VR観光しながらお土産が買える 「未来の物産展 from 青森」を見てきた

JR東京駅に隣接する「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で、VRを活用したイベント「未来の物産展 from 青森」が3月17日(水)〜28日(日)まで開催されます。「物産展」といえば、地方の美味しい食材や名産品を、食べたり買ったりできるイベント。普段なら東京の至るところで、いろんな地方の物産展が開催されているところですが、コロナ禍の今は地方からの出展も、買い物を楽しむ機会も少なくなっています。

「未来の物産展 from 青森」はそんな今開催が難しい物産展をVRで実現するもの。「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」に設置された3メートル×3メートルの特設スペースで「Oculus Quest 2」を使用し、最大4人まで同時に体験できます。

ヘッドマウントディスプレイを被ると目の前に「弘前城の桜」が広がっていて、四角いスペースは多階層のVR空間内を、まるでエレベーターに乗っているかのように縦、横に移動。ほかにも「奥入瀬渓流」、「青森ねぶた祭」、「岩木山(津軽富士)」、「A-FACTORY(シードルの工房)」といった、青森の美しい風景や観光名所が360度の視界で広がります。

スペース内にはそれぞれの観光名所ごとに、青森の名産品やお酒、スイーツなどが並んだパネルが表示され、モニターに映る現地の販売員とやり取りしながら、買い物が楽しめます。コントローラーなどは使用せず、手を使ったジェスチャーコントロールで、パネルから商品を選んでカートに追加できます。VR体験終了後にタブレットでカートを確認して決済すれば、実際に商品を受け取ったり、「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」内で味わえます。

ユーザーはアバターとして表示され、パネルから手で商品を選ぶとカートに追加できるしくみ。VR内のモニターと通じて遠隔にいる販売員と会話ができます

「青森ねぶた祭」ではVRならではの距離感でねぶたの迫力を体験できます。津軽富士と呼ばれる岩木山も抜群の羨望です
「未来の物産展 from 青森」はJR東京駅八重洲中央口外の「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で、期間中11〜19時まで無料で体験できます
3メートル×3メートルのイベントスペースで、無料で体験できます。消毒や検温、VRマスクの使用など、感染予防対策も徹底されています
VR体験後、タブレットを使ってカートに入れた商品をチェック。レシートを受け取ってレジで決済すれば、商品を受け取ったり食べることができるしくみ
体験後受け取るカードのQRコードをスマホで読み取ると、取り扱いされている物産品や青森の旅行情報を見ることができます

「未来の物産展 from 青森」は、JR東日本スタートアップと、VRコンテンツを手がけるABALが共同開発する、リアルとバーチャルを掛け合わせた流通小売りシステム「Hybrid Retail Platform」の実証実験として展開されるもの。ABALは昨年、東日本旅客鉄道およびJR東日本スタートアップが開催する、「JR東日本スタートアッププログラム2020」の採択企業に選ばれています。

「Hybrid Retail Platform」は、ABALが開発する多階層のVR空間や、VR空間内でのビデオ通話を可能にするVR技術「ABALシステム」を基盤にしていて、このビデオ通話にはドコモの5Gネットワークが活用されています。販売員は現地にいながら、東京にいるユーザーとVR空間内で双方向にコミュニケーションができるしくみです。

ABAL 代表取締役社長の尾小山良哉氏によれば、今回は1か所だけですが、たとえばイベントスペースを複数の場所に設けることで、出展者は現地にいながら複数カ所への同時出店が可能になるとのこと。参加者はVR観光を楽しみながら新しい買い物体験ができ、また物産展の主催者は大きな展示会場を確保しなくても、複数の場所にある3メートル×3メートルのスペースをVR空間でつなぐことで、大規模な物産展を開催できるといいます。

「未来の物産展 from 青森」のしくみ。遠隔地にいる販売員との接続にはドコモの5Gネットワークが活用されています
JR東日本スタートアップ 代表取締役社長 柴田裕氏
ABAL 代表取締役社長 尾小山良哉氏
NTTドコモ 法人ビジネス本部 5G・IoTビジネス部 担当部長 有田浩之氏

ABALはドコモが実施している「5Gオープンパートナープログラム」のパートナー企業でもあり、「ABALシステム」はドコモの「5Gパートナーソリューション」にもなっています。今回のJR東日本×ABAL×ドコモという座組は、こうした背景もあって実現したもの。NTTドコモ 法人ビジネス本部 5G・IoTビジネス部 担当部長の有田浩之氏は、ドコモがパートナー企業とともに手がけてきた5Gソリューションの25%を映像伝送、18%をXRが占めていることを例に挙げ、VRと5Gの相性の良さを強調しました。

移動が制限される中でも、新たな観光と小売りビジネスの形を検証する今回の「未来の物産展 from 青森」ですが、JR東日本スタートアップ 代表取締役社長の柴田裕氏は、「VRで青森の魅力を体験してもらい、また自由に移動ができる日常が戻ったら、ぜひリアルな青森を旅してもらいたい」と話していました。