関連画像

写真拡大

システム開発などを手がけるIT企業(東京都港区)で働く30代の会社員・ウメダさんが、職場での受動喫煙によって、体調を崩し休職したところ、そのまま退職扱いになったとして、11月17日、東京地裁に労働審判を申し立てた。会社員としての地位を確認するとともに、100万円の慰謝料などを求める。

事実上の解雇と主張するウメダさんは11月17日、会見で「代表者らは屋外にある徒歩10分の喫煙所にも行ってくれなかった」と話した。

●受動喫煙の対策を求めた

ウメダさんは2017年2月に同社に入社。当初は客先常駐で働いていたが、2018年7月〜2019年6月まで1年間の育児休業を取得した。

復職した同年7月1日、代表者の自宅を兼ねる本社オフィスで勤務を開始。代表者や、一部の社員らが、リビングにある台所の換気扇下でタバコを吸うため、咳が止まらない状態になったという。

代表者に、在宅勤務や客先常駐での働き方を要望するとともに、室内禁煙などを求め、それらが実現するまでは有給消化することを申し入れた。また、受動喫煙症との診断書を提出している。

しかし、具体的な受動喫煙対策がとられることないまま、2020年2月7日に、休職期間満了として、自動的に退職となっていることが通知された。

ウメダさんは、加盟したプレカリアートユニオンを通じて、改善を申し入れたが、なされなかったため、申し立てに至った。

●事実上の解雇だと主張

申立人代理人の増田崇弁護士は「就労困難であり、復職のための改善がなされず、事実上の解雇をされた」とする。

台所とリビングには区切りがなく、法令で定められた「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」が守られていないと主張する。

会社側は、ガイドラインは、健康増進法の施行された2020年3月1日からのものであると主張しているそうだ。しかし、申立人側は、それでも、受動喫煙から労働者を保護することを定めた労働安全衛生法にのっとり、それ以前から受動喫煙対策が実施されるべきだとする。

なお、客先常駐は派遣先が見つからず、労務管理の必要性から在宅勤務も認めなかったという。ベランダでの喫煙は、マンションの管理組合からの要請により、できなかったそうだ。

ユニオンの清水直子執行委員長は「屋外の喫煙スペースには往復10分かかり、業務効率が落ちる」との会社主張を紹介した。

「優先すべきは命や健康だというのは結論をまたないと思う。驚いています」

●咳やめまいがします

ウメダさんは「受動喫煙をうけると、咳やめまいがします。(煙が)多ければ多いほど、咳が多くなります」と話す。睡眠不足など、軽い体調不良が重なることで、その症状はひどくなるそうだ。

「対応すると半年待たされ、それで解雇されました。体が苦しいだけでなく、精神的にしんどい思いをしたので、なんとかしたい」