『後妻業』でこだわり抜く“コテコテの関西弁”とセンスのいい“おばさんファッション”
撮影前から方言を特訓。空き時間も関西弁漬け
ターゲットは、資産家の高齢男性。女の色香を使って後妻に入り、彼らの多額の遺産を手にする結婚詐欺師“後妻業”の女が主人公の物語。
原作は、直木賞作家・黒川博行の同名小説。大竹しのぶ主演で『後妻業の女』として映画化されヒット。モントリオール世界映画祭でも上映され、話題に。
今作で主人公の武内小夜子を演じるのは木村佳乃。小夜子はこれまでに中瀬耕造(泉谷しげる)はじめ3人の老人の後妻になり、大金をせしめてきたが“後妻業のエース”として、さらに暗躍を続けている。
制作を担当した関西テレビの杉浦史明プロデューサーは、こう語る。
「開局60周年に大阪を舞台に関西弁を使った、カンテレらしいドラマを作りたいと思っていたんです。『後妻業』は大変に魅力的な原作で、黒川さんからは“リアリティーを大事にしてくれれば、どんな形で描いてもかまいません”と温かいお言葉をいただいたので、制作を決めました。
劇中の小夜子のセリフはコテコテの関西弁。関西出身ではないけれど、小夜子役はぜひ、木村佳乃さんにと思ったんです。表の顔と裏の顔、二面性どころか多面性があり、どこか憎めない小悪魔的なところもある小夜子を演じられるのは、佳乃さんしか考えられませんでした。
原作の小夜子は69歳でしたが、今作は45歳。美しく、思わず男性が惚れてしまう女性として描きたいと思いました。そんな小夜子像を佳乃さんにイメージしていただくため、脚本は撮影前の顔合わせのときにはすべて仕上げていました」
視聴者からイントネーション批判を受ける可能性の高い関西弁での難役だが、木村は承諾。クランクイン前の早い段階から、関西弁のマスターに取り組んだという。
「佳乃さんと、小夜子のバディともいえる柏木役の高橋克典さんは、とても耳がいいようで、微妙なイントネーションまでしっかり体得してくださっています。
なによりもうれしかったのは、おふたりが、関西弁や関西弁が生まれた土地の文化などをリスペクトしていること。セリフのひとつひとつの言葉にまでこだわりながら、演技してくれています」(杉浦P、以下同)。
撮影現場で飛び交うスタッフの会話やキャストにかける言葉は全部、関西弁だそう。
「空き時間にも佳乃さんや克典さんが自然に関西弁になっていて、“ほんまや”“そやなあ”などと言っています(笑)」
小夜子のターゲットとなった耕造の次女で、小夜子と女のバトルを繰り広げる朋美役の木村多江は大阪生まれだが、話し方は標準語を使っている設定。
「小夜子との言い合いのときや探偵の本多(伊原剛志)と話しているときに、まれに関西弁のイントネーションになるので、ご注目を」
ウィッグ使い分け、こだわりの主題歌
小夜子のこだわりは衣装だけでなく、髪型にもあった。
「2種類のウイッグを使い分け、自分の部屋では佳乃さんご自身のショートヘアになっています。髪型によっても小夜子の顔が違っているのが特徴です。
さらに注目していただきたいのが主題歌です。ソロ活動を始められたエレファントカシマシの宮本浩次さんが『冬の花』を今作のために書き下ろし。脚本を最後まで読んだうえで、佳乃さんの小夜子をイメージして作ってくださった。連続ドラマでは、台本に主題歌をどこでIN、OUTするかはあまり書かないものですが、今作では明記。演者さんも、主題歌を念頭に入れた演技をしています」
変顔もありの小夜子の百面相、小夜子&朋美のW木村のバトルは見どころ。
第5話では、小夜子は新たなターゲット、元開業医の笹本(麿赤児)に接近。家のリフォームを考えている彼の依頼を受けた朋美は、小夜子の思惑に気づき、不審感を抱く。朋美自身は、パートナー(長谷川朝晴)との関係に亀裂が入る一方で、本多との距離が縮まり……。
「原作や映画とは違った結末を考えていますし、関西らしい笑える場面とシリアスなシーンのメリハリにもこだわっています。脚本は、クランクイン前に仕上がっていたんですが、現場の雰囲気に合わせて、台本の改訂版を出しているんです。どんどん面白く、考えさせられる内容になっていますので、ぜひお楽しみください」
新たなターゲットから大金をせしめようと画策する小夜子と柏木
“W木村”対決に注目!
小夜子と朋美の超絶バトルは見どころのひとつだが、衣装でも対決してるって気づいてました?
「小夜子は男が惚れるような華やかなファッション。対する朋美は、カジュアルで、ボトムはデニムで統一しています。多江さんは、ピンヒールにデニムの衣装で統一した役柄は初めてだそうで、新しい挑戦をしていただいています」(杉浦P)
必見の小夜子ファッション
ゴージャスで派手な小夜子の衣装は毎回、数ポーズ登場するが、全部違うものなので、見逃せない!
「関西のおばさんのファッションというと“コテコテ”なイメージをお持ちの方が多いけれど、小夜子は違います。色遣いこそ派手ですが、おしゃれでセンスのいい感じにこだわっています」(杉浦P)
そんな小夜子ファッションのNGは、アニマルの顔入りの服だそう。
「ヒョウ柄やゼブラ柄は着ても、動物の顔がド〜ンとプリントされている服は避けています。反対に、とよた真帆さんが演じる後妻業の瀬川は、コテコテ(笑)。衣装も演技も振り切って、関西のおばさんになっていただいています」(同)