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家事や育児、介護などの分担をめぐって、家族間で言い争いが増えて、いつのまにか一緒にいて心地よい存在だったはずの家族が「つかれる存在」になってしまった……そんな話を聞くことがよくあります。

どうして自分の不満が家族に伝わらないの?どうしたら「つかれない家族」になれるの?

そんなふうに「つかれる家族」と「つかれない家族」を考察するこの連載。

今回から、パリ在住のある夫婦の家事育児分担を紹介します。フランスが「子どもを産みやすい国」「子どもが夜泣きしない国」という噂ははたして本当なのでしょうか? まず今回は、フランス出産事情について紹介します。

日本人にフランスは大人気ですが…


フランス本を書いた日本人に会いに行ってみた


フランスでは約8割が「無痛分娩」


出産で体力を使い切っている場合じゃない


「痛いから無痛分娩」ではない


「男の産休」?!


夫ががらっと変わった


悪者にされてしまう日本のパパたちは…



フランスで妊娠すると支給される「健康手帳」。日本のように「母子手帳」という名前ではなく、説明イラストにもパパが登場するあたりが、国が男性の育児参加を本気で促していることが伝わります。イラストに男性を入れるのはルールとして決まっているそう(写真:著者撮影)

というわけで、「おフランス伝説」のすべてがフランスの真実ではないけれど、妊娠出産支援に関しては感心するところがありました。

ちなみにフランスでは、この「男の産休」を「赤ちゃんと知り合うための期間」と呼ぶそうです(ナイスなネーミング!)。

この産休に加え、近年は「男の出産準備クラス」という男性限定クラスも増えているんだそう。助産師さんいわく「女性の目線を気にしなくてよくなると、男性は出産や子育てへの不安や疑問をより気軽に口にできる。だから男だけでやることが大切」とか。

確かにそれは一理あるかも……! 政府としても、家族政策の重要項目として「子育てにおける父親の居場所を確保する」を掲げているそうです。

日本のパパたちは疎外されている…?

ところで、無痛分娩や「パパの育児フォロー」システムがここまで普及したのは、日本のような里帰り出産の習慣がない、核家族が増えている、などの事情もあるようです。でも、日本だって里帰りしない(できない)ママの話はけっこう聞くし、核家族も増えてますよね?

だったら、無痛分娩や男性の産休育休のハードルはもっと下がっていいはず。今回の話を聞いて、同じ親なのに「育児の初期設定」から外されがちな日本の男性は「差別されている」のかもしれない、とまで思ってしまいました。

あと、フランスの育休手当について驚いたことがもう1つ。

日本では、育休手当(育児休暇中の給料)が出るのは会社員だけですが、フランスでは季節労働者やフリーランスでも同じように支給されるそう。私はまさにフリーランスとして日本で出産しましたが、出産一時手当金こそ同じ金額をもらえたものの、育休手当はゼロ! そんな理由もあり、産後1カ月半から仕事復帰して育児をしつつ働きました。なのでこれに関しては心からうらやましい!!!

ただ、マンガにも描いたとおり、日本のほうが産科医療自体はハイレベルだし、母乳マッサージなどの出産周辺サービスが充実してるし、会社員の育休手当はトータルでは高い金額が出るそう。フランスの育休手当はだんだん下がっていくという事情もあって、職場復帰を急ぐ人が多いのだとか。

つまりは、日本の妊娠出産サポートシステムだってすばらしいところはちゃんとある。フランスからいいとこどりしてさらにレベルアップすれば、日本の子育て家庭のつかれはもっと減らせるのではないでしょうか?

日本でもつい最近、三菱UFJ銀行が男性育休の義務化を決定するなど、サポートを強化する流れは生まれつつあります。この流れがさらに加速することを祈ります。

というわけで、今回学んだ「家族がつかれないためのヒント」は……、

出産は痛いしつかれる、ボロボロになるとその後の育児も大変……。

もし状況・金銭的に可能なら、無痛分娩で出産するのもアリでは?

さて、次回はこの夫婦の家事育児分担詳細、そして子どもの寝かしつけ事情を紹介します。「フランスの子どもは夜泣きをしない」なんて本もありますが、実はこの家庭ではそうではなかったようで……。どうぞお楽しみに。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。