ヘビクラ隊長はジャグラス ジャグラー! 青柳尊哉インタビュー
『ウルトラマンZ』の出演者に青柳さんの名前を見た時から、是非お話をうかがいたいと思っていたことが実現しました! しかもヘビクラがジャグラーであるということが正式にオープンになったところでの掲載にしていただいたので、ジャグラス ジャグラーに対する青柳さんの想いをたっぷりとうかがいました。このインタビューを読んだ後で、ここまでの『ウルトラマンZ』を観直しても楽しめますよ!
本当にジャグラーが隊長ですか!?
――本作に出演することになった経緯を教えてください。
青柳 ちょうど1年前、去年の7月頃、早い段階でお話をいただいていました。田口(清隆)監督とは『ウルトラマンオーブ』以降も付き合いがあって、いろいろな作品でご一緒させていただきました。一番信頼している監督であり、本当にくだらない相談もしたりしていて。ある時に「実は新しいウルトラマンを監督するんだ」という話を聞いて、「ぜひやりなよ!」って話をしていたんですが、それまでも「いつかもう一度ウルトラマンをやりたいよね」とか「ジャグラーで出たいですね」という話はしていたんですが、まさか(円谷さんから)隊長でオファーを受けるとは思いませんでした。しかも「正体はジャグラーで!」って。どういうこと? って思いました。そんなの絶対に許可下りないと思っていたんですよ。最初は話半分くらいで聴いていたんですが、各方面からもお話をいただいて…それでも「本当に?」って感じでした。それが去年の7月〜8月くらいだったので、事務所がものすごいスピードで僕のスケジュールをおさえてくれました(笑)。
最初は戸惑いましたね。断ったほうがいいんじゃないかって一瞬迷ったんですが、でもこんな名誉なことはないし、僕以外にこの役をやられても嫌だなと思って。すぐ「やります!」とお返事しました。
――ヘビクラ ショウタという役についてはまだ聞いていなかったんですか。
青柳 最初から決まっていたのは、『隊長でジャグラー』ということでした。ジャグラーにはジャグラーの目的があって隊長をやっている、というオファーでした。そのときは脚本の吹原(幸太)さんも一緒にいらっしゃったので、田口監督と吹原さんと3人でいろいろなことを話しました。田口監督はどんなことがやりたいのか、「なるほど」ということばかりでした。僕はもう「任せます」というか、おふたりのムーブに全力で応えていいきたいと思いました。円谷プロさんやそれ以外に関わる人達も、青柳が出るということを受け入れてくださったので、その思いに応えなきゃ。という感じです。
――ヘビクラとジャグラーって印象は全然違いますよね。
青柳 僕も田口監督もそもそもあんなに別人だと思われるとは予想していなかったんです。ヘビクラという役とはいえ青柳尊哉が出る。ヘビクラっていう名前が、要するに「ジャグラー(蛇+倉)」ですし。だからすぐに、「ジャグラーだ!」ということになると思っていたんですが、意外と反応が錯綜したというか、結びついていない方がいらっしゃいましたね。
監督たちとはすごく丁寧にディスカッションをしました。使い分けというか、芝居の中でジャグラーを出すタイミングを間違えないようにしようって。「ヘビクラだから」ではなく「ジャグラーだから」というのが前提で、2役あると思われたらいけないということも含めて。ただそれは人格を変えているということではなくて、ジャグラーがヘビクラを演じている、ということにしていこう、となりました。でも、画面での見え方はヘビクラがベースになってくるから、じゃあ要所で出てくるジャグラーはどこでどう使おうかっていう議論があって。
基本的には内側だけがジャグラーで、外に発するときはヘビクラで出そうとか。すごく難しかったですね。各話の監督にしても、押し切ろうと思えばジャグラーの素の人格を出していけるけど、それだと意味がないから、ジャグラーらしさが強いところは削ったんです。第1話でも第2話でも、当初は台本にあったけど使わなかった部分があるんですよ。これはやりすぎかなっていうところ。
この後の放送で、ジャグラーの目的だとか、なぜここにいるのかっていうことが明かされてくるんですが、『オリジンサーガ』や『オーブ』のシーン的なダブらせがあるんですよ。そこでジャグラーの表情が漏れてくるっていう楽しみ方をさせてもらってます。だから、初めて見る人には気持ち悪い隊長だったり、信頼していいのか、何を考えているのかわからない隊長だったり、別の楽しみ方をして頂けるように作っているんですが、以前から知ってる人にはセリフのオマージュだとか、ジャグラーの心をキャッチできている人にとっては、くすぐられるシーンになっていたり。「そういうことだったのか!」と納得できるシーンをちりばめてやっています。でも一番に考えているのは、今までの作品を知らない人に楽しんでもらえることでしたね。
ただ、難しいっていうことはすごく言ってるんです。田口監督からは「とにかくジャグラーは枯らしたい」って言われてたんです。僕の中でも、『オーブ』や『オリジンサーガ』のときが二十代、三十代だとすると、四十代に入ったジャグラーはどんな枯れ方をしていって、どんな変化をしていくのかっていうのはすごく話しましたね。ジャグラー自身も変容していくっていうのを、『Z』では見せていけたらいいねと話していました。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
ヘビクラ隊長は理想の上司 No.1!
