ギャグ漫画をなぜ実写化?『とんかつDJアゲ太郎』撮影現場レポート
伝説のギャグ漫画を実写映画化した『とんかつDJアゲ太郎』(10月30日公開)の撮影現場取材会が、昨年10月に東京・渋谷のクラブで行われた。映画化に至る経緯や、北村匠海を主演に起用した理由について、小原一隆プロデューサーが語った。
本作は、渋谷の老舗とんかつ屋「しぶかつ」の三代目・アゲ太郎(北村)が主人公。ある日配達で訪れたクラブでこれまでにない高揚感を覚えたアゲ太郎は、とんかつもフロアもアゲられる男・とんかつDJを目指すことになる。アゲ太郎が一目惚れする女性・苑子役を山本舞香、人気と実力を兼ね備えるDJ屋敷役を伊藤健太郎、アゲ太郎の師匠となるDJオイリー役を伊勢谷友介が務める。
この日撮影されたのは、DJとして一度挫折を味わったアゲ太郎が、クラブの専属DJとなるオーディションに挑むためDJブースに再び立つシーン。エキストラ約60人がフロアにひしめくなか、北村、そしてアゲ太郎の仲間で“三代目ブラザーズ”役の加藤諒、浅香航大、栗原類、前原滉がステージに。山本がフロアに、2階には伊藤と大規模な撮影が行われていた。北村は、短い前髪にキャップ姿と原作のアゲ太郎の再現。真剣な表情で、DJとしてのパフォーマンスを披露していた。
本作の企画が始動したのは、約3年前。フジテレビに所属する小原プロデューサーは、当時映像・音楽業界で話題となっていた原作を読み「ほんとくだらなかったんですよね(笑)。とんかつとDJ一緒にしなくてもいいじゃんって」と思ったそうだ。しかし、「面白いもの、バカバカしいものを真剣に、本気をだしてつくる文化がフジテレビにはずっとある。そういう作品を映画でやりたいという思いと、『とんかつDJアゲ太郎』の原作が一致した」と映画化しようと決意したと明かす。
キャスティングについては、「見たことのあるキャストが見たことのある役をやる、というのはあまりおもしろくない。いままで挑戦したことがない人が、挑戦したことのない役をやる。そして、若い力で作っていきたい」と熱い思いがあった。俳優として北村のことをずっと逸材として目を付けていたが、コメディーとは程遠いイメージがあった。「でも、きっとできるんじゃないか」と名前が挙がり、北村本人と実際に会い、本人も前向きだったことから「北村くんに賭けてみよう」と決定した。
アゲ太郎役として、これまでのイメージを覆すようなハイテンションな演技で新境地を見せる北村。最初は「普段アガることを知らない僕がアゲ太郎役に」と驚きが隠せなかったようだ。「カルト的人気がある作品。ましてや、いまのクラブ(DJの)シーンも頑張っていかなきゃいけない。いろいろな責任やプライドを感じながら、アゲ太郎というキャラクターをどう完成していこうかと考えました。でも、当たって砕けろみたいな感じでやっています」と笑顔を見せる。
この日の北村は、DJパフォーマンスのシーンで少し緊張した面持ち。「ドキドキしますね。実際に僕はDJブースでDJをしたことがあるんですが、針置くだけでも本当に手が震えます。撮影で僕が音を出していないときでも、すごく緊張感があります。特別な場所かもしれないです」と役とリンクするように、高揚した様子を見せていた。(編集部・梅山富美子)