選択的夫婦別姓、最高裁で次々と原告敗訴「三行半の決定は残念」「考えを聞きたかった」
選択的夫婦別姓の制度導入を求める裁判が次々と最高裁で敗訴している。
最高裁大法廷は6月23日、夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法に違反するとして、事実婚の夫婦3組が訴えた家事審判の特別抗告で、「夫婦同姓は合憲」という判断を示したが、その決定を受けてのものとみられる。
いずれも、上告理由がないという簡素な文面で、訴えていた人たちからは「残念でならない」「判断を聞きたかった」という声があがっている。
●「三行半の決定、残念」
最高裁第二小法廷(岡村和美裁判長)は6月23日付で、東京弁護士会の出口裕規弁護士と妻の女性が訴えた裁判で、出口弁護士らの上告を理由がないとして棄却した。
出口弁護士と女性は再婚同士で、女性の連れ子が旧姓を名乗ることを希望しているため、訴えを起こしていた。弁護士ドットコムニュースの取材に対して、出口弁護士は次のようにコメントした。
「私たちの事件に関しては、選択的夫婦別姓に関する大法廷決定と同日付で、いわゆる『三行半』の決定が下されました。私たちの案件の個別事情に着目して、少しは筆をさいてほしかったと思っており、とても残念です。
報道を通じて聞き及んでいる選択的夫婦別姓に関する一連のアクションに対する裁判所の姿勢に関しては、国会で制定された法律による人権制約につき、裁判所が過度に謙抑(けんよく)的な傾向にあるとの印象を抱かざるを得ません。
こうした過度な謙抑傾向は、人権保障の観点から問題をはらむにとどまらず、国会の立法権、内閣の行政権、裁判所の司法権、すなわち三権の相互の抑制と均衡により、適正な統治を企図した権力分立の趣旨を著しく損なうものと受け止めています」
また、妻も次のようにコメントした。
「選択的夫婦別姓に関するニュースは、子どもたちの通う中学校や高校でも話題になっています。何十年と国会で改善できていない問題であるにもかかわらず、今回、裁判所が、私たちの主張に関して、憲法の問題ではなくて、ただの法令違反を主張しているにすぎない旨、指摘した点は、まったく理解できませんし、大変残念に思います。選択的夫婦別姓が早く認められることを切望します」
●サイボウズ・青野社長の訴訟、広島の家事審判も
続く6月24日付の決定で、最高裁第一小法廷(木澤克之裁判長)は、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」の社長、青野慶久さんら4人が上告していた訴訟について訴えを退けた。
青野さんたちの訴訟は、日本人のカップルが離婚した際に戸籍法の手続きをすれば「婚氏続称」ができることや、日本人と外国人が結婚した際も夫婦別姓が選べるのに対して、日本人のカップルが婚姻するときだけ「戸籍法上の氏」が選択肢にないのは違憲であると訴えていた。
最高裁の決定では、出口弁護士らに対するものと同じく、上告理由がないとした。青野さんらの代理人をつとめている作花知志弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のように述べている。
「最高裁としては、6月23日の大法廷決定が、今係属しているすべての別姓訴訟への最高裁としての回答である、という立場だったのだと思います。
ただ、私たちの訴訟は、戸籍法上の氏を使えば、民法上の別姓よりもより早く選択的夫婦別姓が実現できるという問題提起をした訴訟でしたので、民法の別姓訴訟とは別に、そのアイディアに対する最高裁の考えを聞きたかったという気持ちが強いです。
しかし、私たちの訴訟が選択的夫婦別姓訴訟のトップを切り、その後、多くの別姓訴訟が申し立てられて、現在は国会が動きつつあります。自民党の中でも賛成派が生まれて、むしろ反対派は少数となりつつあります。
さらに、稲田朋美衆院議員が私たちのアイディアである戸籍法上の氏による別姓の法改正案を提言するなどの効果も生んでいます。その意味で一定の効果は生まれているのではないかと思っています」
このほかにも、最高裁第一小法廷は6月24日付で、広島市の医師らが別姓での婚姻届を受理するよう求めていた家事審判で、特別抗告を棄却する決定を下している。