受験お作法2.0

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【小学校受験のお作法2.0】親子力を合わせ、厳しいお受験を乗り越えるためにも、先人たちのリアルな合格体験談はあらかじめしっかりと知っておきたいもの。しかし、幼児教室などで登壇する合格者の経験談は、幼児教室の先生たちのフィルターがかかった内容になりがち。実際にはいろいろな教室に行っていたのに「わが家は本当にこちらの教室のみでした」とコメントされることもあるそう。そこでここでは、お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、合格者のお母様たちにインタビューを実施。合格するまでの道のり、そして入学後の様子など“生”の声を伝えてくれます。あくまでもひとつの参考とされてみてくださいね。

■かつて暁星学園に合格した男性の場合

 今回は少し古い事例となりますが、かつて暁星学園のお受験を経験された、現在30代の方のご本人によるリアルな肉声をお届けします。

ご家族のスペック

・お父様:暁星高校出身、私立大学卒、自営業
・お母様:地方私立大学卒
・お子様:都内人気お受験幼稚園

――暁星学園にはいつから通われていたのですか?

「試験は受けたものの幼稚園では入園できずに、小学校から暁星に入学しました。暁星は父親の出身校だったのですが、中学受験をするなら幼稚園から入れてしまおうと両親が思ったのだと思います。幼稚園受験のために塾などにも行かされていたようですが、あまり記憶はありません。試験内容も覚えていません」

――学園生活はいかがでしたか?

「暁星はキリスト教系の男子校ですが、特に堅苦しく感じることもなく、学園生活は楽しかったです。勉強しつつも、毎日サッカーをして、同級生とふざけながら小学校の6年間を過ごしました。しかし、中学になると授業のレベルも上がって勉強がかなり厳しくなりました。

 サッカーを続けたかったのですが、勉強も忙しくなるなかサッカー部の厳しい練習に耐えられる自信がなかったので、陸上部に入りました。サッカー部は成績が落ちると退部になるんですよね。だけど結局、塾にも通うようになったので、部活はほどほどになり、途中で辞めてしまいました。

 高校になると、勉強は塾が主となり、学校の授業は何となく受けて学内の試験だけしっかりこなしていた感じです」

――どのような大学を受験される方が多かったですか?

「医師の息子が多いので、医学部受験をする生徒も多かったです。中学から入ってきた外部生は、最初から東大などの国立や早慶を目指しているような感じでしたね。私は、そうした医学部や国立、早慶を一般受験しない、真ん中グループを死守して指定校推薦が取れればいいなくらいの感じでした。

 しかし結局は、高3になって一般受験組が指定校推薦に切り替えたりしたため、少し番狂わせがあり、希望していた大学の推薦には選ばれず、他大学の推薦をもらいました。

 一方で、中3くらいからは、女子にモテようと学業そっちのけで遊ぶ“大学受験戦線離脱組”と呼ばれる同級生も増えましたし、成績が悪くて中学や高校に上がれない同級生もいました。一学年に10人〜20人くらいいましたね」

――当時の仲間とはいまでも交流がありますか?

「仲のよい部活などでは、大学進学後も常に一緒に遊んでいるメンツもいました。私は大学時代は特につるむこともなかったのですが、社会人になったころから飲み会に行ったりして、また集まりだしました。

 自営業が多いので、お互い仕事の相談をしたりします。医師や有名企業の息子なども多く、世間からはお坊ちゃん学校といわれがちですが、暁星は後継者としてふさわしい人間になれるように育ててくれるんだと思います。著名人では、香川照之さんや松本幸四郎さんなどが有名ですが、ホリプロ社長の堀さんや、講談社社長の野間さんも暁星出身です。大手企業で活躍する人も多く、けっこう頼りになる同窓生がそろっています」

――お子様も暁星に入れたいと思っていらっしゃいますか?

「子どもが生まれて男の子だったら、やはり暁星に……と考えていた時期もありましたが、最近の異常な小学校受験のやり方には正直、信用がおけないんですよね。父親が出身だから受かりやすいとも考えられませんし。

 最近飲んだ暁星の同級生も、息子を幼稚園や小学校から青学や学習院に入れているんですよ。暁星高校から青山学院大学の推薦取るのもまぁまぁ大変だったから、だったら最初から青学に入れておけばいいんじゃないか? ということらしいです。サッカーを途中で辞めるほど学内の勉強が忙しいんだったら、青学や学習院に入って、思う存分、部活をやらせたいと思ったらしく、実際、彼の息子は都大会や全国大会で頑張っているらしいです。

 就職に際して、親の会社を継がなくてはいけないという選択肢しかない場合、そういう学校選びもありなんじゃないかと。とはいえ、暁星には感謝以外の言葉はありません。最高に楽しかった12年間の学校生活と、素晴らしい仲間に恵まれましたので」

――お子様ももうそろそろ小学校受験に向けて準備が必要なころですね。

「ええ、先日は学習院の説明会に行ってきました。暁星育ちなんで、皇居の近くや総武線沿線が何となく落ち着くんですよね。私自身がそうであったように、子どもも小学校から私立に行かせて、いい先生、いい仲間と出会ってほしいと思っていますが、それが暁星なのか、青学なのか、学習院なのか、公立なのか……。それは神のみぞ知るのだと思いますが、そろそろ受験準備は始めないといけないとは思っています」

■暁星学園に合格した男の子の場合

 地方から東京に引っ越してきて、東京のお受験事情に驚きつつも、暁星小学校に合格した男の子のお母様にお話を伺いました。

ご家族のスペック

・お父様:地方国立大学卒、中小企業社長
・お母様:地方私立女子大卒
・お子様:都内人気幼稚園

――お受験にいたる経緯を教えていただけますか?

