タイヤ空気圧「多めに入れときましたんでー」OK? 空気圧“過多”の影響とは
タイヤが空気圧不足のまま走っているクルマは、4台に1台といわれます。燃費をはじめ悪影響が大きいため、業界では定期的な空気圧点検を呼び掛けています。では、空気圧「過多」はどのような影響があるのでしょうか。
悪影響大きい空気圧不足 では「多め」は?
タイヤの空気圧不足は様々な悪影響がいわれますが、逆に空気圧「過多」はどうなのでしょうか。
タイヤのエアチェックのイメージ(画像:写真AC)。
近年、クルマのタイヤにまつわるトラブルが増加傾向にあり、JAF(日本自動車連盟)への救援要請は2017年度までの10年間で約10万件も増えています。その要因のひとつが、タイヤの空気圧不足で、JATMA(日本自動車タイヤ連盟)によると4台に1台が空気圧不足のまま走っているといいます。
クルマにはそれぞれ、タイヤの適正空気圧が設定されています。JATMAによると、適正空気圧より50kPa(キロパスカル)不足の場合、高速道では4.8%も燃費が悪化するなど、「実質的に(1リットルあたり)4〜7円、高いガソリンを使用するのと同じ計算」なのだとか。このほかタイヤの両肩が偏摩耗することによる寿命の低下や、バーストの危険性もいわれています。
こうしたこともあってか、ガソリンスタンドなどで空気充填を依頼すると、「多めに入れておきますね」といわれることも。たとえば適正空気圧220kPaに対し、300kPa近く入っていることもあります。
もちろん、空気圧不足の状態に至るまでの時間稼ぎにはなりますが、空気圧の低下が避けられるわけではありません。多めといっても、実際どれくらいが「適正」なのでしょうか。
タイヤ接地面の真ん中ばかりが摩耗する
タイヤの空気圧過多の影響について、JATMAに聞きました。
――タイヤの空気圧が多すぎる場合、どのような影響がありますか?
極端にいえば、ですが、タイヤが緊張状態にあるため、傷を受けやすくなるといえます。また、トレッド(接地面)の真ん中部分が接地するようになり、真ん中のみ摩耗が進むほか、乗り心地にも影響します。ただ、多く入れたとしても、タイヤが破裂するわけではありません。
――空気圧過多の影響は、体感できるものでしょうか?
それは難しいかもしれません。タイヤは、それ自体の指定空気圧も製品ごとに決まっており、それに車両の重量や乗り心地を加味して、車種ごとの指定空気圧を自動車メーカーが設定しています。車種により足回りの堅さ、柔らかさもありますし、扁平のタイヤはもともと堅めに設定されていますから、乗り心地の良し悪しは一概には判断できないでしょう。
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つまり車種ごとの適正空気圧は、そのクルマにとって乗り心地を含めた「ベストバランス」の数値なのだそう。外部の人が一概には乗り心地を判断しづらいものの、同じクルマを乗り慣れた人にとっては、やはり「空気圧が高すぎると乗り心地が悪くなるのがわかる」という声も聞かれました。
運転席で空気圧不足を警告してくれる車種も(画像:写真AC)。
JATMAでは、指定の空気圧から「20kPaまでの範囲で」多めに入れることを推奨しているそうです。とはいえ、これより多めにしても、空気を抜く必要はないとこと。クルマを走らせた直後のタイヤが温まった状態では空気が膨張しているため、安易に抜くと冷寒時に不足状態になる恐れがあるといいます。
空気圧過多よりも、不足の方が弊害はずっと大きい−−JATMAはこう話します。「指定空気圧は、昔より総じて高めになっていますので、よく確認して数値に見合った量を入れてほしい」とのことでした。