提供:週刊実話

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――45年ぶりの主演映画です。どういう経緯で製作されることに?
浅田 希林さんと私で、いつものようにワイドショーを見てやいのやいの言っていたんです。そうしたら、モチーフになった事件のことが報道されていたんですよ。世の中には面白い女がいるものだなと思いましたね。そうしたら希林さんが「美代ちゃん、こういう役をやればいいんだよ」って。それがすべての始まりでした。

――映画では大胆な濡れ場もありますし、魔性の女ぶりも発揮しています。
浅田 そういう事件ですから。今までこういう役はやったことがなかったので、周りからは「意外だった」と言われるんです。だけど、私としては他の作品と同じように役になりきるように頑張っただけ。特別ということはないんですよ。とはいえ私は色気がないから、そこの部分を元の事件のように再現できたかは自信がないのですが(笑)。
『エリカ38』のモチーフとなった事件とは、被害総額27億円、被害者120人超といわれる「つなぎ融資事件」のことである。’17年に逮捕された山辺節子被告は、聖子ちゃんカットとアイドル風ファッションで若作りをし、62歳なのに38歳と偽っていたことで好奇の目に晒された。

――色気もさることながら、性悪さが見事に表現できていて、演技派だなと。
浅田 いや、人間、絶対にそういう一面を持っていますから。

――バラエティー番組での天然キャラとは真逆です。
浅田 う〜ん、そこで驚かれる部分はあるかも、だな。私が思うに、この人(山辺被告)も最初の段階では自分が詐欺に加担していると気づいていなかったんじゃないかな。根っからの悪党というわけでもなくて。そういえば最近、別のお仕事で福岡県大牟田市に行ったとき、驚いたことがあったの。お蕎麦屋さんでお店の人に「美代子ちゃん、会いたかった!」って言われたのね。聞いたら、そのお店に(本人が)結構来ていたらしいのよ。女将さんいわく、すごくいい人だったと。犯罪者だと分かってはいるけど、可愛らしい人なんだって。人間的な魅力があったのでしょうね。

★知られざる意外な共通点

――「企画・樹木希林」とありますが、企画とは具体的にどれくらい深く関わっていたんですか?
浅田 主演が私ということはもちろん、プロデューサー・奥山和由さん、監督・日比遊一さんというのも希林さんが決めました。台本も深く関わっていて、途中で修正指示を出していましたし。「この伊藤っていう怪しい女、木内みどりさんなんていいんじゃない?」とかキャスティングも重要な枠組みは希林さん主導で進めていましたね。

――なぜ希林さんは、浅田さんのことをそこまで可愛がっていたんですかね。
浅田 私もそこは不思議なところで、「なんでそこまでしてくれるの?」って直接聞いたこともあるんです。そうしたら「当然じゃない。だって子供の頃から知っているんだから」って言われましたけど…。「なんとかしてあげたい」っていう気持ちがあったのは間違いないでしょうね。それと意外に私たち2人は人見知りなところがあって、そこは共通していたんですよ。現場で仲良くする同業者はいても、ここまで心から嘘なく話せる相手はお互いにいなかった気もする。年の差はあったけど、一緒にいて落ち着くんです。たとえば希林さんはうちに来てごはんを食べると、そのままテレビを見ながらソファで寝ちゃったりするんですよね。ふと目を覚ますと「うわっ、もうこんな時間!? 帰らなくちゃ!」とか慌てて。

――心から気を許していたんでしょうね。
浅田 なんだかウマが合ったということなのかな。それと「なんとか芸能界でやってはいるけど、もう60歳もすぎちゃったし、この先、この女をどうしたものだか…」。そう私のことを心配していたんですよ。名刺代わりになるような代表作が必要だと考えていて。感謝…なんていう言葉じゃ言い表せないですよ。私も何らかの形で返していかなくちゃいけないと思う。