「麒麟がくる」高橋克典、「もうちょっと暴れたかった」 織田信秀役で大河初出演
放送中の「麒麟がくる」(NHK総合・毎週日曜20時〜ほか)で織田信秀を貫禄たっぷりに演じる高橋克典(55)。本作で大河ドラマ初出演を果たした感想をはじめ、「内側はどんどん痩せていく」という信秀役のアプローチ、息子・信長との複雑な親子関係などを語った。
高橋演じる織田信秀は、尾張で海運を牛耳り、美濃の斎藤道三(本木雅弘)や駿河の今川義元(片岡愛之助)と争う勇猛果敢な戦国武将。敵対していた道三や今川と和議を結ぶも、今や今川の勢力が目前に迫っていた。第十二回「十兵衛の嫁」では、いよいよ自身の死期が近いことを悟った信秀が、信長(染谷将太)らを集めて織田家の今後を話し合う会議を開く。しかし、重要拠点である末盛城を有力家臣と共に信長の弟・信勝(木村了)に委ねるという信秀の采配に信長は怒り狂う。
高橋は、大河初出演について「撮影はとても楽しかったです。今回は4Kでの撮影もありますし、自分の年齢もありポジションがそれまでと違ってきていますので、どんなお芝居が合うのか、模索しながら演じました」とコメント。「大河ドラマはすごくスケール感が大きいです。どこに行ってもすごい大がかりなセットが組んであるので、毎回驚きました。すごく大勢の出演者やスタッフがいますし、撮影がどんどん進んでいきますから、僕にとってはなかなかない現場でしたので、非常に刺激的でした。『大河』という名のごとく大きな河の流れの中に、撮影自体もあるような気がしました」と大河ならではのスケールに刺激を受けた様子だ。
信秀を演じるにあたり、プロデューサーから言われたのは「今まで言われていた信長のイメージを信秀が請け負ってほしい」ということ。豊かな経済力を武器に道三や今川をいなしてきた信秀だが、肩に重傷を負い弱っていく。言わば絶対的な存在だった武将の栄枯盛衰を「戦に出て行っては負け、気持ち切り替えて勢いよく出て行くけど、また負けるという(笑)……信秀は疲れきっていて、もう運もなく、体には毒も回ってきている。それを自分でも見切っているんですよね。それでも力を振り絞って元気には見せていますが、内側はどんどん痩せていきます。ですから、あまり剛毅なところが見せられなかったので、少し残念でした。もうちょっと暴れたかったですね」と振り返る。
そして、信秀と信長の親子関係。普段は悠長に見える信長だが、父・信長と接するときは神経を尖らせ、自分を認めようとしない信長に複雑な思いを抱いている。高橋は、そんな信長の心理をこう分析する。「信長にとっての信秀は、もしかしたら越えられない山なのかもしれません。尾張は、周りがいくつもの国に囲まれていて大変だったと思います。それでも金を使ったりいろんな手だてを使って、自分の国を守る。信長から見たら信秀が憧れであり、反面教師でもあったと思いますが、どういう形であれ父が息子に与えた影響は絶大だったはずです」
第九回では、信秀が信長のある言動に激怒する場面も。父に褒められたい一心で、松平広忠の首を“手土産”として献上した信長だったが……。そんな15、16歳の信長に言葉をかけるとしたら? という問いに、高橋は「もっと熟慮しろと。熟慮して力を使うべきところに力を使えと。ただ力が強いだけじゃなくてそういう頭の良さを持ちなさい、と言いたいですね」と話す。「『こいつは思慮が浅いな』と。たとえば第9回で松平広忠の首を持ってきたときも『今これやっちゃうと余計大変なんだよ』と、しかも婚儀で美濃と手を結んでいるのに、やっかいごとに美濃も巻き込むことになるので、信秀は落胆するんですよね。ただ力が強いだけではなく、策も使わないと先に進めない、ということを伝えたいですね」と若き信長に言葉を贈った。(編集部・石井百合子)