「ドメイン島巡り」は、ツバル(.tv)、アイスランド(.is)、バルバドス(.bb)などのccTLD(国別コードトップレベルドメイン)が割り当てられている島を訪れて、その島の生活や魅力を伝える企画です。今回は番外編として、島国ではありませんがヨハネスブルグを訪れました。南アフリカ共和国最大の経済都市にして、「世界一治安の悪い犯罪多発都市といわれるヨハネスブルグを安心して観光することはできるのか?」ということで、実際に行って確かめてみました。

ドメイン島巡り - 世界のドメイン1,000種類以上を取り扱うインターリンクが、「.cc」「.tv」「.sx」等、南太平洋やカリブ海などの「島のドメイン」約50種類に焦点をあて、実際にその島々に行き、島の魅力をレポートします。

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※取材は2019年9月に行われました。

ヨハネスブルグはどこにあるのか?

ヨハネスブルグ南アフリカ最大の都市であることから、南アフリカの首都だと勘違いされることもありますが、実際はハウテン州の州都。南アフリカは首都機能をプレトリア(行政府)、ケープタウン(立法府)、ブルームフォンテーン(司法府)に分散させていて、プレトリアに各国の大使館が置かれていることから、国を代表する首都はプレトリアだと認知されています。

目次

◆犯罪多発都市なのに危険レベル「1」

◆写真撮影NGが多いアパルトヘイト博物館

◆アフリカで一番高い場所

◆超凶悪マンションと言われるポンテタワー

ヨハネスブルグのドメイン

◆犯罪多発都市なのに危険レベル「1」

ヨハネスブルグは島国ではないためドメイン島巡りの本来の目的地ではないのですが、アセンション(.ac)とセントヘレナ(.sh)を訪れる際に経由地として立ち寄りました。



2島の取材を終え、ヨハネスブルグに到着。到着した時には既に21時過ぎでした。



オリバーダンボ国際空港の敷地内にあるプロテアホテルトランジットO.R.タンボエアポートにチェックインします。



チェックインカウンターはこんな感じ。



翌日に帰国するため、正午には搭乗手続きをしなければなりません。観光する時間も少ないので、当初はホテルで待機する予定でした。また、外務省海外安全ホームページに、「殺人、強盗、傷害などの凶悪犯罪が依然として高水準で発生しています。また、空港やホテルからの追尾強盗、カージャック、偽パトカーによる強盗被害も多く発生していますので、十分注意してください」と書かれていることも、快適なトランジットホテルで待機したい理由でした。



しかし、同ホームページを確認すると、ヨハネスブルクの危険レベルは4段階のレベルの中で最も低い「1」。アナウンスの通り、ヨハネスブルグは世界一治安の悪い犯罪多発都市のイメージですが、危険レベルが1ということで、細心の注意を払って観光してみることにしました。到着日の夜はそのままトランジットホテルに宿泊し、翌朝、まず搭乗手続きを行うために長蛇の列へ並びます。



30分ほどして搭乗手続きが完了。



ヨハネスブルグをスムーズに見て回るため、エアポートタクシーをチャーターすることにしました。空港内のインフォメーションセンターに相談すると、男性スタッフがタクシーを手配してくれました。公認タクシーの運転手は黄色いジャケットを着用しています。男性から「どこから来たの?」と聞かれ、「日本だよ」と答えると、「あー!ラグビーワールドカップ、もうすぐだよね。楽しみだなあ」と、とてもフレンドリーに接してくれました。



◆写真撮影NGが多いアパルトヘイト博物館

タクシーに乗り込み最初に向かったのは、ソウェト地区にあるアパルトヘイト博物館。ソウェト地区には、かつてネルソン・マンデラ元大統領や、黒人男性として初めてヨハネスブルク主教とケープタウン大主教に就いたデズモンド・ムピロ・ツツが住んでいました。



あと少しで博物館に到着というところで、宮殿のような建物を発見。マスジッドシラトゥールジャンナというモスクでした。毎日300人が集まり、金曜日には2000人以上の参拝者が集まるそうです。



