大坂・阿倍野区にあるマツモトキヨシの店舗(左)と、東京駅の駅ナカにあるココカラファインの店舗(写真:左はマツモトキヨシ提供、右は記者撮影)

ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングスと同業のココカラファインはこの4月、資本業務提携に向けた協議を開始すると発表した。

マツキヨは2019年3月末現在で1654店、ココカラは同1354店を全国に展開している。ともに都市型店舗が多く、展開エリアを相互に補完できる関係もある。調剤事業に力を入れている点も共通している。マツキヨは海外に店舗を積極的に展開し、インバウンドに強い。ココカラは関東の「セイジョー」と関西の「セガミ」が経営統合してできた。

両社は今年9月までの合意を目指す。出資比率など提携の詳細は現時点では未定だ。

「2015年ぐらいから」提携話が浮上

「2015年ぐらいから業務提携話が出ていた。都心を中心とした展開や調剤が強いなど特徴が似ている。資本業務提携をすれば、お互いにメリットが出せる」

マツキヨの松本清雄社長は4月に開催された2018年3月期の決算説明会の席上、ココカラとの提携についてこのように語った。

マツキヨはかつて、売り上げ規模で業界首位を守り抜いてきたが、ウエルシアホールディングスやツルハホールディングスと違い、大規模なM&Aを行ってこなかったため、2018年度は業界5位に転落することが濃厚だ。

ところが、採算のよい化粧品を拡張するなど利益重視の経営を貫き、2019年3月期の業績は、売上高5759億円(前期比3.1%増)、営業利益360億円(同7.3%増)、営業利益率は6%台と高水準。売上高で業界首位であるウエルシアの営業利益率3%台を上回っている。

一方、ココカラの2019年3月期は、売上高が4005億円(前期比2.5%増)だったものの、営業利益は129億円(同5.8%減)と減益に転じた。天候不順で客足が落ち、採算のよい季節物商材の販売が伸び悩んだうえ、出店費用や人件費が圧迫した。


5月22日に行われた決算説明会でココカラの塚本厚志社長(記者撮影)

今回の提携は、(ココカラの)収益底上げに重点が置かれると見られる。

提携第1弾として考えられるのがPB(プライベートブランド)の共有だ。マツキヨは自社会員のデータに基づき、付加価値の高いPBを開発。さらに、新しいアイデアを考案・検討する「商品開発応援プロジェクト」が軸となり、妊娠中でも食べられるカフェインが入っていないチョコレートといった斬新な商品を生み出してきた。今後、マツキヨのPBをココカラの店舗で販売する予定だ。

物流共同化や調剤事業でシナジー

マツキヨにとっては自社PBの販路拡大につながり、ココカラにとっては品ぞろえを拡充できる。


5月10日の決算会見で話すマツキヨの松本清雄社長(記者撮影)

物流の共同化も検討項目の1つだ。マツキヨは丸和運輸機関などの物流会社に物流業務を委託し、物流倉庫を持たない一方、ココカラは自社で物流倉庫を保有している。「マツキヨがココカラの物流倉庫を一部活用することも考えられる」(ココカラ関係者)。

【2019年5月26日9時7分注記】マツキヨが物流業務を委託している先について、表記のように修正いたします。

【2019年5月27日11時45分注記】丸和運輸機関に関する表記について、上記のように修正いたします。

調剤事業でもシナジーを見込める。ココカラはここ数年、中小規模の調剤薬局を次々と買収している。マツキヨとココカラの調剤事業の売上げを合算すると1000億円規模となり、業界首位のウエルシアの約1200億円に迫る。調剤事業の規模拡大により、医薬品の共同仕入れなどのメリットが出てきそうだ。

今回の資本業務提携の先には「経営統合がある」と見る業界関係者は少なくない。

マツキヨの松本社長は「資本業務提携ならば、どちらかが転んでも(経営不振に陥っても)、両方がこけなくてすむ。M&Aは、場合によっては両方こけることになる」と経営統合の可能性を否定する。だが、この発言は、現時点では高利益率を誇るマツキヨでさえ、先行きについては危機感を持っていることを示唆している。

仮にマツキヨとココカラが経営統合すれば、売上高は1兆円規模に近づく。これは業界最大手のウエルシアの売上高7791億円を軽く凌駕する。

マツキヨ・ココカラに参加する地方ドラッグも

マツキヨ・ココカラ連合が実現すれば、ほかの地方ドラッグストアが加わる可能性も大きい。マツキヨはここ数年、収益性の低かった地方子会社を、店舗ごとの人件費や経費を緻密に分析することで立て直した経験がある。ココカラの店舗でも効果を生み出すことができれば、マツキヨ・ココカラ連合への加盟に手を挙げる地方ドラッグストアが出てくる可能性がある。

地方子会社の立て直しが一段落し、マツキヨは資本業務提携に踏み切る体力がついてきた。今後ココカラとの経営統合に至れば、収益面もさらに押し上げることができる。5月24日時点での時価総額はマツキヨ3485億円に対し、ココカラ1080億円。「マツキヨにとって、経営統合のデメリットは今のところ考えられない。可能性としては十分にあるだろう」と、大和証券の川原潤シニアアナリストは話す。

ココカラの塚本厚志社長は「マツキヨは関東圏、ココカラは関西圏に店舗が多い」と強調する。しかし、マツキヨもココカラも同じく都市型を得意としているため、両社で店舗の競合が少なからず出てくる。こうした懸念材料を払しょくしていく必要がある。