新鋭ラーメン店『MENクライ』(浜松町)の圧倒的な“超極太麺”にラーメン官僚がハマるワケ
食楽web
駅を中心に近代的な高層ビルが建ち並び、隣の新橋・虎ノ門エリアと合わせて、都内を代表するビジネス街の一角を形成する、大門・浜松町エリア。
ビジネス街には、主にそこで勤務する数多くのビジネスマンの胃袋を充たすために、様々なジャンルの飲食店が存在するのが常。こちらの大門・浜松町エリアも、この原則に漏れず、町の発展と歩調を合わせる形で、数多くの飲食店が軒を連ねる一大飲食店街へと成長を遂げました。
その中でも特に目立つのが、「早い・安い」という、ビジネスマンの食事の必須要件を満たすファストフード店や麺専門店。とりわけラーメン店は、それに「旨い」を加えた「早い・安い・旨い」の三拍子が揃う店舗が多く、大門・浜松町エリアも、自ずとラーメン激戦区へと成長していきました。
店舗の場所は、各線(JR、東京モノレール羽田空港線)浜松町駅から徒歩4~5分程度(南口からのアクセスが特に良好)
2021年2月8日、そんな同エリアにオープンしたのが、今回ご紹介する『MENクライ』です。
「屋号には『麺食らい』という意味合いのほか、『面食らい』『男が泣く(MENCRY)』といったニュアンスも込めました」と高橋店主。一度耳にしたら脳裏に焼き付いて離れない店名です
と、ここで、私がどうしてこの『MENクライ』への訪問を思い立ったのかについて、経緯を簡単に説明しておきます。
まず、第1の理由。同店は、2016年5月に大井町の地で開業した『和渦』(2019年4月に『和渦TOKYO』として北品川に移転)のセカンドブランドなのです。『和渦』が都内でも指折りの実力店であることも相まって、その2号店となる『MENクライ』も、オープン前からラーメン好きの間で注目を集めていました。
第2の理由。それは『MENクライ』の麺が、他店に類例をほぼ見ないほど太い(超極太)ということ。この「超極太麺」というパワーワードが、数多くのラーメン好きのハートに刺さり、私もその例外ではなかったということです。
実力店の2ndブランド&超極太麺。ラーメン好きであれば、そんなそそるファクターが2つも盛り込まれた店舗を放置できるはずがありません! というわけで、訪問が少々遅くなってしまいましたが、私も『MENクライ』へと足を運んできました。
どれを食べても激ウマ! 連食必至の絶品ラーメンたち
「醤油ラーメン」850円
現在、同店が提供する麺メニューは「醤油ラーメン」「いりこラーメン」「油そば」の3種類と、そのバリエーション。いずれの品にもしっかりとした位置付け、存在意義があり、それぞれが揺るぎない個性を放っています。
「まず、定番メニューとして『醤油ラーメン』の商品化を決めた後、白醤油ベースの『いりこラーメン』を開発。そして最後に、超極太麺という主張の強い麺の持ち味を最大限フィーチャーできるメニューとして『油そば』の提供を始めました。当面の間は、この3本柱でいきたいと考えています」と高橋店主。
3つのメニューのスープ等の構成は、三者三様。「醤油ラーメン」のスープは豊潤の極み。鶏・豚・真昆布・香味野菜からダシをとり、名門醸造所・岡直三郎商店の「日本一生揚げ醤油」と、七福醸造の「有機白醤油」をバランス良くブレンドしたカエシを合わせたもの。
「いりこラーメン」850円
「いりこラーメン」のスープは、シンプル・イズ・ベスト。鶏・豚に大量の伊吹産いりこを加えて炊き上げたダシに、七福醸造の「有機白醤油」のみを用いたカエシを合わせています。
「油そば」850円
一方、スープOFFの「油そば」は、ニンニクや唐辛子などをブレンドし、うま味の発露を極大化させた甘辛いタレを使用しています。
驚くべきは、用いる素材に何ひとつ無駄がなく、しかも目指す味を演出するのに必要不可欠なものを用いていることです。
「うちは1号店の『和渦』とは異なり、既製品も臨機応変に活用し、自分のこだわりをあまり前面に押し出さないようにしています」と謙遜する店主ですが、個人的には、到底、言葉どおりには受け取れないほどの完成度の高さだと感じました。
「醤油ラーメン」の麺。極太の平打ち縮れ麺なので、スープを持ち上げる力が強くスープの味をしっかりと感じられる
麺は、岩手産のもち麦「もち姫」や北海道産「春よ恋」「きたほなみ」等の国産小麦を100%用いた、純手打ちの超極太縮れ。早朝から生地を丹念にこね延ばし、手作業で切り分けるという、手間ひまの塊です。
強烈なコシと弾力を誇り、箇所によって太さや厚みがランダムな点が大きな特徴。食感の心地良さを存分に楽しむタイプで、例えば、刀削麺など、ハンドメイドな極太麺がお好きな方にとっては、こたえられない仕様でしょう。
「いりこラーメン」の麺。力強いコシを保ちながらも心地よい噛み応え
トッピングのチャーシューにも妥協はありません。岩手産国産豚の雌の肉を厳選し、自家製のタレに漬け込んでじっくり吊るし焼きしたチャーシューは、薫香とジューシーな肉の風味が、否応なく食欲をかき立て、食べ手を幸福の絶頂へと導きます。
「油そば」の麺。3杯とも同じ麺を使用しているとは思えないほど、各種ラーメンの味に麺がマッチしている
事前の想像をはるかに上回るハイレベルな味わいに、食後、自然と口から賞賛の言葉がこぼれ出てしまいました。
「確約はできませんが、この『MENクライ』の味は、広く店舗展開していければと考えています」と高橋店主。
この味が複数の店舗で味わえるようになれば、きっと、東京のラーメンシーンに革命が起こるに違いない。日本のラーメンシーンは、どこまでレベルアップすれば気が済むのだろうか。そんなことを考えながら、店を後にした私でした。
店主(高橋宏幸氏)のプロフィール
・恵比寿の人気店『九十九ラーメン』で研鑽を重ね、2016年5月23日、大井町の地に『中華そば和渦』を開業。
・同店で、丸鶏・貝出汁に牡蠣のうま味をプラスさせた「醤油そば」や、貝出汁にホタテ・甘エビの風味をのせた「塩そば」などの創作ラーメンを積極的に提供し話題を集める。
・2019年4月15日、大井町から北品川へと移転し、『和渦TOKYO』へと屋号変更。同店でも、全商品既製品を用いず、素材の一つひとつにこだわり抜いたラーメンを果敢に提供し、さらなる支持を獲得。
・そして今般、浜松町の地に2号店である『MENクライ』をオープン。「『和渦TOKYO』は、店舗展開させずに時流に合わせて進化する店、『MENクライ』は、店舗展開させ多くの人たちにラーメンの魅力を共有してもらうための店にしていきたい」というのが、店主の現在の目標。
●SHOP INFO
店名:MENクライ
住:東京都港区芝1-3-4 山谷ビル 1F
TEL:非公開
営:11:00~14:30、18:00~19:30、土曜、祝日11:00~14:30
休:日曜
●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。