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会社から自腹で資格取得するよう強制された--。こんな相談が弁護士ドットコムニュースのLINEに寄せられました。

人事総務の仕事をしているという相談者は、職場で日商簿記検定を取るように言われました。資格取得は評定リストの中の一つの目標となっているため、昇給やボーナスにも関係してきます。

しかし、テキストや問題集、受験費用などは自腹で2万円ほど。「資格パワハラ、ハラスメントだと思います。拒否できるでしょうか」と尋ねています。

同様の相談は、弁護士ドットコムの法律相談にも複数寄せられています。ある男性は業務に関する資格取得を勧められ、会社負担で高額な研修を受けることになりました。しかし、その後受験に失敗してしまい、上司からは「再受験料の10万円を自己負担で再受験しろ」と言われています。

会社は「研修に参加させたのだから再受験は当然だろう」との姿勢ですが、男性は「業務に関する資格とはいえ、再受験料が高すぎて非常に厳しい」と嘆いています。

会社命令で資格を取得する場合、受験料などは自腹を切るしかないのでしょうか。土井浩之弁護士に聞きました。

●費用負担の業務命令はできない

--自己負担で資格を取るよう言われる人も多いようです。法的には問題ないのでしょうか

結論から言うと、労働契約に示されていない費用負担の業務命令はできません。   労働契約や就業規則で合意がないにもかかわらず、労働者側が費用を負担して資格を取ることを業務命令とすることはできないでしょう。法律的には研修を拒否しただけでは、懲戒処分は有効にはならないと思います。

--事実上の業務命令であるような場合は、どうでしょうか。

会社側は「自発的に研修することを奨励しているだけだ」と主張することが多いと思います。研修をして資格を取得した者に、資格手当などの賃金を増額するという利益を与えるという形です。

これはよほど不合理ではない限り、違法・無効にはならないと思います。また、任意で研修を受ける場合は、業務命令に基づいた労働ではないので、研修時間は賃金の対象とはならないと思われます。

問題は、勧め方にあります。以下のような勧め方の場合は、パワーハラスメントに該当する可能性があります。

・上司と部下など職場の人間関係を利用して、言われた方が断ることができないような形での勧め方
・「研修しない場合は査定を下げる」など不利益を与えることをほのめかした勧め方
・ 断っても、何度も執拗に勧めてくる
・ 暴力や脅迫を伴う勧め方

これらの行為は、会社としては防止する義務がありますし、労働局などに相談することができるということになります。

【取材協力弁護士】
土井 浩之(どい・ひろゆき)弁護士
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。
事務所名:土井法律事務所
事務所URL:http://www.doihouritu.com/