なぜ舌をペロペロ?山田久志が語るプロ野球選手の癖
ピッチャーにはいろんな癖がありますが、バッターにも癖はあるのでしょうか?5月11日放送の『若狭敬一のスポ音』では、野球解説者の山田久志さんが選手の癖について、先回に続けて語りました。山田さんの阪急ブレーブス時代、おかしな癖を持つチームメイトの話題も飛び出しました。聞き手は若狭敬一アナウンサーです。
ストレート狙いの落合博満
「落合博満なんか、私はようわかった。わかったけど打たれた」
「真っすぐを待っている時は、グリップを早めに引くの」
サブマリン投法の山田さんが、テイクバックから右手をウワーっと羽のように広げた時に、落合さんがグリップを引いていると…
「ストレート。だいたい速いボール系統を待ってる時なの」
例えば、その時にカーブのサインが出ていると、ど真ん中にカーブを投げればよかったんだそうです。
「ああいう良いバッターほど、最初は待ってないボールは振らないから。だから真ん中にカーブをヒュッと投げとけばいいの。あの大打者でもそういう癖があるのよ」
カーブで外す江夏
逆に、サインも握りもストレート。落合博満さんが早めにグリップを引いてストレート狙い、そんな時はどうしたんですか?
「それはもうしょうがない。いかなきゃいけない。真っすぐはそこで変えれないもん。
だから私はね、『江夏の21球』ってあって、あのスクイズをカーブで外したってのはね、今でも信じられないんだけども。だけど、江夏とよくその事について喋るんだけど、本当にあれは自分でカーブで外したって言うんだよね」
1979年、日本シリーズ、近鉄対広島、第7戦。7回まで4対3とリードしていた広島はリリーフとして江夏さんがマウンドへ。9回裏、ワンアウト、満塁。三塁走者スタート。
バッターはスクイズの構えをしたところ、キャッチャーの水沼さんが立ち上がりました。江夏さんはそこへボールを投げ、スクイズ失敗になりました。
ノンフィクション作家の山際淳司さんが、9回の江夏さんの投球について書いたタイトルが『江夏の21球』です。このタイトルが、この時の江夏さんの投球を表す代名詞のように一般に使われるようになりました。
「キャッチャーの水沼が、先にピュって動いたんで、そこへ、そのまんまカーブで、ビューっと投げる。凄いですよ。難しいもん」としみじみ言う山田さん。
いつもペロペロ
「私のチームメイトで、ショートを守った大橋(穣)さんっていたの。大橋さんはね、打ちにいく時に、舌を必ず振るの。ペロペロってやってたら、次にどんなボールが来ても必ず振る」
投げる前からペロペロやっていたそうで、当然ベンチからも見えていました。
「こっちで振るぞ、振るぞって言ってて、実際振るの。それでニックネームがペロちゃん。笑ってしまうよ。でもホントの話だよ」
大橋さんはショートの名手。7年連続ゴールデングラブ賞を受賞しています。
「大橋さんは、あれが一つの癖でね、守ってる時もしょっちゅうペロペロやってんの。打球よ、来い来いっていうことで」
さらに大橋さんは打つより、守備の方が興味があったそうで、守りに入る時はいつもペロペロと舌を動かしていたそうです。
守備のペロペロが、ここぞというバッティングの時に出る、そんな感じだったようです。
癖があっても完全試合
続いて名前が出たのが同じく阪急に在籍していた今井雄太郎さん。1978年に完全試合を達成した投手です。
「今井雄太郎ってのは、帽子を後ろから、ビューっとこう被ってね。ここに、もうシワができるの」
癖は帽子のかぶり方。後頭部に横にシワができるぐらいに、力を入れてガブっと被った時は…。
「その時は速いボール系統。あれでよく完全試合やったと思うよね。その頃は、雄ちゃんは、まだ、そんなに成績残してなかったから、そこまで研究されてないのよ。だいたいピッチャーは勝ち星とか主戦クラスになって、みんな解剖されるの」
癖を見抜く名人
「星野さんに呼ばれて中日のコーチに来た時に、ほとんどのピッチャー、癖あったもんね。それ全部直しにかかったもん。オリックスでやってた田中スコアラーが、そういうのを見るのが天才的だったの」
わざわざオリックスから引き抜いてもらったそうです。
「ずーっと見てる人がいるの。凄いですよ。プロ野球って、そういうところで勝負してるって見たら結構面白い。だけど中には直せない人もいる。私みたいに」と言う山田さんでした。
なくて七癖。癖って直らないもんですよね。
(尾関)