知れば知るほど面白い、ベルギー・ブリュッセルの「小便小僧」の5つの秘密
シンガポールの「マーライオン」、コペンハーゲンの「人魚姫の像」とともに、世界三大がっかりスポットといわれるブリュッセルの「小便小僧」。
世界各地にある「小便小僧」のなかでも、本家がブリュッセルの大広場「グラン・プラス」の近くにあるものです。
この小便小僧、本当にがっかりなのでしょうか?確かに、思ったよりも小さいことは否めませんが、長い歴史をもつだけに小便小僧にまつわる逸話はたくさん。
その背後にあるストーリーを知れば、この小さな像がたくさんの楽しみを秘めていることがわかるはずです。
・身長わずか55センチ
「ブリュッセルの最長老市民」のキャッチフレーズで知られる小便小僧。市民のあいだでは「ジュリアン君」の愛称で親しまれています。
この小便小僧が「がっかりスポット」といわれる最大の理由のひとつが、その小ささ。
世界で最も有名な像のひとつでありながら、身長はわずか55センチ。世界各国からの観光客は、小便小僧と一緒に写真に収まろうとしますが、その小ささゆえ、なかなかはっきりと写ってはくれません。
小便小僧の像は、15世紀にはすでに存在していたとされ、現在のブロンズ像は1619年に当時の著名な彫刻ジェローム・デュケノワによって制作されたもの。
ただし、噴水に設置されているのはレプリカで、オリジナルはグラン・プラスにあるブリュッセル市立博物館に所蔵されています。(ただし、その「オリジナル」も偽物ではないかという声もあります。)
・街を救った王子に由来?
少なくとも500年以上の歴史をもつ小便小僧。いったいどうしてこんな像が生まれたのか気になりますね。
その由来には諸説ありますが、一説にはブリュッセルを包囲した敵軍が火薬の導火線に火をつけたところ、ブラバン公の王子がおしっこをかけて消し、街を救ったという伝説があります。
この像が作られた当時、裸の彫刻というのは珍しいものではありませんでしたが、その後急速に街のマスコット的存在になり、市民に親しまれるようになったといいます。
フランスのルイ14世がブリュッセルを爆撃した際は、フランス側に雨が降るようにと、小便小僧が市民を代表する広報担当者に選ばれました。
・二度の盗難に遭っている
世界で最も有名な像のひとつである小便小僧は、これまで二度の盗難に遭ってきました。
1817年の盗難事件では、捕まった犯人は重労働を課され、焼き印を押され、公の場にさらされるという重い罰を受けました。それだけ、街のシンボルである小便小僧を盗んだ犯人に対する市民の怒りが大きかったということなのでしょう。
1965年の盗難事件では、翌66年に市内の運河で2つに割られた小便小僧の像が発見され、以降は盗難防止のために噴水にはレプリカが設置されるようになりました。
・世界一の衣装持ち?
「世界一の衣装持ち」としても知られる小便小僧。小便小僧が特別な日に衣装を身にまとうという習慣は17世紀から続いていて、世界各国から贈られた衣装はおよそ1000点にものぼります。
2017年には「小便小僧の衣装博物館」がオープン。以前は、グラン・プラスのブリュッセル市立博物館で衣装コレクションの一部が展示されていましたが、現在ではこの衣装博物館で100数十点あまりの衣装の数々を見ることができます。
ミッキーマウスになった小便小僧やプレスリーになった小便小僧、ホッケー選手になった小便小僧など、個性的な衣装の数々をまとった小便小僧は、見ているだけで笑みがこぼれます。甲冑や袴など、日本から贈られた衣装も必見ですよ。
「小便小僧の衣装博物館(GardeRobe MannekenPis)」
住所:Rue du Chêne 19 Bruxelles
公式サイト:https://www.brusselsmuseums.be/en/museums/garderobe-mannekenpis
・公式着付け係がいる
現在、小便小僧に衣装を贈るためには、「ブリュッセルコミューン理事会」に申請し、承認を得なければなりません。衣装の素材など、いくつかの条件を満たしていなければならず、誰もが自由に衣装を贈れるというわけではないのです。
そして、小便小僧に衣装を着せるのは、公式の着付け係。1756年には、すでにこの着付け係に関する記述があったとうです。あらゆる天候のなか、不安定なハシゴの上で、大勢の観光客の視線を集めながらの着付けは意外に大変なのだとか。
年間で130日ほど衣装を着用している日があるといい、服を着ている小便小僧が見られたらラッキーですね。ちなみに服を着ていても、水が出るよう大切な部分は開いています。
噴水で小便小僧を目にしただけなら、「思ったより小さいなぁ。こんなものか。」で終わってしまうかもしれません。しかし、背後にあるストーリーを知れば、小便小僧がいかにブリュッセルの歴史と深く結びついていて、市民にとって大切な存在であるかがわかります。
ブリュッセルの小便小僧は、知れば知るほど面白いのです。
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