コンサドーレを4-2で下し、4連勝&2位浮上。マリノスは今、最も勢いのあるチームだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ第31節]横浜4-2札幌/11月9日/ニッパツ

 マリノス、強いね。本当に強いと思った。優勝争いもいよいよ大詰めを迎えるなか、ホームでコンサドーレに4発快勝。これで4連勝を達成し、順位も2位に浮上。今、最も勢いのあるチームと言っていいかもしれない。

 ポステコグルー監督が就任して2年目。チームの完成度は高い。両SBが中に絞って攻撃に参加する形はひとつの特長だけど、去年はそこでSBがなかなかボールを受けられずに、ボールを収めても、効果的なアクションが少なかった。

 でも今年は、中央にポジションを取って、そこから起点となるプレーが格段に増えている。松原もティーラトンも、得点機をお膳立てするラストパスを出したかと思えば、自らシュートも打つ。ゲームメイクもこなす。マリノスの分厚い攻撃を支えているよね。

 両SBが攻撃的に振る舞う一方で、畠中とチアゴのCBコンビの安定感も見逃せない。特にチアゴは、相変わらず高いパフォーマンスを見せている。あのカバーリングの速さはJリーグでもトップクラス。畠中もスピードはあるほうだし、彼らふたりがいるおかげで、チームも全体的にラインを高く保つことができる。
 
 GKの朴も、果敢にペナルティエリアを飛び出してDF陣の背後のスペースをケア。ピンチを未然に防ぐシーンは少なくない。守備陣の充実ぶりが、好調の要因のひとつであるのは間違いない。

 ボランチでは僕と同じ左利きの扇原が長短のパスを織り交ぜた抜群の配給力でポゼッションを高めている。トップ下のマルコスは上手いだけでなく、クレバーな選手だよね。相手の陣形を見て、どこにスペースがあるかを素早く察知して、そこにスッとポジションを取る。

 フリーでスタンバイしているマルコスは、動きながらパスを受けられるから、相手にとって厄介なはず。トップスピードでボールを受けて、ダイレクトでパスを出すのか、ドリブルで崩すのか、その判断も速くて、正確だ。

 たいていの場合は、スペースで受けて、前を向いて、さあどうしようか、という感じだけど、マルコスは無駄な手間を省いて、一気に攻撃を加速させられる。あのスピード感は半端ない。ドルトムント時代の香川をイメージしてもらえれば、分かりやすいかな。

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 右ウイングの仲川、左ウイングのマテウスの仕掛けも迫力十分で、序盤に2ゴールを挙げたCFのエリキも、ここにきて高い決定力を発揮している。

 個々の能力と攻撃的なスタイルがしっかりと噛み合い、優勝に向けて邁進するチームのなかで、ボランチのもうひとり、喜田の貢献度に触れないわけにはいかない。

 彼は今年、グッと伸びたと思う。右肩上がりの成長曲線を描いている。ポゼッションを重視するマリノスのボランチとして、なによりもボールを受ける前の動きが素晴らしい。

 今、パスを受けたほうがいいのか。ここに立っていればパスが出てくるのか。あるいは、自分がここにいれば、相手を絞らせて味方をフリーにできる、とか。そうしたことを本当によく考えて、実践しているように思う。

 あえて相手のCFの近くでパスを受ける。そこで相手が食いついてきたら、CBのチアゴにすぐリターン。チアゴの前方には持ち運べるスペースができている、とか。なんでもない喜田のショートパス1本こそ、見るべきポイントかもしれない。
 
 敵陣に入った時には、喜田は前方や斜めにガッと走り出す時がある。相手が来なければ、バイタルエリアで自分がフリーになれる。相手がついてくれば、真ん中が空く。つまり、トップ下のマルコスがフリーになる。攻撃のキーマンであるマルコスが前向きに気持ちよくプレーできているとすれば、それは実は喜田のおかげだったりもする。

 喜田のプレーはシンプルで、余計なことはしない。強いチームのボランチって、“自分が、自分が”とボールをこねくり回す傾向があるけど、喜田は違う。何をやるべきか、何をやってはいけないか。自分の役割をしっかりと理解している。さすが、マリノスのキャプテンマークを巻くだけの選手だと改めて思ったよ。

 ポゼッション重視といったけど、同じようなスタイルのフロンターレと比較すると、マリノスはよりスピーディだ。攻守の切り替えも早い。外国人選手がフィットしていて、中堅がどっしりと構えて、若手も順調に伸びている。今のチーム状態を見る限り、優勝してもおかしくないはずだ。その強さは本物だと思うし、優勝してほしいね。
 
 コンサドーレについても触れておきたい。2-4で敗れたとはいえ、チャンスの数は多かったし、もっと得点できていたとは思う。スコアが示すほど、完敗という感じではなかった。

 攻撃力に秀でるマリノスを相手に、守りに入るようなことはしない。打ち合い上等で自分たちも攻撃に出ていく。これぞ“ミシャ・サッカー”という戦いぶりは痛快だった。

 特にチーム2点目は見事の一言。右サイドから宮澤→深井→チャナティップとつないで、チャナティップからゴール前に走り込んだ荒野に浮き球のパス。これを荒野がダイレクトで折り返して、武蔵が流し込む。この崩しには、さすがのマリノス守備陣も左右に振られて対応できなかった。

 荒野&深井と、扇原&喜田のダブルボランチの潰し合いも見応えがあった。個人的に注目しているのが荒野だ。一つひとつのプレーに自信がみなぎっていて、球際も激しく戦えるタフな選手で、パス出しのセンスもある。今年のパフォーマンスを来年につなげられれば、さらに成長して、より高いレベルでのプレーも期待できるんじゃないかな。