新藤兼人賞『37セカンズ』HIKARI監督が金賞に感涙
2020年度の「新藤兼人賞」授賞式が4日に都内で行われ、金賞の『37セカンズ』HIKARI監督、銀賞の『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督、プロデューサー賞の『スパイの妻<劇場版>』岡本英之、高田聡、山本晃久が出席。金賞を受賞したHIKARI監督は、「これからも頑張っていきたい」と涙ながらに喜びを語った。
日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが、今年度公開作品の中から将来性ある新人監督を選出する「新藤兼人賞」。2020年度は187作品が選考対象となり、最終選考に残った監督9名の中から、金賞・銀賞が決定した。
HIKARI監督が『37セカンズ』で描いた主人公は、生まれた時に37秒息をしなかったたため、身体に障害を抱えてしまったユマ。彼女の姿を真正面から捉えつつ、エンターテインメントとしても成立させた。HIKARI監督は「この作品ができるまで、すごく長い時間を要しました」と話し始めると、「女性監督で初の長編映画、主人公は演技をしたことがなく、障害も持っている。断られることがたくさんありました」と難航した映画製作を振り返る。
それでも周囲には協力者もおり、彼らと自分自身を信じることで難局を打開。人々の心を揺さぶる作品が完成した。過去には、『幻の光』の是枝裕和監督、『凶悪』の白石和彌監督、『南極料理人』の沖田修一監督、『真夜中の弥次さん喜多さん』の宮藤官九郎監督など、そうそうたる顔ぶれが金賞を受賞しており、HIKARI監督も「重みを感じながら、これからも頑張っていきたい」と涙ながらに語っていた。
若者たちの憤りと前に進むパワーを存分に表現した『佐々木、イン、マイマイン』で銀賞に輝いた内山監督は、「『37セカンズ』が頭一つ抜けていた」という総評を聞き、「ぶっちぎりの2位だったのかな」と述べると、自身の人生はいつも2番目だったことを明かす。
しかし逆に言えば、「『また頑張れ』と言われているような気がしています」と前向きに捉えると、「いま『佐々木、イン、マイマイン』は劇場で公開されています。これまでも逆境に向かって歩いてきた人生ですが、ここまで逆境なのかという感じです。でも僕は映画館が大好き。映画で人生を変えてもらったので、たくさんの人に映画館に足を運んでほしい」と力強く発言。そして「若造だからという枕詞で言わせてもらえるなら」と前置きし、「いまの閉鎖的な世界をぶち破ろうと思っているので、こんな僕とご一緒していただけたら」と会場の映画プロデューサー陣にアピールしていた。(磯部正和)