E−1選手権が行われている間にも、真剣勝負は行われている。

 クラブW杯が開幕していたことには驚いた。Jリーグのクラブが出場していないと、こんなにも話題にならないものかとびっくりする。自分自身の興味のアンテナが、まったく反応していなかったのかもしれないが。

 日本代表が香港代表と対戦した14日には、J1参入プレーオフ決定戦が行われた。日本対中国戦で閑散としたスタンドを体験したばかりだったこともあって、湘南BMWスタジアム平塚の熱気に圧倒された。

 J1の16位でプレーオフに臨んだ湘南は、負けたらJ2に降格してしまう。J2の4位からトーナメントを勝ち上がってきた徳島は、勝たなければJ1に昇格できない。どちらも失うものが大きい一戦である。

 当事者たる監督、選手、ファン・サポーターには申し訳ないが、失うものの大きな一戦には独特の緊張感があり、それが観る者の気持ちを前のめりにさせる。客観的な立場でも、気持ちを込めて観ることができるのだ。

 90分+追加タイムが終わったとき、両チームはあまりにも対照的な感情に支配された。プレーオフのシステムの是非はともかく、サッカーが内包するドラマティックな要素がたっぷりと詰めこまれていた。

 平塚から帰宅して、E−1の日本対香港戦をテレビで観た。熱心な日本のサポーターが映し出されていたが、第1戦同様にスタンドは閑散としていた。

 森保一監督は、第1戦からメンバーを総入れ替えした。国際経験の少ない選手をテストするのに、この試合はうってつけだ。ましてや今大会は、中3日での3連戦である。ローテーションは当然だ。
 
 湘南対徳島の試合後、引分けでJ1残留を果たした湘南の浮島敏監督は、「戦術うんぬんというよりも、選手が大事なところで身体を張ってくれたので、それが成果になったと思います」と振り返った。0対1で折り返した前半はやや不満が残ったものの、後半は球際での粘り強さが局面での優位性につながり、ひいては相手を押し込むことにつながっていた。

 日本対香港戦はどうだったか。力関係を考えると負けられない相手であり、勝っても僅差では周囲を納得させられない。香港との初戦が2対0に終わった韓国は、かなりの批判にさらされたと聞く。

 3−4−2−1の1トップで起用された小川航基がハットトリックを達成するなど、日本は5対0で快勝した。香港には3本のシュートしか許さず、そのすべてはワク外だった。

 内容的にも申し分のないものだったことを数字は伝えるが、相手は香港である。機能性に不安が残る急増チームでも、チャンスは作り出せる。さらに言えば、東京五輪世代の軸足となる3−4−2−1のシステムで、22歳以下の選手がごっそりと起用されたのだから、すでに培われた連携を持ち込むこともできる。「戦術うんぬん」というよりも、個々が力を発揮すれば結果はついてくる試合だったのだ。

 18日の韓国戦は、過去2試合と意味合いが違う。

 海外組を招集できていないのは両チームに共通するが、韓国はJリーグとCリーグのクラブに所属する選手も加えている。日本より経験値の高いメンバーが揃っている。

 日本も練習を重ねてきた。8日の集合から2試合を挟み、8度のトレーニングを経て韓国戦に臨む。試合を通して修正点をあぶりだし、改善する時間もあった。

 それがつまり、韓国戦が中国戦や香港戦と意味合いの違う理由である。結果と内容を問う以前の問題が、格段に減っている。森保監督と選手たちにとっては、負けたら失うものの大きい一戦である。