久保建英をめぐる噂の真相。ビッグクラブ関係者が明かす獲得の現実性
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2019−20シーズン、マジョルカで1年を過ごした久保建英(19歳)の市場価値が高騰している。
久保はマジョルカでリーグ戦34試合に出場(23試合に先発)し、4得点5アシストを記録。攻撃を力強く牽引した。特にコロナ禍を経てのリーグ戦再開後は、10試合連続で先発出場し、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
久保の移籍ネタは絶えない。スペイン国内では、レアル・ソシエダ、ベティス、セビージャ、バジャドリード、国外でも、パリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティ、ミラン、アーセナルなど、獲得に名乗り出たクラブの名前が次々と上がる。ひとつはニュース性があるからだが、実際に多くのクラブの関心事になっているのは事実なのだ。
マジョルカ退団は決定的。来季の所属先が注目される久保建英
どの噂も、ありそうな話とは言える。
たとえば、シティが久保に興味を持っているというのは、それなりの理由付けができる。
まず、久保はシティグループの横浜F・マリノスでプレーした過去がある。そして、シティの監督であるジョゼップ・グアルディオラはバルサ育ちの選手であり、監督としても偉業を成し遂げている。グアルディオラが掲げるプレースタイルはかつてのバルサに近く、久保にも合わないことはない。
シティ関係者は当然、久保をリストに入れているだろう。10代で世界有数の選手である日本人に、注目しないはずはない。しかし、獲得に向けての現実性は乏しいだろう。
シティ関係者のひとりに問い合わせたが、答えは明快だった。
「周り(現場)ではそんな話は一切聞かないよ。もちろん、プレーヤーとして評価しているし、情報は入っている。でも、レアル・マドリードが手放すことはないだろう」
シティには、ヴィッセル神戸で指揮をとっていたファン・マヌエル・リージョがアシスタントコーチに入っている。リージョは久保を「ポテンシャルはスーパー」とFC東京時代から格別に評価していた。当然だが、マジョルカでのプレーも確認している。
しかし、レアル・マドリードが、欧州制覇で直接の敵となってきたシティに、虎の子の久保をむざむざと明け渡すことはない。契約を結んでいる2024年6月まで、じっくりと戦力になるかを見極め、条件を満たしたらマーケットを支配できる。もし「主力は難しい」と判断したとしても、20代前半なら移籍金として3000万ドル(約32億円)程度は見込める。焦って売りに出す理由はないのだ。
現状、久保の去就で明らかなのは、2部降格のマジョルカを退団することだけだろう。ちなみにマジョルカは、少なくとも12人の選手が退団。久保はアレハンドロ・ポゾやクチョ・エルナンデスとともに、レンタルバックされるひとりだ。
2020−21シーズンも、久保は国内のクラブにレンタルされる公算が高い。
「マジョルカよりも上位、欧州カップ戦出場、もしくは狙えるチーム」
それがひとつの基準だろう。そうなると、6位でヨーロッパリーグの出場権も得たレアル・ソシエダが有力か。
攻撃的なプレースタイルで、スペイン代表のミケル・オジャルサバルなど有力選手が多く、久保がステージを上げるのに最適だろう。レアル・ソシエダはレアル・マドリードと友好的な関係を保っているが、レンタルで2年契約のマルティン・ウーデゴールの去就を決めるのが、先決となるだろう。
その行方は、これからも二転三転するだろう。
「久保の新天地はベティスで決まり!」
そんな報道が出た翌日には、カウンターのような噂も立ち上っている。
「ベティスの永遠のライバル、セビージャが久保に食指を動かす!」
セビージャはベティスとは比べものにならないほど、レアル・マドリードとの関係がいい。セルヒオ・レギロンはレアル・マドリードからの期限付き移籍選手だが、過去にも多くの交流があった。2019−20シーズンは4位で、新シーズンはチャンピオンズリーグに出場するだけに、条件も満たしている(15位だったベティスは欧州カップには出場しない)。
「久保ダービー」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、そんな表現で同じセビージャ市のクラブの争いを焚きつけている。
噂を楽しんでいる段階だが、こうした噂を楽しむのも、スペインサッカーの醍醐味のひとつである。久保がそのエンターテインメントの渦の中心にいるというのが、すでに快挙なのだ。
レアル・マドリードは久保へのリクエストを吟味しながら、復帰の可能性をわずかに残しつつ、来シーズンの行方を決めることになる。大物外国人選手の移籍交渉が先で、決定にはまだ時間がかかるだろう。クラブとしてはなにより、直近のチャンピオンズリーグが最優先なのだ。
「久保、EU国籍取得は難しいが、マジョルカ島で自動車運転免許を取得!」
スペインではそんなことまでニュースになる。世界的スター選手の入り口にいる証明だろう。しばらく、久保の周りは騒がしくなりそうだ。