本田圭佑、ボタフォゴ退団で全紙の一面に。クラブ幹部から手厳しい声
本田圭佑が12月30日、ボタフォゴ退団を自身のSNSで正式に伝えた。数日前から噂されていたことを彼自身が正式に認めた形だ。
その日からブラジルの新聞全紙の一面は本田一色だ。もしかしたらこの時点ではコロナウィルスのニュースよりも騒がれているかもしれない。ネイマールがクリスマスから元日までぶっとおしのパーティーを企画して手ひどく叩かれたが、そのスキャンダルもふっ飛ばす勢いだ。
記事の見出しは、言葉こそ多少違うがみな同じだ。
「本田は困難に陥ったチームを見捨てて、逃げていく」
ボタフォゴ退団を自身のSNSで明らかにした本田圭佑 photo by Reuters/AFLO
ボタフォゴのエドゥアルド・バロッカ監督はラジオのインタビューでこう言った。
「本田の話は一切したくない。なぜなら今はボタフォゴを出ていく話をする時ではないからだ。チームを救うために誰もが、選手もコーチも幹部もサポーターも全員が120%の力を出す必要がある時だ。彼が何を言ったかなどに興味はない。とにかく我々は何がなんでもチームを救わなくてはならない」
バロッカ監督はボタフォゴがコリンチャンスに2−0で敗れ、厳しい状態がさらに厳しくなった時、チームマネージャーのトゥリオ・ルストーサからその話を聞いたらしい。受けた打撃は「泣きっ面にハチ」などという生易しいものではなかったろう。
本田はこれまでなかなか力を出せずにいたが、それでも監督は本田をいまだに頼みにしていた。少し前にボタフォゴのメディカルスタッフから話を聞いたが、彼らは監督から「できるだけ早く本田を取り戻してほしい。そのために最大の努力を払ってくれ」と再三言われたといた。「A残留のためには彼の経験がチームに必要なのだ」と監督は力説していたという。実際、予定よりも早く回復できそうだと、そのスタッフは嬉しそうに言っていた。
今から約1カ月前、本田はバロッカ監督に約束していた。
「ボタフォゴと残留の戦いをするために、できるだけのことをします。自分のすべてを出し尽くします」
それだけにバロッカの失望は大きかった。
別のラジオ番組でバロッカは「これからは本当にここにいたいと思う選手たちだけと、ともに戦いたい」と言っている。まぎれもなく本田へのメッセージだろう。
先日の会長選挙で勝ち1月1日からボタフォゴの新会長となるドゥルチェシオ・メッロは怒りを通リ越して、もう開き直ってもいるようだった。
「彼の移籍は悲しくない。今やめてくれるなら少しでも金が助かる。27試合プレーして3ゴールしかできない選手なら別に必要ない。彼はすべての期待を裏切った」
ついには本田圭佑の代理人さえも、こんな発言をするようになった。
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それにしても本田のこの行為はどうしても納得できない。以前は「本田は真のプロフェッショナルだ」という称賛の声がよく聞かれた。だが、危機に陥ったチームを助けるのではなく、さっさと見捨てていく。それもチームが敗戦して打撃を受けた直後という最悪のタイミングにチームに告げる。そんな選手を真のプロとは言わない。
本田はキャプテンである。キャプテンは皆の手本にならなければいけない。逆境でこそ強くあらねばならない。しかし彼からその責任感はまるで感じられない。
また、チームに馴染む気持ちもあまりなさそうだった。ポルトガル語も結局は覚えなかったので、チームメイトに馴染むこともなかった(かつてやはりリーダーとして迎えられたクラレンス・セードルフは完璧なポルトガル語をしゃべった)。
ボタフォゴ関係者によると、ロッカールームでの会話にも混ざらない。話し合いにも参加しない。まるでボタフォゴに興味がないようだったと言っている。1カ月半前、本田は「自分はチームの従業員ではなくパートナーだ」と言っている。ボタフォゴのある幹部は今回の報を受け、「何がパートナーだ。ばかばかしいにもほどがある」と、吐き捨てていた。
メディアの意見も手厳しい。ブラジルの有名サッカージャーナリスト、ルイス・アウグスト・サイモンは大手スポーツサイトにこう書いている。
「彼は自分の権利だけは主張し、その実、自分は契約も守れない。ラモン・ディアス(前監督)を解任したことで直接クラブ幹部を責めたのに、ヨーロッパからオファーが来たからとチームを見捨てていく」
この移籍には彼なりの理由、言い訳があるのかもしれない。しかし、それでも彼が裏口からこそこそ出てこうとしているのには変わらない。少なくともボタフォゴのすべての人間はそういう印象を受けている。
ボタフォゴと契約する直前、本田は「オリンピック代表チームに招集された場合、そちらを優先させてほしい」と依頼した。本田がボタフォゴのオファーを受けたのはオリンピックのためにコンディションを整えたいからなのは明白だった。しかしボタフォゴはそれを受け入れた。彼に手を差し伸べた。そしてヒーローとして扱い、キャプテンに指名し、ユニホームやマスコット人形を作った。そんな関係を、よくシーズン終了前に一方的に破棄できたものである。
クラブ幹部やサポーター、チームメイトすべてに共通している感情は「失望」だ。本田はもうブラジルには戻ってくることはできないだろう。今から約1年前、空港で1万5000人のサポーターに熱狂的に迎えられた彼は、今度はどのようにリオを去っていくのだろう。