――ヘビクラ隊長だけを見ると、理想の上司のような存在ですよね。
青柳 そうですね。僕も、こういう人がいたらいいなって思います。監督たちとは「隊長然としないようにしよう」ということをすごく話してて。隊員たちと同じくらい目線が近いというか。ただ、昼行灯まで堕落させたいわけじゃないから、締めるところは締めて、許容できるところは許容しようっていう。そういうセリフもあったりしますが、どう読もうかなっていうのが楽しみではあります。
――第2話で、柔道でハルキを締めたあとで、ひょこっと顔を出したときに話すあのときのトーンがジャグラーっぽく見えました。
青柳 そうですね、あれは完全に狙っています。その前に投げ飛ばして「こんなものか」って言うのも、『オリジンサーガ』をダブらせてたりしていて、要所でちりばめさせています。台本のト書きにも書いてあるんですよ。そういうところもすごく丁寧です。だからすごく監督陣と話しあっていますね。
僕自身が客観視というか、自分が演じていても見えていない部分があるので、もう少し抜くかテンションを上げるかっていうディスカッションをしながらお芝居を作っています。ジャグラーはみんなで作ってきたものなので、ヘビクラも同じように作っていくんだな、と。僕がひとりでやってきたものではないなと改めて感じさせてもらっています。
――第1話で初めてウルトラマンゼットをモニターで見たときのヘビクラ隊長の表情もおもしろかったです。
青柳 あれもどう見せるか議論しました。露骨過ぎてもおかしいし、知らない顔をするのもおかしい。でも後で「あのときから」っていうことを用意しておかないとっていうことで、丁寧にすり合わせしました。このタイミングでこういう理由だったらこのリアクションだよね、と。現場でもすごく話しながら。
――7月18日放送の第5話で、「やっぱりジャグラーだったんだ」と確信しました。青柳さんもジャグラーであることはそもそも視聴者に隠そうとしてないんですね。ということは、ヘビクラ隊長のみんなに対する接し方も、ジャグラーの中にあったものなんですね。
青柳 理屈としてはそうですね。ただ、目的に向かっていくためには手段を選ばないというか、何を演じていてもいい。ジャグラーがヘビクラ隊長を演じているのは、自分の目的のため、さらに大きなところに向かうための手段…これ以上言ってしまうと後半があまりおもしろくなくなってしまうかもしれませんね。そんな感じです。
――この時点で、第1話から見直すとおもしろいかもしれませんね。
青柳 おもしろいと思います。細かいところですが、セットもよく見ていただくと、ジャグラーの片鱗が見られると思います。”孤軍奮闘” を美術チームのスタッフが作ってくれたときはうれしかったですね。「ジャグラーならこれを掲げたほうがいいと思って選んだんです」って。僕の机の周りとかもいろいろ飾ってあって。そういう細かいところでもジャグラーとして居続けさせてくれる。心だけはジャグラーでいられるっていうのは、そういうスタッフ陣の思いに助けられていますね。
――『ウルトラマンレオ』ではウルトラセブンであるモロボシ・ダンが隊長をやりました。ジャグラーは光の戦士ではないけど、それと同じだけのワクワク感があります。
青柳 うれしいです、ありがとうございます。僕もワクワクしていますし、皆さんのいろいろな反応が楽しみです。この話を最初にもらって、ジャグラーの目的、狙いをきいたときには、「きたか!」と思いましたね。ジャグラーが抱えていたもの、僕自身が抱えているものとか、それは田口監督や吹原さん、もしかしたら見ている視聴者の方もたくさんいると思うんですが、そういう思いを代弁しながら目的に向かっていきます。
――それがすごく楽しみですね。
青柳 ウルトラマンの中にある普遍的なものと時代によって変容していくものが絶対的にあって、そのようなものに対して、ジャグラーは違う形で寄り添ったり斜めに切ったりっていうことをしていけるキャラクターなので、そういうところは楽しみにしていてほしいなと思います。期待には応えたいし、いい意味で裏切りたいなと思っているので。まだ撮っていないシーンもあるので、僕もすごく楽しみにしていますし、悩みながらやっています。
『オーブ』以降、いろいろなウルトラの先輩方とお目にかかることが増えたんですが、歴代の隊長を演じた方が、必ず「隊長は孤独だ」って言うんですよ。ひとりで司令室にいるとか、指示をしているだけのシーンとか。モニターを見ているだけで、モニターに向かってしゃべるっていう芝居がすごく多いんです。そのモニターには当然何も映っていないんですよ。しかも今回は話す相手がAIだったりするので、リアクションの返しもないから、本当にひとりでしゃべってるんですよ。僕とユカはひとりでしゃべる機会が多くて。孤独だっていう意味がすごくわかりました。『オーブ』でジャグラーを演じていたときとは違う孤独さがありますね。「このモニターには何が映ってますか?」とか(笑)。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
隊長は孤独だ!
