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妊娠した不倫相手から、認知と養育費の支払いを求められているーー。そんな「ダメ夫」の妻が、「夫の不倫相手に対して、慰謝料を請求できますか」と、弁護士ドットコムに質問を寄せました。

相談者によれば、夫とその相手の関係は数年間、続いています。相談者と夫の間には、小さな子どもがいるため、「離婚するつもりはありませんが、相手の女性に慰謝料を請求したいと考えています」といいます。

離婚しないものの、相手の女性のみに慰謝料を求めたいと考えている相談者。このような請求は可能なのでしょうか。また認められる場合、女性からもらえる慰謝料はどのくらいの金額となるのでしょうか。溝延祐樹弁護士に聞きました。

●認められても「100万円前後」

ーー離婚せずに、相手の女性に対してのみ慰謝料を請求したいそうです

「結論として相手方の女性だけに慰謝料を求めることは可能です。ただ、その金額は100万円前後にとどまるでしょう。

まず、不貞相手に対する慰謝料請求が認められるかという問題についてですが、この点に関しては、既婚者と肉体関係をもった第三者は、故意又は過失がある限り、他方の配偶者に慰謝料を支払う義務があるとするのが判例です。(最高裁第2小法廷・昭和54年3月30日)」

ーー相手の女性は、慰謝料を支払う必要がある、ということですね

「はい。今回のケースでは、夫の婚姻期間や家族構成からして夫に妻がいることは十分に予想できたといえます。

したがって、不倫相手は、仮に『既婚者であると知らなかった』と弁解しても、少なくともそう認識したことに過失があるため、ご相談者に対し不法行為に基づく慰謝料を支払う必要があります」

●離婚しない場合慰謝料額は低くなる

ーー慰謝料の金額は、どのように算定されるのでしょうか

「慰謝料の金額は不倫の態様や期間をはじめとした様々な事情が考慮されます。

今回のケースでご相談者は夫と離婚する予定はないとのことですが、このような場合、夫婦が離婚する場合との比較でご相談者が受けた精神的苦痛は小さいものと評価されます。

さらに、今回の事例では夫へは慰謝料を請求しないため、慰謝料金額はさらに一層低く算定されるでしょう。

もともと円満な夫婦関係を維持すべき義務は『永遠の愛』を誓い合った夫側にあるところ、その夫に対しては慰謝料を請求せず、不倫相手だけにその責任を追及するというのはバランスを欠く面があるからです。

そういった事情を総合考慮すると、今回のご相談者が不倫相手に請求できる慰謝料額は100万円前後に止まるのではないかと思われます。

誰に、どの程度の金額の慰謝料を請求すべきかについては事例ごとに異なります。慰謝料請求を検討される際には事前に弁護士に相談されることをお勧めいたします」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
溝延 祐樹(みぞのべ・ゆうき)弁護士
鹿児島県弁護士会所属。1983年生。離婚問題・労働問題・交通事故問題をはじめとして支部管内において様々な種類の事件を取り扱う。その中でも労働問題については強い関心をもっており、労災・解雇・残業代問題などを中心に精力的に取り組んでいる。
事務所名:国分隼人法律事務所
事務所URL:http://kokubuhayato-law.com/