■日本ではわずか2%ほどの少数派

●新興国ではいまだ大きな需要が

MT車は、日本では新車販売の2%にも満たない少数派になってしまいました。しかし、世界的にみれば構造が簡単で低コストであるため新興国で、またそのダイレクト感を好む欧州では主流といっても過言ではありません。

技術的には成熟の域にあるMTの構造や機構について、解説していきます。

●MTの特徴

MTの最大の特徴は、歯車で構成されるため動力伝達効率が95〜98%程度あり、燃費が良いこと、軽量小型で低コストなことです。さらには、最近の日本市場ではあまりアピール性はありませんが、ダイレクト感のある走り「ファン・トゥ・ドライブ」ではないでしょうか。

一方高齢者や不慣れな人にとって、変速操作が煩わしく、操作技量によって変速フィーリングが左右されるといった課題もあります。初期のMTに比べると、シンクロメッシュ機構の普及と改良によって、変速はかなりスムーズで容易になりました。

●MTの構造

一般的なMTの構造は、各変速段の歯車が常時噛み合って空転しつつ、スリーブの移動によって歯車とアウトプットシャフトを選択段だけ結合する「常時噛み合い方式」です。

エンジンの回転は、クラッチ(別頁で解説)を介してインプットシャフトに伝わります。インプットシャフトは歯車を介してカウンターシャフトを回転させ、カウンターシャフトには各変速段に相当する複数の歯車が付いています。

変速レバーと連動したスリーブが移動することによって、選択した変速段の歯車とアウトプットシャフト(デフ、タイヤと連結)が結合されます。これによって、エンジンの回転が選択された変速比でアウトプットシャフトに伝わるのです。残りの歯車は、空転しています。

スリーブ(アウトプットシャフトとともに回転)と歯車を連結させるのが、シンクロメッシュ機構です。

●シンクロメッシュ機構

変速のときは、まずクラッチを切り、次の変速段を選択します。このとき選択された(空転)歯車とスリーブの回転には差があるために、そのまま連結しようとしても上手く歯がかみ合わず、大きな衝撃が発生し歯を傷めたりします。

シンクロメッシュ機構とは、スリーブを介してアウトプットシャフトと歯車の回転を同期させる機構です。

変速でクラッチを切ると、歯車が結合しているカウンターシャフトはフリーになるので、スリーブと歯車間の摩擦力によって、歯車の回転をアウトプットシャフトの回転に同期させるのです。

シンクロメッシュ機構をもう少し具体的に説明します。

歯車側に取り付けられた円錐状のシンクロナイザーとスリーブの間に、シンクロナイザーリングを設けます。スリーブを移動させると、シンクロナイザーリングに設けられた斜面とスリーブの斜面が接触し、その摩擦力によって回転差が吸収されます。徐々に同期して、最終的には選択段の歯車とスリーブが完全に結合します。

かつては、MTは圧倒的な燃費の良さで確たる存在感を示していました。一方で、ATやCVTなど自動トランスミッションの急速な改良によって、現在は燃費のアドバンテージが小さくなってしまいました。

新興国の需要とともにMTの数も当面は増加するでしょうが、本格的な電動化や自動運転の時代が到来すると、MTの将来は不透明になってしまいます。

(Mr.ソラン)

【自動車用語辞典:トランスミッション「マニュアルタイプ」】シンプルな構造とダイレクト感は不変の魅力(http://clicccar.com/2019/05/01/777437/)