「出産後、主人の会社の本社を東京に移すこととなり、東京に引っ越してきました。居を構えた近くに人気の幼稚園があり、入園しましたところ、みなさま、小学校受験をするとのことで驚きました。地方は私立の小学校や中学校を受験するという考え方はほとんどないんですよ。県立高校から、国立大学を目指すのが一種の“ステータス”的考え方なので。

 主人も、息子を小学校から私立に入れるなんて国立大学への道を最初から諦めているみたいだと、最初は反対していました。しかし、東京の地理どころか、人脈も何もなかったので、とにかく子どもを安心できる環境で育てたいと考え方が変わり、年少の秋にジャックに入会しました。そして、そこで知り合った女の子のお母様と家族ぐるみで親しくなり、人気の体操教室や個人の先生をご紹介してもらいました」

――なぜ志望校に暁星を選ばれたのでしょうか?

「志望校として、やはり最初に慶應幼稚舎が浮かんだのですが、個人の先生に“コネも何もないのにどうやって入れるの?”と厳しく言われ、東京のお受験世界の裏側をいろいろと教えていただきました。しかし同時に、“コネもなく卒業生でもないのなら、実力をつければいいんだよ”とも言われ、無我夢中で先生のご指示どおりの活動をしました。

 そんななか出会ったのが、暁星学園という学校です。主人も最初は“名前だけは聞いたことがある”程度だったのですが、学校説明会に参加したところ、男子だけの学校なのにこんなにも違和感がない学校は初めてだと感じました。暁星幼稚園は2年保育(年中)からの募集なので、記念受験のつもりで受験しましたが、やはり準備不足と試験内容のハードルが高すぎて、完敗しました」

――小学校受験に向けて準備されたお稽古などを教えてください。

「暁星幼稚園が2年保育からの募集だったのは、幼稚園児のなかでも“幼児”というより“男児”に近い成長をしている子どもと、子離れができている保護者を求めていたからなのだと感じましたので、暁星小学校は、さらに精神的に成長した“少年”を求めているのかなと思い、精神面の鍛錬に力を入れました。田舎育ちの私たちは、そういう面では強いメンタルを持っているのではないか? と思いましたし。

 休みの日には田舎に帰り、さまざまな体験を通して肉体的・精神的に鍛えました。ジャックや個人の先生とペーパーも仕上げましたし、空手のお稽古も始めました。

 朝稽古のない日は、毎朝6時起床、起きたら近くの公園までランニングし、縄跳びと鉄棒。帰宅し、朝食を食べたらペーパー30枚、そこから歩いて幼稚園へ。降園後のジャックやお教室までの少ない時間は公園でお友達と思いっきり遊ばせました。

 そして主人と私は、子どもが寝た後、願書や面接対策のため学校案内やホームページを何度も何度も読み、新しい更新情報がないかチェックしたり、学校関係者が出版しているであろう本を読み漁りました。暁星はキリスト教だったので、教会の公開講座を聞きに行ったりもしていました」

――暁星以外にはどのような学校を受験されましたか?

「暁星以外では、幼稚舎、早稲田実業、成蹊、立教、学習院、青山学院、慶應横浜初等部に出願しましたが、試験日程がかぶりまくりました。

 暁星を一次で敗退していれば受けられる学校も多く、暁星の二次を選ぶことにより、リスクも高くなりました。悩みに悩みましたが、やはり最初から感じるものがあった“暁星を受けないという選択肢はない”と思い挑戦しました。ありがたいことに合格をいただくことができて、本当によかったです。

 合格はいただいていたのですが、慶應の横浜初等部にも出願していたので、せっかく出願したのだから……と受験したところ、一次のペーパーを突破し、二次試験に進んで、なんと、合格をしてしまいました。悩みましたが、小学校入学と同時に慶應大学入学が決まっているんですから、辞退することなんてできなかったです。暁星は、すべての試験項目に関して最難関だと思います。暁星の準備をすることによって、難関の慶應横浜初等部もクリアできるところまで仕上がっていたのだと思います」

■暁星幼稚園に合格した姉弟の場合

 姉弟ともに暁星幼稚園に合格。ご息女は卒園後、聖心女子学院の初等科に通われているお母様にお話を伺いました。

ご家族のスペック

・お父様:地方国立大学医学部卒、開業医
・お母様:初等科から聖心出身
・お子様:暁星幼稚園卒園

――お母様自身、初等科から聖心に通われていたということですが、聖心での生活はいかがでしたか?