モスクを横目に通過し、アパルトヘイト博物館に到着しました。



入口はこんな感じ。入場料は大人1名100ランド(約570円)で、チケットは白人用(Whites)と非白人用(Non-Whites)があります。



エントランスを抜けたところにある建物の前に立つと、入口は「白人用(BLANKES WHITES)」と「白人ではない人用(NIE-BLANKES NON-WHITES)」に分かれていました。先ほど渡されたチケットに従って入場します。一緒に訪れた友人同士でも、肌の色が異なるのであれば同じゲートからは入れず、アパルトヘイトを疑似体験することになります。



屋内にはケージが張り巡らされており……



ケージの中には、アパルトヘイト時代のID(身分証明書)が展示されていました。



白人専用パブの看板



建物を出ると、等身大の鏡が展示されている通路に出ます。これらの鏡の中の人々は、1886年にヨハネスブルグで金が発見されたことで集まってきた移民たちを表しています。つまり、ゴールドラッシュで一攫千金を夢見て来た人たち。



前から見ると、誰一人として顔がありません。



これより先は写真撮影禁止エリア。メインの大きな建物には、白人と黒人の差別を語る数多くの展示物があり、1994年まで黒人が白人と同じ権利を持てなかった悲惨な現実を知ることができます。博物館には日本語のオーディオガイドはありませんが、悲惨さと緊張感は十分に伝わってきました。



アパルトヘイトで有名な場所といえば、白人専用のリゾート「サンシティ」が挙げられます。6230席のコンサート会場「サンシティスーパーボウル」では、音楽に政治は無関係と考えるクイーンやエルトン・ジョンなどの大スターが連日公演を行っていました。

当時、国際連合がボイコットを呼びかけていたにもかかわらず、巨額の報酬を得てサンシティで演奏する著名なアーティストが後を絶たない状況に、スティーヴ・ヴァン・ザントを中心としたプロジェクト「アパルトヘイトに反対するアーティストたち」は、1985年にシングル「サンシティ」を発表。歌詞は「サンシティなんかで演奏したくない」といった内容で、ピーター・ガブリエル、ジョージ・クリントン、マイルス・デイヴィス、アフリカ・バンバータ、ホール&オーツ、RUN D.M.C、マイケル・モンロー、ブルース・スプリングスティーン、ボノ(U2)、ボブ・ディラン、パット・ベネターなど、総勢52名の著名なアーティストが参加して話題になりました。

下記のムービーで、実際に「サンシティ」を聴くことができます。

Little Steven's SunCity Video - YouTube

◆アフリカで一番高い場所

続いて向かったのは、アフリカで一番高い場所。カールトンセンター最上階にある展望台「トップ・オブ・アフリカ」です。アパルトヘイト博物館は郊外にあったので、博物館以外ではほとんど人を見かけませんでしたが、ダウンタウンではいたる所に人がいます。



アパルトヘイト博物館から7km、約10分で到着しました。高さ223mのカールトンセンターは、アフリカ大陸で最も高い超高層ビル。地下1階から3階までのショッピングモールは多くの買い物客でにぎわっています。開業当初は、リッツカールトンが入ったビルとして市内でも屈指のステータスを誇っていましたが、1990年代初頭から周辺のダウンタウンがスラム化。ホテルも1990年代後半に撤退を余儀なくされました。



エスカレーターで地下1階まで行き、展望台の入場チケットを購入します。料金は大人1名30ランド(約170円)。専用エレベーターで50階にあるトップオブアフリカへ向かいます。



ここが、アフリカで一番高い場所。アフリカ全土を見渡せてしまうくらい遠くまで見える360度のパノラマビュー。景色はすばらしいのですが、レストランやお店は閉鎖されており、展望台はすさんでいました。





なお、私たちがヨハネスブルグを訪れた2019年9月、ヨハネスブルグでは外国人に対する暴動が頻発していました。というわけで、トラブルに巻き込まれないよう、エレベーターで下へ降りたらすぐにタクシーに乗り込み、次の目的地へ出発します。



