マンホールDJに「フタ拓」まで! 奥深〜い「マンホーラー」の世界とは
普段歩いている道に必ずあるマンホールの蓋(ふた)。地下の下水道や埋設された通信ケーブルなどの入り口となり、作業員以外は中々その存在を意識しない。
しかし、そんなマンホールの蓋にも趣味性がある。わかりやすいところでは蓋のデザインがそうだ。その地域に行かなければ見られない。ご当地デザイン。それがなぜか遠く離れた土地で使われている「越境蓋」。深みを知ってしまった人にとってマンホールの蓋は芸術作品と言える。
マンホールナイトのチラシ
このディープな魅力を語り合うイベントが東京、そして北九州で開催される。熱心な「マンホーラー」が集まるマニアックな時間。今回はそれを取り上げる。
マンホール趣味の発展に貢献
2018年11月3日に東京・滝野川会館で開催される「第10回マンホールナイト」。11年に始まったもので、マンホールについての講演を中心に写真コンテスト、グッズ販売も行われる。
講演は23区のマンホール総覧にはじまり、測量の蓋、撤去後保管された蓋の経緯と現状とファンの集いを通り越してマンホール学会とも言うべき内容だ。極めつけは魚拓ならぬマンホール蓋拓をとる男性の講演だ。
「ふたの東海道五十三次拓本」と題し、東海道53か所すべての宿場町にあるマンホール蓋の拓をとる。さらにこれらは全てカラーで拓がとられおり、現地に赴き型を写した後に実物とほぼ同じ色合いで色を付けていくのだという。あまりにレア取り組みのため、「東海道マンホールの図柄展」と題して展示会が行われたこともある。
これら貴重な話はパブリックビューイングとして北九州に届けられ、マンホール蓋拓の講演は北九州からの中継で行われる。
埼玉・行田市のマンホールの蓋だが、撮影したのは東京・千代田区の二番町ガーデン前。これが俗に「越境蓋」と呼ばれる(2018年3月28日記者撮影)
すでに10回目の開催だが過去にはどんな内容が行われてきたのか。マンホールナイトの公式サイトをたどった。
第1回目は05年に「路上の芸術」(新風社)という本を出版し、「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)にも出演した垣下嘉徳さんの講演にはじまり、マンホール蓋の文字の「萌え」の研究成果発表などが行われた。また、マンホールの蓋関連書籍の販売や鉛筆マンホール拓本も実施されている。
以降はマンホールの蓋DJによる「下水道音頭」のプレイ、「東京23区のマンホール番号から位置を特定する研究」、「アニメに登場する架空の蓋と実在の蓋。その確認と検証」などがある。
また、デザインマンホール蓋と同様に「マンホールカード」になるコレクター品もあり、これについての講演もあった。
マンホール関連書籍の著書や研究を行う人の成果発表など内容が尽きない。10回目以降どこまで継続し、深化をしていくのか。最初は古書カフェからスタートしたが今では会館クラスを利用するまで拡大。もしかしたら幕張メッセや東京ビッグサイトなど大会場でマンホールについて語られる日が来るのかもしれない。
北九州ではサミットが開催
マンホールナイトのパブリックビューイングが行われるが、その先でもマンホールを愛する「マンホーラー」が集まっている。
マンホールサミットin北九州のチラシ
「マンホールサミットin北九州」は8回目の開催。15年に東京・秋葉原を皮切りに神戸、川越、倉敷など全国を行脚し、今回は初めての九州で開かれる。
こちらはショッピングセンターやホール、水環境センターなどで開かれ、展示がマンホールナイトより大規模なのが特徴。マンホール鉄蓋の上で焼くホットケーキや鉄板焼きの試食やマンホールコースターの塗り絵といった子どもでも楽しめる実演的な企画もある。
来場者は前回開催の倉敷で約3500人と非常に多い。リレートークでは下水道河川局や水道機器メーカーの職員のほか、過去のマンホールナイトに登場したマンホーラーも登壇。マンホールカードの制作秘話や裏側の話が聞ける。
北九州では新マンホールカードの限定配布やキャラクターデザインマンホール蓋やマンホールカード全種展示、国交省下水道部と北九州市上水道局の特別対談、マンホーラーによるリレートークが行われる。
こちらもマンホールナイト同様に11月3日の開催だ。
まだまだ未知なる趣味とはいえ、外に出てみればすぐにでも出会えるマンホール蓋。視線を下に変えた瞬間「マンホーラー」人生が幕を開けるかもしれない。