――『オーブ』のときと現場の雰囲気はちがいますか。
青柳 『オーブ』も一人ぼっちの撮影や、スーツアクターさんとの芝居が多かったんです。チームワークとしての雰囲気は、温かさの部分に変わりはないですが、『オーブ』のときのほうがストイックに作っていた感覚です。かね。今回は僕も一応防衛隊の一員という形ですが、現場は俳優陣も含めて若いスタッフ陣が増えています。そういう意味ではちがった形の活気はあるかもしれないですね。『オーブ』がストイックだったとしたら、今はスクラムを組んで、和気あいあいと高めるみたいな感じ。主役の平野(宏周)くんがとても明るくチームの先頭に立って引っ張ろうとしてくれていて、若いヨウコ役の松田(リマ)さんとユカ役の黒木(ひかり)さんも、勘がいいんです。現場に溶け込むスピードとか、そういうのも図抜けているというか。僕自身が何かをしようとしなくても、彼女たちに任せられるという。皆、現場が楽しそうでよかったなと思います。
――共演者の方々はどんな感じですか。
青柳 橋爪(淳:イナバ コジロー役)さんがとてもおちゃめというか、天然な方で、現場がとても和むんです。とても柔らかくて温かい人です。小倉(久寛:クリヤマ長官役)さんも柔和な方ですね。ユカは説明セリフがすごく多いのですが、本当に真摯にお芝居を楽しもうとしていて、ヨウコ役の松田さんも、ハキハキとした快活さで現場を明るくしてくれて、ある種のムードメーカーです。野田(理人:カブラギ シンヤ役)くんは、ヴィランの役所で、最初の頃にいろいろな質問をされました。「絶対負けたくないんですよ」という熱い思いを話してくれたりして、俺も負けてられないなって感じさせてくれました。ハルキ役の平野くんなんかは、熱くておちゃめでにぎやかで。でも勉強熱心だから、すごく一生懸命台本を読み込んでいたりしていて、すごいなって単純に思います。僕が何かをする必要がないくらい、立派な座長だなと思います。皆を引っ張っていってくれ、僕は影でコソコソ暗躍するから、って(笑)。
――みんなそれぞれキャラクターも立っていますしね。
青柳 彼らは自分のキャラクターを掴んでから出すのがすごく早いと思う。何をすべきかというところがわかっているんですよね。俺なんか、多分あのメンバーならオーディションで落ちていたでしょうね。絶対あの年齢の頃に勝負してたら落ちてますよ。ちょっと上でよかったって思ってます(笑)。
――『オーブ』のときのジャグラーも特殊だったと思います。
青柳 あれはすごく手探り手探りで。あまり悪役の人間態ってなかったから。みんな、こうやったらおもしろいんじゃないかとか、こうしようよって脚本家さんも含めていろいろな本を書いていただきました。
――言い方が悪いかもしれませんが、あんなに気持ち悪いキャラクターはなかったと思うんですよ。
青柳 気持ち悪くしたかったんですよね。セリフが、ポエムっぽいことがすごく多くて、これ真正面に言うと浮いちゃうなっていうのが最初にあったんです。これじゃあクレナイ ガイと立ち向かえないんじゃないか、ただ読むだけなら、誰でもできるでしょうって思ったんです。一方で、ここまでやっていいのかなっていう思いもあって挑戦的でしたが、ヴィランを演じる上でのテーマの一つとして、距離感を壊す、ということがあったんです。そうして生み出されたキャラクターでした。後からヴィランを演る人が「大変だ!」って言ってくれるのは、すごく名誉だなといつも思っています。
――ウルトラマンになる人たちって、偶然のような必然のような形でウルトラマンになっていきますよね。ジャグラーは自分がなりたかった光の戦士になれず、壁にぶつかって闇に落ちながらも根底にあるのは光の戦士と同じものだと思うんです。
青柳 そうかもしれませんね。みなさんがジャグラーに対していろいろな風に思ってくれればいいなと思っています。僕が思うジャグラーって、光の戦士になるということへの執着じゃないところで、光の反射のさせ方がちょっと人とは違う生き方を選んだ人。その中で彼なりの生き方、目指し方みたいなものがきっとあるんだろうな。それを僕が演じさせてもらえるので、僕なりの思いでつないでいけば、あとは皆さんがまたいろいろな想像をしていただければいいと思う。
「彼はこうなんじゃないか」と言っていただけることに、すごく助けられています。そうかもしれないね、と思うこともあるので、そういう意見をたくさんもらえると助かるんです。
――ウルトラの戦士になっている人は、ある意味恵まれている気がします。でもジャグラーは必死につかもうとしていろいろな壁にぶつかっているので、大多数の人は彼に共感するのではないでしょうか。
