「脳を食べるアメーバ」により亡くなった少年(画像は『News4Jax 2020年9月8日付「Parents: Putnam County boy, 13, dies from brain-eating amoeba」(Special to WJXT)』のスクリーンショット)

写真拡大

川や湖、池などの比較的温かい淡水に生息する殺人アメーバ‟フォーラーネグレリア”による感染症で先月初め、13歳の少年が死亡した。少年は7月末、家族と一緒にキャンプに出かけた際に湖で泳いでおり、そこで感染した可能性が高いという。『News4Jax』などが伝えている。

【この記事の他の写真を見る】

米フロリダ州パットナム郡パラトカに住むタナー・レイク・ウォール君(Tanner Lake Wall、13)が8月2日、「原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)」という感染症で亡くなった。淡水に潜むアメーバ‟フォーラーネグレリア”は、人の鼻から侵入すると脳に寄生し組織を食べる。水温が高くなる7月から9月に淡水で泳ぐ時は特に注意が必要で、感染すると約98%が死に至るという。

タナー君は7月24日と25日にフロリダ州北部のキャンプ場で過ごし、家族や友人らと一緒に敷地内にある湖で泳いでいた。

タナー君が吐き気、嘔吐、激しい頭痛、首の痛みに襲われたのは湖で泳いだ2日後で、両親は息子を地元のパットナム・コミュニティ医療センターに連れて行った。しかしそこで告げられた病名は細菌感染症である「連鎖球菌性咽頭炎」で、タナー君の症状は改善するどころか悪化してしまった。

医師の診断に疑問を抱いた両親は、入院中のタナー君をゲインズビルにある大学病院「UFヘルス」に転院させ、医師の診断を仰いだ。そして衝撃の告知を受けたのだった。

「息子さんは原発性アメーバ性髄膜脳炎に感染しており、残念ながら治療法はありません。」

人工呼吸器に繋がれた息子を前に、両親は言葉を失った。

こうしてタナー君は8月2日、全ての脳活動が完全に停止し人工呼吸器が外された。

母親のアリシア・ホワイトヒルさん(Alicia Whitehill)は息子がPAMに感染したことについて、次のように語った。

「息子が泳いだ湖では、夫や娘たちも含め50人ほどが泳いでいましたが、その中でPAMに感染したのはタナーだけでした。夫や私は幼い頃から川や湖で泳いで育ち、これまで何の問題もありませんでした。タナーは釣りやハンティング、外遊びが大好きな健康な子だったのに、こんなことになって今でも信じられない気持ちです。」

アリシアさんと夫のトラヴィスさん(Travis)は弁護士を雇い病院を訴えることも考えているそうだが、「息子の死を無駄にしたくない」と述べるとこのように続けた。

「PAMを発症することは非常に稀ですが、PAMがいかに怖い感染症であるか、またどんな病気なのかをより多くの人に知ってもらいたいと思います。また気温が高くなる夏は、川や湖にPAMについて注意を促す看板を設置して欲しいと思います。」

なおPAMに感染すると、1〜9日(中央値は5日)ほどで脳の組織が溶けてしまう。初期症状は発熱、寒気、嘔吐、頭痛などで、症状が進むと首の痛み、痙攣、意識障害、幻覚などを起こして昏睡状態に陥り、1〜18日後には死に至る。PAMの予防には、水温が高く水位が低い時期の入水を避けたり、鼻クリップやマスクの使用、頭を水に入れないことなどが有効だそうだ。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、米国内でのPAMは2009年から2018年で34例報告されている。川や湖、池などで遊泳後に発症したケースがほとんどだが、汚染された水道水で鼻を洗浄したことにより感染した例もあるそうだ。

画像は『News4Jax 2020年9月8日付「Parents: Putnam County boy, 13, dies from brain-eating amoeba」(Special to WJXT)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)