急増する退職代行。その背景を考える!
辞めたいのに辞められない
退職代行。
この言葉が少し前からネット上で話題になっています。
文字通り、退職の意向を本人に代わって会社に伝えるサービス。
会社を辞めたいのに辞められないという人の助け舟的な存在として、このサービスの利用が急速に増えているのです。
厚生労働省では、各地の労働局で受けた自己都合退職に関する相談件数をまとめています。
これは働く人がみずから退職を申し出た際などに起きたトラブルの相談件数で、平成29年度に3万8900件を超え、ここ10年で2倍余りに増加しています。
この中には「辞めたいのに辞めさせてもらえない」といった相談が多数含まれています。
史上空前とも言われる人手不足の中、従業員の退職は大打撃。必至に引き留めたくなる企業心理は分からなくもありません。
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5万で辞めれるならコスパいいじゃん
企業からの過剰な辞めさせない圧力によって心身を病むような深刻事例は、確かに見逃すわけにはいきません。
しかし一方で、退職代行が急増している背景には働き手の行動原理や価値観が確実に関係しているようにも思います。
実は、知人が運営している保育園にも退職代行から電話がかかってきて、この4月に入社したばかりの25歳の保育士が辞めたとのこと。
理由は「勤務による持病の悪化」。面接では持病の話は出ていなかったこと。その知人は、「え?なにごと?どういうこと?」と、まさに狐につままれたような感覚だったと話していました。
これなんかはブラック企業から逃れたいという深刻な事例というよりある意味、お手軽に退職代行を使ったケースに見えます。
職場で嫌な事があった。辞めたい。しかし辞めるって、手続きとかどうすれば?失業保険ってどうやったらもらえるだっけ?と、思いながらとりあえず「退職の仕方」などといったワードを検索窓に打ち込んでみる。そうすると、検索一覧にはズラリと退職代行の文字が並んでいます。
なんかあったらとにかくググる。答えはそこにある。それが若者の行動原理です。
え、5万で代行してもらえるんだ。なら頼んじゃお。下手に長引くよりコスパよくね?みたいな感覚。まさに合理的で生産性重視の若者を象徴するような思考回路です。
拙著「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」で、世のオトナに若者の価値観を理解することを推奨してはいるのですが、この「辞める問題」に関しては、若者には共感しがたく。よっぽどのことないかぎりは、自分で辞めると言ってもらいたいなぁと思う次第です。
最近は「アルムナイ採用」といって、退職者の復職が注目されています。選考に「リファレンス」という旧職からの推薦状をや身元保証書を活用する企業もあります。
立つ鳥あとを濁さず、の姿勢が結局のところ、転職のコスパがよかった。ということにもなりかねませんし。
[文:ツナグ働き方研究所]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
平賀充記(ひらが・あつのり)
ツナグ働き方研究所 所長
1988年リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「FromA_NAVI」「タウンワーク」「とらばーゆ」「ガテン」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長を歴任。 2014年株式会社ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任。2019年よりツナググループ・ホールディングス エグゼクティブフェロー就任。著書に『非正規って言うな!』『サービス業の正しい働き方改革・アルバイトが辞めない職場の作り方』(クロスメディアマーケティング)、『パート・アルバイトの応募が殺到!神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)。