青柳 そうですね。僕もジャグラーを演じながら育っていったという思いがあります。ウルトラマンに変身する人って、ウルトラマンになれたという実績が圧倒的な成功体験になるわけじゃないですか。でも、みんながヒーローになれるわけじゃない。例えば、スポーツ選手になりたいというような、何かになりたいとか、こうなりたいっていう思いが、すべて叶うわけではないので。それをジャグラーはすごく体現しながらやってたし。あんなに努力するライバルっていうのもおもしろいですよね(笑)。無敵じゃない、穴ぼこだらけの彼を僕はすごく愛していたりします。
――ジャグラーのほうが、気持ちが入りやすいのと、「がんばれ」って言いたいところがありますね。
青柳 何かあるんですよね。僕もジャグラー見てて「がんばれ」って思います。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
裏切ります! いい意味で!
――もしかしたら最後にジャグラーが光の戦士になるのかも……? と『Z』への出演で思ったりもしたんですが、でもそうなっちゃったらジャグラーがジャグラーじゃないというか。
青柳 それは少年漫画的にいけばそうなのかなとも思うんですが、うまくいかない、手に入れられないっていう方がおもしろいよね、と。「光の戦士になります」と言われてもおもしろくないんじゃないかなって。確かにそれは理想的な憧れのルートかもしれないですが、やっぱりうまくいかないままいこうよ、と。そんな奴がひとりいてもいいじゃないかって思います。
――みんなの心の中は同じですからね、ジャグラーに対しては。
青柳 みんながいろいろな思いで作り上げてくれたのがジャグラーというキャラクターなので、僕も幸せです。『オーブ』が終わって、「ジャグラーがまた見たい」とつぶやいてくれている方もいらっしゃって。ジャグジャグ枠とか言われていますが、新しいシリーズにヴィランが出てくれば、必ず名前が出てきたりするので、ジャグラーは愛されているんだなと感じます。愛されたぶん、今回の『Z』は怖かったり戸惑ったり、プレッシャーになった部分もありましたが。ドキドキしましたね。
去年の夏にオファーをいただいたので、ウルトラのイベントをいろいろやりながらずーっと黙っていたんです。TSUBURAYA CONVENTIONで一堂に会したときに、そのタイミングで身内関係には伝えていいよと言われていたので、石黒(英雄)くんに報告したりして。みんな「よかった、がんばって!」とかいろいろな言い方で励ましてくれました。嬉しかったですね。
――今後の、作品とジャグラー(ヘビクラ)の見どころをお願いします。
青柳 この後坂本(浩一)監督回があって、リクが出てきます。ヘビクラ、ジャグラーとしてはここでどう関わっていくのかというのを皆さん楽しみにしていると思います。作品としてもそうだし、僕とリクという関係性を含めて楽しみにしてください。
その後は、『R/B』の武居(正能)監督回が待っていますから。そこも武居監督の思いがあって、『Z』のバトンがつながって撮影していくので、そのへんも楽しみにしてもらいたいですね。おもしろいですよ。格好いいシーンもありますし、中盤の折返し手前で、武居監督の回はシビアなお話になっています。
前半戦はこのくらいですね。後半に関しては、また取材してください(笑)。
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
青柳 ようやく、本当の意味で「ただいま」という思いです。ジャグラーという役ではありますが、ヘビクラという隊長でもあって、ストレイジのメンバーと『ウルトラマンZ』を盛り上げるべくがんばっていますので、ぜひ皆さんにはこの先も楽しみにしていただいて、『ウルトラマンZ』を作るチームをぜひぜひ応援していっていただきたいなと思います。
期待には応えますし、いい意味で裏切るので! 待っていてください。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
――本作に出演することになった経緯を教えてください。
