浦和戦は2−1で勝利。リーグ4連勝を飾る。(C)SOCCER DIGEST

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[J1リーグ26節]浦和1-2C大阪/9月13日/埼玉スタジアム2002

 9月13日、セレッソ大阪が浦和レッズとの試合で見せつけたのは、チームとしての完成度の差だった。

 守備になれば、4バックと2ボランチだけでなく、両サイドハーフがプレスバックを怠らず、堅牢な壁を築く。その均整の取れたポジショニングは、トレーニングの積み上げを感じさせた。

 攻撃に関しては、司令塔の清武弘嗣を右ハムストリング筋の怪我で欠いているせいもあり、崩しの局面での迫力不足は否めなかったが、少ないチャンスをモノにする勝負強さがあった。ここぞとばかりに全体を押し上げ、シュート数6本のうち2本を決めたのは見事。

 勝ち越しゴールを奪ったのが、途中出場の田中亜土夢だという点も、チームの充実ぶりをうかがわせる。ロティーナ監督が「今季は交代で試合に出るたびに貢献してくれています。攻守において何をするべきか、チーム、試合の状況を理解して、やるべきことをやってくれています。その意味で、とても信頼している選手です」と称賛するのも、うなずける。
 

 前節の川崎フロンターレ戦で決勝点を奪ったのも、後半の途中から起用された鈴木孝司だった。さらに言えば、この4試合で決めた8ゴールは、計7人が奪ったもの。奥埜博亮(2得点)、丸橋祐介、水沼宏太、瀬古歩夢、鈴木、松田、田中だ。誰かひとりに頼るのではなく組織で戦うスタンスと、その体現度の高さは、得点を見ても分かるだろう。

「今は誰が出てもああいうチャンスを決められる選手はいっぱいいる。本当にチーム全体が良い雰囲気でやれているなと思います」

 先制ゴールを奪った浦和戦の後、松田が語った言葉は、強がりでもなんでもない。

 決してエキサイティングではないが、実にソリッド(堅実)なスタイルで難敵の浦和を下し、リーグ4連勝。26試合消化時点で5位にまで浮上し、ACL出場権を目前に捉えているのは、そうしたスタイルと戦術が浸透した結果だ。
 ただし、ここまでの道のりは順風満帆だったわけではない。特に序盤戦は、選手が今季就任したロティーナ監督の戦術に困惑して、なかなか白星を積めなかった。8節の清水エスパルス戦を終えた時点で勝点わずか7の14位に沈んでいた。

 深刻だったのは得点力の欠如。調子が上向く10節の松本戦の前までは9試合でわずか5ゴールと低調だった。自分のポジショニングを意識し過ぎるあまり、仕掛けるタイミングをチームで共有できていなかった。

 清武は開幕当初、困惑を吐露していたのを覚えている。

「練習でやってきたことを出せているかといえば、ほぼほぼ出せていない。ポジショニングとかはみんなが意識しながらやっているとは思うけど、もうちょっと時間はかかるかなと」

 ところが、10節の松本戦でリーグ5試合ぶりに会心の勝利を挙げると、一気に上昇気流に乗る。

 ボランチの藤田直之がフィットしたり、奥埜のFWへのコンバートがハマったりと好材料はいくつか挙げられるが、そうした選手起用を含めて、3−4−2−1から4−4−2へのシステムチェンジが、大きなポイントだった。全体の動きが整理されて、位置取りに戸惑う姿は明らかに減り、その分カバーリングなど、味方を助ける動きも増えた。

「スタートの時よりチーム状況は明らかに良い。監督のやりたいことを徐々に理解できてきて、選手間で意思統一が取れるようになった。日々の積み重ねは大きいですね」

 開幕当初に苦しんでいた清武も、負傷する前の8月中旬に話を聞いた時には、そんな手応えを語るようになっていた。

 成長を実感しているのは指揮官も同様だ。「全体的に満足しています。それは勝利という結果だけではなく、プレー内容も含めてです。強敵との試合が続いていますが、自分たちが歩んでいる道には満足しています」。浦和戦後の会見でそう話している。

 ここまでの復活劇は決して偶然ではない。日々磨き上げてきた戦術の上積みがある。だからこそ、そう簡単には調子は崩れないだろう。次節は、ガンバ大阪とのダービーマッチ。この大一番を制し、さらに弾みをつけたいところだ。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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