◆超凶悪マンションと言われるポンテタワー

飛行機の時間を考えるとあと1か所しか行けない……ということで、最後にポンテタワーへ行ってみます。タワーのあるヒルブロウ地区に到着。



ヒルブロウ地区は、ヨハネスブルグで暮らす人ですら危険だから近づかないと言われているエリアです。車から降りられる雰囲気ではありません。



ポンテシティアパート、通称「ポンテタワー」が見えてきました。高さ173m、54階建ての住居用超高層マンションです。



ポンテタワーはヨハネスブルグを一望できる一等地にあるものの、アパルトヘイト後にギャングが侵入したことでほぼ全ての居住者が退去。一時期はギャング団・麻薬の密売人・売春婦が押し寄せ、「性的サービスからドラッグまでなんでも数分で手に入る」とまで言われていましたが、現在はセキュリティを改善して多くの住民が生活しているそうです。

ポンテタワーについては、2015年にGIGAZINEでも記事化しています。

「犯罪者の巣窟」と呼ばれたヨハネスブルグの「ポンテタワー」の現状がわかるドキュメンタリー - GIGAZINE



「本当に安全なマンションになったのか……?」ということで、警備員のいるゲートを通過して地下にある駐車場で車を降ります。



1階のフロア。月曜日なのに人が全然いません。



どこから居住エリアに入れるのかわからず、清掃中の男性スタッフに聞いたところ、「じゃあ、着いてきて」と作業を中断して案内してくれました。連れてきてくれた所は、敷地内にある「デラランジェ」というコミュニティセンター。ここでは、ポンテタワーに住む子どもたちを対象としたワークショップなどを開催したり、ポンテタワーのツアーを企画したりしています。

その日の予定が書かれた黒板が置いてありました。どうやら16時からは柔道をするようです。



さっそく見学について相談したところ、54階まで行くには事前予約が必要とのこと。親切な対応で、案内担当のスタッフにも電話で交渉を試みてくれましたが、残念ながら住居エリアに行くことはできませんでした。しかし、マンション内中央の空洞になっている「コア」と呼ばれる場所まで連れて行ってもらえることになりました。アテンド料金は1名100ランド(約570円)。



古くて今にも壊れそうな階段を上ります。



暗い中、慎重に階段を上っているとコアに到着。圧巻の風景です。壁が崩落しそうな場所もありました。





一時は5階の高さまであったと言われるゴミがかなり撤去されていましたが、老朽化による事故が発生したため、撤去作業は中断されています。



……ということで、40分ほどの滞在を終え、生きてポンテタワーを出ることができました。屋内は人が少なくひっそりとしていましたが、凶悪な感じはしませんでした。



ヨハネスブルグのドメイン

ヨハネスブルグがある南アフリカに割り当てられているccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は「co.za」です。「南アフリカ(South Africa)は省略形が「sa」だから、ドメインも「.sa」では?」と思ってしまいますが、「.sa」は、サウジアラビアによって既に使用されているドメインであったため、旧公用語のオランダ語による「Zuid-Afrika」の略称「za」を使用することになったとのこと。

「.co.za」には取得制限が設けられていません。タンボ空港内では、ジンバブエに割り当てられた「.co.zw」も見かけました。



なお、ヨハネスブルグを表すドメイン「.joburg」も存在します。



2014年に誕生した「.joburg」は、GeoTLD(地理的トップレベルドメイン)の1つで、日本だと「.tokyo」や「.osaka」などが、これに該当します。南アフリカではヨハネスブルグ以外にも「.capetown」(ケープタウン)と、「.durban」(ダーバン)があります。

というわけで、今回のドメイン島巡りで訪れた場所は以下のGoogleマップ上でまとめて確認可能です。

また、「ヨハネスブルグまで実際どうやって行けばいいの?」というアクセスの詳細はここから確認可能。

ドメイン「.co.za」「.joburg」の詳細や申し込みについては、それぞれ以下のリンクから確認できます。

・「.co.za」ドメイン



・「.joburg」ドメイン



(文・写真:インターリンク https://www.interlink.or.jp/

ドメイン島巡り https://islanddomains.earth/)