青柳 ちょうど1年前、去年の7月頃、早い段階でお話をいただいていました。田口(清隆)監督とは『ウルトラマンオーブ』以降も付き合いがあって、いろいろな作品でご一緒させていただきました。一番信頼している監督であり、本当にくだらない相談もしたりしていて。ある時に「実は新しいウルトラマンを監督するんだ」という話を聞いて、「ぜひやりなよ!」って話をしていたんですが、それまでも「いつかもう一度ウルトラマンをやりたいよね」とか「ジャグラーで出たいですね」という話はしていたんですが、まさか(円谷さんから)隊長でオファーを受けるとは思いませんでした。しかも「正体はジャグラーで!」って。どういうこと? って思いました。そんなの絶対に許可下りないと思っていたんですよ。最初は話半分くらいで聴いていたんですが、各方面からもお話をいただいて…それでも「本当に?」って感じでした。それが去年の7月〜8月くらいだったので、事務所がものすごいスピードで僕のスケジュールをおさえてくれました(笑)。
最初は戸惑いましたね。断ったほうがいいんじゃないかって一瞬迷ったんですが、でもこんな名誉なことはないし、僕以外にこの役をやられても嫌だなと思って。すぐ「やります!」とお返事しました。
――ヘビクラ ショウタという役についてはまだ聞いていなかったんですか。
青柳 最初から決まっていたのは、『隊長でジャグラー』ということでした。ジャグラーにはジャグラーの目的があって隊長をやっている、というオファーでした。そのときは脚本の吹原(幸太)さんも一緒にいらっしゃったので、田口監督と吹原さんと3人でいろいろなことを話しました。田口監督はどんなことがやりたいのか、「なるほど」ということばかりでした。僕はもう「任せます」というか、おふたりのムーブに全力で応えていいきたいと思いました。円谷プロさんやそれ以外に関わる人達も、青柳が出るということを受け入れてくださったので、その思いに応えなきゃ。という感じです。
――ヘビクラとジャグラーって印象は全然違いますよね。
青柳 僕も田口監督もそもそもあんなに別人だと思われるとは予想していなかったんです。ヘビクラという役とはいえ青柳尊哉が出る。ヘビクラっていう名前が、要するに「ジャグラー(蛇+倉)」ですし。だからすぐに、「ジャグラーだ!」ということになると思っていたんですが、意外と反応が錯綜したというか、結びついていない方がいらっしゃいましたね。
監督たちとはすごく丁寧にディスカッションをしました。使い分けというか、芝居の中でジャグラーを出すタイミングを間違えないようにしようって。「ヘビクラだから」ではなく「ジャグラーだから」というのが前提で、2役あると思われたらいけないということも含めて。ただそれは人格を変えているということではなくて、ジャグラーがヘビクラを演じている、ということにしていこう、となりました。でも、画面での見え方はヘビクラがベースになってくるから、じゃあ要所で出てくるジャグラーはどこでどう使おうかっていう議論があって。
基本的には内側だけがジャグラーで、外に発するときはヘビクラで出そうとか。すごく難しかったですね。各話の監督にしても、押し切ろうと思えばジャグラーの素の人格を出していけるけど、それだと意味がないから、ジャグラーらしさが強いところは削ったんです。第1話でも第2話でも、当初は台本にあったけど使わなかった部分があるんですよ。これはやりすぎかなっていうところ。
この後の放送で、ジャグラーの目的だとか、なぜここにいるのかっていうことが明かされてくるんですが、『オリジンサーガ』や『オーブ』のシーン的なダブらせがあるんですよ。そこでジャグラーの表情が漏れてくるっていう楽しみ方をさせてもらってます。だから、初めて見る人には気持ち悪い隊長だったり、信頼していいのか、何を考えているのかわからない隊長だったり、別の楽しみ方をして頂けるように作っているんですが、以前から知ってる人にはセリフのオマージュだとか、ジャグラーの心をキャッチできている人にとっては、くすぐられるシーンになっていたり。「そういうことだったのか!」と納得できるシーンをちりばめてやっています。でも一番に考えているのは、今までの作品を知らない人に楽しんでもらえることでしたね。
ただ、難しいっていうことはすごく言ってるんです。田口監督からは「とにかくジャグラーは枯らしたい」って言われてたんです。僕の中でも、『オーブ』や『オリジンサーガ』のときが二十代、三十代だとすると、四十代に入ったジャグラーはどんな枯れ方をしていって、どんな変化をしていくのかっていうのはすごく話しましたね。ジャグラー自身も変容していくっていうのを、『Z』では見せていけたらいいねと話していました。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
ヘビクラ隊長は理想の上司 No.1!
