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 アメリカで2020年4月に誕生し、同年末から2021年3月ごろまで話題を席巻した、音声SNSアプリサービス「Clubhouse(クラブハウス)」。現在、往時の勢いは見る影もなく、「時間が食われすぎる」「日本上陸は失敗に終わった」といった意見も少なくない。

 同サービスについて本誌に2月上旬、「ハマってしまって、睡眠不足で疲れています(笑)」と、自らの体験を交えた分析を寄せてくれたITジャーナリストの三上洋氏が、ブーム沈静化の原因について、こう語る。

「クラブハウスは、それまでにない画期的なサービスでした。そのために有名人がドッと使い、マスも含めてメディアが大きく紹介しましたよね。同様のインターネットサービスで、ここまでメディアが騒いだのは、かつてないことだったと思います。

 たとえば『ポケモンGO』は、現実とゲームが連動していた機能の新しさが取り上げられましたが、クラブハウスはそれをはるかに上回る報道過熱状態でした。メディアの熱が冷めるとともに、ユーザーも冷めていったというのが、いちばんの理由だと考えています。

 また、ユーザー増加の初速がよすぎたのも、問題でした。普通はジワジワとユーザーが増えていくのものですが、そのぶん “飽き” の反動が大きくなってしまったんです」

 三上氏はコンテンツ面についても、問題点を指摘する。

「『有名人の話には価値があるけど、一般人の雑談を聞いていてもしょうがないよね』ということに、ユーザーが気づいてしまったんです。たとえばラジオやテレビは、プロが出演したものを、編集のプロがおもしろいコンテンツに作り上げ、提供しています。視聴者は、それを自然に享受しているんですが、『当たり前のこと』ではありません。

加えて、“話したがりのおじさん” が増えすぎました。話を聞くよりも、自分の話を聞いてほしい人が多くなってしまったんです。『俺には、こんな実績がある』という自慢話や、説教めいた話をする場面が、目立つようになってしまいました」

 それでも三上氏は、「クラブハウスがおもしろくなるのは、これから」と語気を強める。

「最近、クラブハウスを使った新しい動きが出てきています。実際にあった例として、トマト農業をしている方がクラブハウスを利用して、農家同士のコミュニケーションをとり、直販の売り上げをアップさせたケースなどがあります。

 マスに向けたツールとしては、あまり効果的でないかもしれませんが、このトマト農家のような “小さな経済” の助けになる可能性が大いにあります。ほかにも、たとえば美容師さんなどに顕著ですが、特定の業界の人たちが集まる “業界部屋” は、利用者が多く人気ですね。

 さらに、まだ一部のユーザーにのみ試験的に許されている段階ですが、投げ銭機能も実装されました。これからは、クラブハウスを主戦場として、コンテンツ配信を始める人も増えてくるでしょう。この投げ銭システムと、近々リリースされるAndroid版で、第2次ブームが起こりますよ」

 いい意味でも悪い意味でも、「これから」をどうするかの “岐路” に踏みとどまっているようだ――。