東京・四谷にあるアジア大衆料理の店「稲草園(とうそうえん)」が2018年12月28日をもって閉店する。


黄色い看板が印象的だ

実は、Jタウンネット編集部があるジェイ・キャストのオフィスもこの店の近くにある。ランチに利用する部員も少なくなく、J-CAST社員御用達の一軒なのだ。そこで、閉店を控えた11月5日、記者は稲草園の名物である「ガパオラッカオ」を食べるため、店を訪れた。

オリエンテッドな雰囲気で味わう絶品料理

JRと東京メトロが走る四ツ谷駅を新宿方面に進む。外堀通りと新宿通りが交差する場所の1本手前の細い道に入る。飲み屋が軒を連ねるここ「しんみち通り」を入ってすぐ、ひと際目立つ黄色の看板が「稲草園」の目印だ。


しんみち通りでひと際目立つ稲草園の看板

黄色の看板とメニュー写真が目立つ外観。中に入ると外の明るさから一転し、少しくらい照明とオリエンテッドな装飾品の数々が出迎えてくれる。


店内

竹で覆われた壁とちらついた裸電球がより一層、店の雰囲気をどことなく妖しいものにしている。ドアは開けっ放しにされており、新宿通りを走る車やバイクの騒音が本場タイやベトナムの屋台店を彷彿とさせる。

筆者が注文したのは人気の品である「ガパオラッカオ」だ。

料理が届くまでほかのメニューを拝見させてもらうと、トムヤムクンやカレーといった定番のアジア料理、タイ風焼きそば「パッタイ」にクエディオナムと呼ばれる肉入りそばなどバラエティに富んでいる。


ガパオラッカオ

2階の厨房から昇降機で降りてきたガパオラッカオはセットとなっており、もやしとタケノコが入ったコンソメスープとザーサイ、タピオカのデザートがついてくる。


ガパオラッカオ

メインのガパオラッカオからはホーリーバジルの落ち着いた香りが漂ってくる。ご飯の上に乗せられた目玉焼きはゆったりと流れ落ちる黄身が特徴。ご飯や具と混ぜることで辛さが緩和され、低反発マットレスに寝転んだかのような柔らかな食感を味わえる。


目玉焼きの黄身

辛口に炒められているが、肉や汁は豪速球のデッドボールではなく、じわりと少しずつ広がり刺激も少ない。パサつかず柔らかい鶏肉の食感やタケノコの歯ごたえ、胡椒の風味を楽しむ余地が残っている。

ピーマンは味がある程度沁み込んでいるものの、苦味もしっかりと残っており、味のバリエーションを加えてくれる。


ガパオラッカオの米

お米はジャポニカ米ではなく、タイ米の一種であるジャスミン米が使われている。そのため、汁を吸い過ぎず、粘り気が少ないので重くなり過ぎない。

デザートで辛さを緩和

刺激を受け感度がよくなった舌はデザートで鎮める。タピオカ入りのデザートはココナッツミルクが入った濃厚な一品。


セットのデザート

甘さ控えめのココナッツミルクでアクセントとなるのがトウモロコシ。ねっとりと艶やか、穏やかな甘さのココナッツが辛さを包み込んで相殺していく。タピオカのはかなさとトウモロコシの甘みが濃厚なココナッツミルクを飽きさせない。

食べ終わるころには辛さが舌からなくなり、少し渋さのあるダンディな甘さが緩く口に居座った。

稲草園の女将さんによると、営業開始から23年。家族で頑張ってきたが体力の限界がきたことで閉店を決意したという。

すでに閉店の決まっている店の取材なんてと最初は恥ずかしがっていたが、笑顔で筆者の質問に答えてくれた女将さんの顔もあと少しで見納めだ。

(Jタウンネット編集部 大山雄也)