3月のひな祭りが近づき、人形メーカーからは新作のひな人形が発表される時期となりました。子どもに災いが降りかからないように、との願いを込めて飾られる様々なひな人形の中でも、これほど防衛する意識の高いものはいない?というミリタリー色の強いひな人形がTwitterで話題です。

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 3月3日の「桃の節句」にひな人形を飾るのは、民俗学的に解釈すると、我が子に降りかかる災いを人形(ヒトガタ)に身代わりになってもらい、将来の幸せと家の繁栄を願うという習俗が発端とされます。

 日本各地には紙で作った1対の人形を川に流す「流しびな」という習俗が残っており、人形に災いの身代わりになってもらい、川に流すことで災いから逃れるという、ひな祭りの原形を見ることができます。

 そういう意味では、お内裏様とおひな様が銃で武装し、周りをザクや装甲戦闘車両が固める……というミリタリー色の強いひな飾りは、積極的に「降りかかる災いから防衛する」ひな人形本来の役割を果たしているのかもしれません。

 この重武装したひな飾りは「シングルファーザーの模型部屋のはずなのに」の名前でTwitterを利用している、とある公務員さんの家にあるもの。普段は戦車などミリタリー系のプラモデルを作っている様子などを投稿しているのですが、同時に2人の娘さんたちとの楽しいシングルファーザー生活も紹介されています。

 このひな人形は、お父さんが単身赴任から帰ってきた10年ほど前、人からいただいたものそうで、娘さんたちよりお父さんの方が積極的に飾っていたんだとか。ところが数年たち、だんだん普通に飾るのに飽きてきたお父さんが、気まぐれでカプセルトイの対物ライフルをひな人形に持たせてみたら、大きさがジャストフィット。


 ひな人形の衣装とライフルのミスマッチ感が面白く、ついでに三人官女や五人囃子の代わりとばかりに、ザクも並べてみたんだとか。さらには戦車など装甲戦闘車両も……気づいた娘さんたちは大爆笑だったそうです。

 それ以来、ひな人形が武装するのが恒例になったそうで、娘さんのお友達も「あ、ひな人形にザクがいる!お父さんに見せよう!」と写真に撮ってメールしたり、おばあちゃんのお友達も「こりゃまた勇ましいもの持ったひな人形だね」と笑うなど大好評。一昨年からひな飾りの箱に、ライフルが「正式装備」として入るようになったといいます。

 Twitterでも武装したひな飾りは、毎年恒例としてフォロアーさんが楽しみにしています。2021年は「今年も雛祭りの時期になりました。娘達を守る為にお内裏様もお雛様もマシンガン持って勇ましいです!ジオンと陸自の支援を受けて娘達に近づく悪い虫を殲滅するのだ!」と、先日完成した16式機動戦闘車が仲間入り。

 このツイートに寄せられた反応では、同じく陸上自衛隊の装備品である120mm迫撃砲 RTや10式戦車の模型写真を「援軍です笑」と送る方や、お父さんの娘を防衛する心構えを好意的に受け止める方がほとんど。父親としては、やはり仲良く暮らしている娘さんが大事なだけに、共感する方も多いようです。

 実際、娘さんはお父さんが大好きで、Twitterに投稿される仲睦まじい暮らしぶりに「こんな父娘関係がうらやましい」という声も。模型用の作業机を娘さんが勉強のため占拠したり、お父さんの「ガルパンおじさん」ぶりをはじめ、娘さんたちがお父さんの趣味を肯定しているところも素敵ですね。

 娘さんたちを「悪い虫」から防衛するひな人形たちですが、怪しい相手に対して先制攻撃をするのではなく、あくまでも「専守防衛」の姿勢でいるようです。お父さん率いるひな人形部隊は、将来娘さんが連れてくるかもしれない相手に対し、どのような作戦行動をとるのか……ちょっと楽しみでもありますね。

<記事化協力>
シングルファーザーの模型部屋のはずなのにさん(@mokeibeya)

(咲村珠樹:宮崎県民俗学会員)