――ヘビクラ隊長だけを見ると、理想の上司のような存在ですよね。
青柳 そうですね。僕も、こういう人がいたらいいなって思います。監督たちとは「隊長然としないようにしよう」ということをすごく話してて。隊員たちと同じくらい目線が近いというか。ただ、昼行灯まで堕落させたいわけじゃないから、締めるところは締めて、許容できるところは許容しようっていう。そういうセリフもあったりしますが、どう読もうかなっていうのが楽しみではあります。
――第2話で、柔道でハルキを締めたあとで、ひょこっと顔を出したときに話すあのときのトーンがジャグラーっぽく見えました。
青柳 そうですね、あれは完全に狙っています。その前に投げ飛ばして「こんなものか」って言うのも、『オリジンサーガ』をダブらせてたりしていて、要所でちりばめさせています。台本のト書きにも書いてあるんですよ。そういうところもすごく丁寧です。だからすごく監督陣と話しあっていますね。
僕自身が客観視というか、自分が演じていても見えていない部分があるので、もう少し抜くかテンションを上げるかっていうディスカッションをしながらお芝居を作っています。ジャグラーはみんなで作ってきたものなので、ヘビクラも同じように作っていくんだな、と。僕がひとりでやってきたものではないなと改めて感じさせてもらっています。
――第1話で初めてウルトラマンゼットをモニターで見たときのヘビクラ隊長の表情もおもしろかったです。
青柳 あれもどう見せるか議論しました。露骨過ぎてもおかしいし、知らない顔をするのもおかしい。でも後で「あのときから」っていうことを用意しておかないとっていうことで、丁寧にすり合わせしました。このタイミングでこういう理由だったらこのリアクションだよね、と。現場でもすごく話しながら。
――7月18日放送の第5話で、「やっぱりジャグラーだったんだ」と確信しました。青柳さんもジャグラーであることはそもそも視聴者に隠そうとしてないんですね。ということは、ヘビクラ隊長のみんなに対する接し方も、ジャグラーの中にあったものなんですね。
青柳 理屈としてはそうですね。ただ、目的に向かっていくためには手段を選ばないというか、何を演じていてもいい。ジャグラーがヘビクラ隊長を演じているのは、自分の目的のため、さらに大きなところに向かうための手段…これ以上言ってしまうと後半があまりおもしろくなくなってしまうかもしれませんね。そんな感じです。
――この時点で、第1話から見直すとおもしろいかもしれませんね。
青柳 おもしろいと思います。細かいところですが、セットもよく見ていただくと、ジャグラーの片鱗が見られると思います。”孤軍奮闘” を美術チームのスタッフが作ってくれたときはうれしかったですね。「ジャグラーならこれを掲げたほうがいいと思って選んだんです」って。僕の机の周りとかもいろいろ飾ってあって。そういう細かいところでもジャグラーとして居続けさせてくれる。心だけはジャグラーでいられるっていうのは、そういうスタッフ陣の思いに助けられていますね。
――『ウルトラマンレオ』ではウルトラセブンであるモロボシ・ダンが隊長をやりました。ジャグラーは光の戦士ではないけど、それと同じだけのワクワク感があります。
青柳 うれしいです、ありがとうございます。僕もワクワクしていますし、皆さんのいろいろな反応が楽しみです。この話を最初にもらって、ジャグラーの目的、狙いをきいたときには、「きたか!」と思いましたね。ジャグラーが抱えていたもの、僕自身が抱えているものとか、それは田口監督や吹原さん、もしかしたら見ている視聴者の方もたくさんいると思うんですが、そういう思いを代弁しながら目的に向かっていきます。
――それがすごく楽しみですね。
青柳 ウルトラマンの中にある普遍的なものと時代によって変容していくものが絶対的にあって、そのようなものに対して、ジャグラーは違う形で寄り添ったり斜めに切ったりっていうことをしていけるキャラクターなので、そういうところは楽しみにしていてほしいなと思います。期待には応えたいし、いい意味で裏切りたいなと思っているので。まだ撮っていないシーンもあるので、僕もすごく楽しみにしていますし、悩みながらやっています。
『オーブ』以降、いろいろなウルトラの先輩方とお目にかかることが増えたんですが、歴代の隊長を演じた方が、必ず「隊長は孤独だ」って言うんですよ。ひとりで司令室にいるとか、指示をしているだけのシーンとか。モニターを見ているだけで、モニターに向かってしゃべるっていう芝居がすごく多いんです。そのモニターには当然何も映っていないんですよ。しかも今回は話す相手がAIだったりするので、リアクションの返しもないから、本当にひとりでしゃべってるんですよ。僕とユカはひとりでしゃべる機会が多くて。孤独だっていう意味がすごくわかりました。『オーブ』でジャグラーを演じていたときとは違う孤独さがありますね。「このモニターには何が映ってますか?」とか(笑)。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
隊長は孤独だ!
