、遺族には閲覧させるものの、代理人の立会いは認めず、データも引き渡されないという。指宿弁護士は「代理人の立ち会いと2週間分の全データの引き渡しを申し入れた」としている。
ワヨミさんは会見で「裁判でもなんでも、真実を知るためには何でもする」としたが、指宿弁護士は、国会の法務委員会への映像の開示を含め、ウィシュマさんの死の真相究明をもとめるなど、「裁判の前にやれることをやる」と話していた。