漫画家がコロナ禍を前にたちどまって考えた。そこで見えた景色とは?

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新型コロナウイルスの大流行による緊急事態宣言で、私たちは長い期間、自宅で過ごす日々が続いた。漫画『テルマエロマエ』などで知られる漫画家のヤマザキマリさんは、この期間に何を思い、何を考えていたのか。

『たちどまって考える』(中央公論新社刊)は、パンデミックを前にしたヤマザキマリさんが、長期間、家に閉じこもっていた間に自分や社会と向き合い、たちどまったことで見えてきた景色を書きつづった一冊だ。

もともと漫画家は部屋に引きこもって行う仕事のため、自粛期間中も生活自体に大きな変化はなかったとヤマザキさんはいう。そして、精神的に大きな変動がなかったのは「人間はいつ死ぬかわからない」という感覚が、コロナ以前から身に馴染んでいたこと、自分の人生に計画を立てたことはなく、常に自分の目の前に乗るべき波が来たら乗ってみる、という生き方をしていたことがあるという。

しかし、そう考えてはいたものの、ストレスがたまらないわけではない。これまで、国内外の様々な場所に訪れる「旅」というインプットがあったからこそ、漫画などでのアウトプットができていた。それができなくなった生活は、ストレスがたまるものだった。

旅に出ることを封じられ、自宅で過ごしたヤマザキさん。その持て余したエネルギーをどう生かしたのか。

旅の代わりにしていたのが、今まで以上に本を読んだり、映画を観たり、考え事をすることに時間を費やすことだった。それに加え、他者と過ごす時間が少なくなり、自分の考えを他者の言葉に置き換えたり、すり換えたりすることは減り、「自分の考えを自分の言葉で言語化する」という技がいつにも増して鍛えられたという。本書では、ヤマザキさんがこれまでに、そして自粛中に触れてきた映画や文学作品、漫画などが紹介されている。

日本だけでなく、世界中の人々が、たちどまることを余儀なくされたこの期間に、普段あまり考えないことを考えたり、新たな趣味や読書や映画鑑賞に時間を費やし、自分自身とも向き合うことをした人は多いだろう。ヤマザキさんは、たちどまり何を考えたのか。本書を通して、その心の内に触れてみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

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