――『オーブ』のときと現場の雰囲気はちがいますか。
青柳 『オーブ』も一人ぼっちの撮影や、スーツアクターさんとの芝居が多かったんです。チームワークとしての雰囲気は、温かさの部分に変わりはないですが、『オーブ』のときのほうがストイックに作っていた感覚です。かね。今回は僕も一応防衛隊の一員という形ですが、現場は俳優陣も含めて若いスタッフ陣が増えています。そういう意味ではちがった形の活気はあるかもしれないですね。『オーブ』がストイックだったとしたら、今はスクラムを組んで、和気あいあいと高めるみたいな感じ。主役の平野(宏周)くんがとても明るくチームの先頭に立って引っ張ろうとしてくれていて、若いヨウコ役の松田(リマ)さんとユカ役の黒木(ひかり)さんも、勘がいいんです。現場に溶け込むスピードとか、そういうのも図抜けているというか。僕自身が何かをしようとしなくても、彼女たちに任せられるという。皆、現場が楽しそうでよかったなと思います。
――共演者の方々はどんな感じですか。
青柳 橋爪(淳:イナバ コジロー役)さんがとてもおちゃめというか、天然な方で、現場がとても和むんです。とても柔らかくて温かい人です。小倉(久寛:クリヤマ長官役)さんも柔和な方ですね。ユカは説明セリフがすごく多いのですが、本当に真摯にお芝居を楽しもうとしていて、ヨウコ役の松田さんも、ハキハキとした快活さで現場を明るくしてくれて、ある種のムードメーカーです。野田(理人:カブラギ シンヤ役)くんは、ヴィランの役所で、最初の頃にいろいろな質問をされました。「絶対負けたくないんですよ」という熱い思いを話してくれたりして、俺も負けてられないなって感じさせてくれました。ハルキ役の平野くんなんかは、熱くておちゃめでにぎやかで。でも勉強熱心だから、すごく一生懸命台本を読み込んでいたりしていて、すごいなって単純に思います。僕が何かをする必要がないくらい、立派な座長だなと思います。皆を引っ張っていってくれ、僕は影でコソコソ暗躍するから、って(笑)。
――みんなそれぞれキャラクターも立っていますしね。
青柳 彼らは自分のキャラクターを掴んでから出すのがすごく早いと思う。何をすべきかというところがわかっているんですよね。俺なんか、多分あのメンバーならオーディションで落ちていたでしょうね。絶対あの年齢の頃に勝負してたら落ちてますよ。ちょっと上でよかったって思ってます(笑)。
――『オーブ』のときのジャグラーも特殊だったと思います。
青柳 あれはすごく手探り手探りで。あまり悪役の人間態ってなかったから。みんな、こうやったらおもしろいんじゃないかとか、こうしようよって脚本家さんも含めていろいろな本を書いていただきました。
――言い方が悪いかもしれませんが、あんなに気持ち悪いキャラクターはなかったと思うんですよ。
青柳 気持ち悪くしたかったんですよね。セリフが、ポエムっぽいことがすごく多くて、これ真正面に言うと浮いちゃうなっていうのが最初にあったんです。これじゃあクレナイ ガイと立ち向かえないんじゃないか、ただ読むだけなら、誰でもできるでしょうって思ったんです。一方で、ここまでやっていいのかなっていう思いもあって挑戦的でしたが、ヴィランを演じる上でのテーマの一つとして、距離感を壊す、ということがあったんです。そうして生み出されたキャラクターでした。後からヴィランを演る人が「大変だ!」って言ってくれるのは、すごく名誉だなといつも思っています。
――ウルトラマンになる人たちって、偶然のような必然のような形でウルトラマンになっていきますよね。ジャグラーは自分がなりたかった光の戦士になれず、壁にぶつかって闇に落ちながらも根底にあるのは光の戦士と同じものだと思うんです。
青柳 そうかもしれませんね。みなさんがジャグラーに対していろいろな風に思ってくれればいいなと思っています。僕が思うジャグラーって、光の戦士になるということへの執着じゃないところで、光の反射のさせ方がちょっと人とは違う生き方を選んだ人。その中で彼なりの生き方、目指し方みたいなものがきっとあるんだろうな。それを僕が演じさせてもらえるので、僕なりの思いでつないでいけば、あとは皆さんがまたいろいろな想像をしていただければいいと思う。
「彼はこうなんじゃないか」と言っていただけることに、すごく助けられています。そうかもしれないね、と思うこともあるので、そういう意見をたくさんもらえると助かるんです。
