新型コロナウイルスによる首都圏1都3県と北海道への緊急事態宣言が、5月26日に解除された。感染拡大が終息したわけではないが、段階的に社会活動を再開していくなかで、スポーツも動き出すことになる。

 Jリーグの村井満チェアマンは、今月29日に新たなリーグ日程を決めるとしている。そこから再開への準備を進めていくと、6月下旬から7月上旬が再開のタイミングとなるだろう。

 再開後は無観客試合になることもはっきりした。

 感染予防の観点からJリーグが注意するべきは、「集団感染の発生源にならない」ことと「感染経路不明の罹患者を出さない」ことだろう。そのためには人の移動と接触を、できるだけ減らす必要がある。

 シーズンチケットホルダーは動きを追えるが、それ以外の入場者は移動経路の追跡が難しい。スタジアムでの観戦予防をどれだけ徹底しても、観客を入れると大きなリスクを背負うことになってしまう。

 さらに言えば、無観客にすることで運営に関わる人員を減らせる。スタジアム内の警備員や駐車場の誘導員などは、確実に削減できるはずだ。

 無観客試合となれば、シーズンシートの扱いが問題になる。

 無観客試合から収容人数を制限しての開催へ移行しても、シーズンシートホルダーが手持ちの座席で観戦するのは難しいだろう。いずれにしても、無観客試合の分は払い戻しの対象となる。
払い戻しを受けるかどうかは、購入者の選択制としてほしい。払い戻しを希望しない場合は寄付と見なして、税制の優遇を受けられるようにすればいいと思うのだ。

 無観客試合という呼び方は、制裁の意味合いを含む。これについて村井チェアマンは、「お客様がいない状況は同じですが、意図するものはまったく違う」ことから、言葉の選び方を検討したいとしている。違う呼び方を探す、ということだ。

 海外では「クローズドドア」とか「クラウドレスゲーム」、あるいは「ゴーストゲーム」といった表現が使われる。選手や観客の安全を考慮した無観客試合もあるが、基本的には規制、制裁、罰則の意味合いを持つ言葉だ。

 個人的には「無観客試合」のままでいいのでは、と思う。大切なのは呼び方ではなく、しっかりとした対策のもとで試合を実施し、感染者を出さないことだ。

 違う呼び方を使うなら、日本語にしてほしい。

 新型コロナウイルスに関する知識は、世代を超えて共有するべきものだ。子どもでもお年寄りでも分かるほうがいい。「クラスター」は「集団感染」と伝えるべきだろう。「オーバーシュート」は「爆発的に感染者が増えること」と説明したほうがいいし、「ソーシャルディスタンス」は「社会的距離」のほうが分かりやすい。

 サッカー界、スポーツ界として耳障りのいいものよりも、「Jリーグは感染予防に細心の注意を払って再開する」ということが伝わるものにしたい。そのためには、日本語による丁寧な説明を加えて「安全を最優先に考えた無観客試合」としたいぐらいである。広告宣伝的な意味を持つものとしては、シンプルなワンフレーズがいい。「自宅でJ」とか「おうちでJ」などがいいだろうか。