「大学時代は同級生が他大学のサークルや飲み会に励む間も、私は学生時代から婚活をし、旦那様にふさわしい方を探していました。お金持ちなだけ、顔がカッコいいだけの慶應ボーイは周りにたくさんいましたが、たとえ慶應ボーイでも幼稚舎出身以外には興味がなく、学歴、家柄、職業、収入のトータルで点数をつけて、旦那様候補となる男性を探していました。そして主人とは、医師と結婚した同級生が開いてくれたお食事会で知り合いました。

 聖心教育のひとつに“よりよく生き抜く”という言葉があるのですが、16年間の聖心教育のなかで“男を見抜く力”が身についたと思います。

 歴代卒業生を見ましても、美智子さま、安倍昭恵夫人を筆頭に、代議士や財閥系企業に嫁いでいる方が多いんです。松本幸四郎夫人も卒業生ですよ。よいお家柄に嫁ぐ確率を上げるためにも、聖心女子学院卒業というのは、世界にも通じる最強の肩書だと思っています。レディー・ガガやヒルトン姉妹もニューヨークの聖心の卒業生です」

――お子様も聖心に入れたいとお思いに?

「ええ、開業医の夫と結婚し、女の子を妊娠したとわかったときは、母と手を合わせて喜びました。そして、お腹にいる娘の未来予想図を思い描き、かつての私と同じ聖心の制服を着ている姿を想像するのは、まさに幸せに満ちた時間でした。出産予定日がわかり、まずは初等科時代の先生に“みこころ祭”で妊娠のご報告をしました。

 聖心は学校側が求める基準に達すれば、学校独自の特別な受験対策はしなくても合格ができます。そのため、幼稚園は聖心卒業生が好んで選ぶ、聖心と同じカトリック教育を受けられる枝光会幼稚園に入園させようと思っていました。

 そこで2歳からジャックの幼稚園受験クラスに入会し、準備を始めたときに、また妊娠が発覚してしまいました。娘の受験が終わるまで、第二子は考えていなかったのですが……。

 しかも男の子と判明した瞬間には、もうどうしたらいいのかわかりませんでした。私自身も姉妹でしたので、男の子の受験には縁がなかったんです。そのうえ、主人の親が男の子を身ごもったとわかると大喜び。医師にすると張り切りだしてしまいました。全財産を生まれてくるであろう後継者の男の子に残したいからと、娘の受験の予算も削られてしまいそうな勢いでした。

 義理の両親に、男の子の場合には学校は慶應幼稚舎か暁星でしょうか? と聞きましたところ、幼稚園や小学校から私立に入れる必要はない、中学受験から医学部を目指すようにといわれてしまいました。公立の男子ママになるなんて、想像もできませんでしたし、母親として中学受験を支えられる自信もありませんでしたので、慶應幼稚舎から慶應大学医学部を目指すコースと、暁星から医学部を目指すコースがあると、私の両親からも主人を説得してもらいました。

 家庭内での比重が息子に集中するなか、娘は幼稚園受験の年を迎え、結局は枝光会幼稚園を受験せず、3歳から通っていたプレスクールにそのまま残り、2年保育で暁星幼稚園の女子枠を受験しました」

――当初考えられていた枝光会幼稚園ではなく、暁星を受けられたと?

「この選択は弟のためです。弟を兄弟枠でスムーズに暁星幼稚園に入れるための秘策でした。暁星は男子校の幼稚園ですが、10人だけ女の子が入園できるんです。

 入園してからは、幼稚園行事は家族でフル参加、係も率先してお手伝いし、少し多めの寄付金をしました。娘の幼稚園生活は弟のためといっても過言ではないくらい、とても緊張した2年間となりました。在園中は、あえて息子は幼稚園にはいっさい連れて行きませんでした。園内でぐずって泣いてしまったら、入園するにあたってマイナスになってしまうかもしれないので」

――ご息女は暁星幼稚園を卒園された後、聖心の初等科を受けられたということですが、小学校受験に際しては、どのような準備をされましたか?

「娘の受験準備は、ジャックの聖心クラスを中心に、体操教室、個人の家庭教師の先生にペーパーを見てもらい、行動観察のお教室にも通いました。そして私の“活動”の甲斐もあってか、無事に聖心の初等科に合格いたしました」

――そして、ご子息も暁星幼稚園を受けられたのですね。

「娘の入学式後、聖心の制服姿を見せに暁星幼稚園にご挨拶に行ったとき、初めて息子も一緒に連れて行きました。もう3歳になっておりましたので、走ったり騒いだりすることもなく、おとなしく姉の横に立っていました。園長先生、神父様からの印象もよかったようで、無事に暁星幼稚園に入園することができました。

 大学受験に向けての息子の教育については、経験者の主人と義理の両親に任せ、私は娘の聖心ママとしての生活をエンジョイしております。いずれ娘にも男性選びの帝王学はしっかりと教え込まないといけないですね」

<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design