――ウルトラの戦士になっている人は、ある意味恵まれている気がします。でもジャグラーは必死につかもうとしていろいろな壁にぶつかっているので、大多数の人は彼に共感するのではないでしょうか。
青柳 そうですね。僕もジャグラーを演じながら育っていったという思いがあります。ウルトラマンに変身する人って、ウルトラマンになれたという実績が圧倒的な成功体験になるわけじゃないですか。でも、みんながヒーローになれるわけじゃない。例えば、スポーツ選手になりたいというような、何かになりたいとか、こうなりたいっていう思いが、すべて叶うわけではないので。それをジャグラーはすごく体現しながらやってたし。あんなに努力するライバルっていうのもおもしろいですよね(笑)。無敵じゃない、穴ぼこだらけの彼を僕はすごく愛していたりします。
――ジャグラーのほうが、気持ちが入りやすいのと、「がんばれ」って言いたいところがありますね。
青柳 何かあるんですよね。僕もジャグラー見てて「がんばれ」って思います。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
裏切ります! いい意味で!
――もしかしたら最後にジャグラーが光の戦士になるのかも……? と『Z』への出演で思ったりもしたんですが、でもそうなっちゃったらジャグラーがジャグラーじゃないというか。
青柳 それは少年漫画的にいけばそうなのかなとも思うんですが、うまくいかない、手に入れられないっていう方がおもしろいよね、と。「光の戦士になります」と言われてもおもしろくないんじゃないかなって。確かにそれは理想的な憧れのルートかもしれないですが、やっぱりうまくいかないままいこうよ、と。そんな奴がひとりいてもいいじゃないかって思います。
――みんなの心の中は同じですからね、ジャグラーに対しては。
青柳 みんながいろいろな思いで作り上げてくれたのがジャグラーというキャラクターなので、僕も幸せです。『オーブ』が終わって、「ジャグラーがまた見たい」とつぶやいてくれている方もいらっしゃって。ジャグジャグ枠とか言われていますが、新しいシリーズにヴィランが出てくれば、必ず名前が出てきたりするので、ジャグラーは愛されているんだなと感じます。愛されたぶん、今回の『Z』は怖かったり戸惑ったり、プレッシャーになった部分もありましたが。ドキドキしましたね。
去年の夏にオファーをいただいたので、ウルトラのイベントをいろいろやりながらずーっと黙っていたんです。TSUBURAYA CONVENTIONで一堂に会したときに、そのタイミングで身内関係には伝えていいよと言われていたので、石黒(英雄)くんに報告したりして。みんな「よかった、がんばって!」とかいろいろな言い方で励ましてくれました。嬉しかったですね。
――今後の、作品とジャグラー(ヘビクラ)の見どころをお願いします。
青柳 この後坂本(浩一)監督回があって、リクが出てきます。ヘビクラ、ジャグラーとしてはここでどう関わっていくのかというのを皆さん楽しみにしていると思います。作品としてもそうだし、僕とリクという関係性を含めて楽しみにしてください。
その後は、『R/B』の武居(正能)監督回が待っていますから。そこも武居監督の思いがあって、『Z』のバトンがつながって撮影していくので、そのへんも楽しみにしてもらいたいですね。おもしろいですよ。格好いいシーンもありますし、中盤の折返し手前で、武居監督の回はシビアなお話になっています。
前半戦はこのくらいですね。後半に関しては、また取材してください(笑)。
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
青柳 ようやく、本当の意味で「ただいま」という思いです。ジャグラーという役ではありますが、ヘビクラという隊長でもあって、ストレイジのメンバーと『ウルトラマンZ』を盛り上げるべくがんばっていますので、ぜひ皆さんにはこの先も楽しみにしていただいて、『ウルトラマンZ』を作るチームをぜひぜひ応援していっていただきたいなと思います。
期待には応えますし、いい意味で裏切るので! 待っていてください。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京