2018年9月30日に上陸し、猛威を振るった台風24号。その影響で根元からなくなってしまった鹿児島・奄美市にある名瀬港西防波堤灯台が10月13日、約250メートル離れた海底で発見された。各メディアが報じている。


室戸岬灯台

同時に、この灯台の材料が強化プラスチック製であることも報じられた。灯台といえば紀伊半島南端にある潮岬灯台や、千葉・銚子の犬吠埼(いぬぼうさき)灯台のように石やレンガで建てられた大きく頑丈なものをイメージする。しかし調べてみると、様々な灯台の種類があることがわかった。

強化プラスチック製も40年の歴史

そもそも灯台は航路標識のうち光波標識の一種で、その大きさは船の経路によるところが大きい。例えば犬吠埼灯台や青森・尻屋埼灯台などは遠くから陸に近づいてくる船を想定しており、高い場所や塔そのものを高くしてより遠くまで照らせるようになっている。港の出入りなど遠くから進入しない船を想定している場合は小型のものが設置される。

太平洋に向かって設置される犬吠埼灯台は高さ約31メートル、台風24号の餌食となった名瀬港西防波堤灯台は港の出入り口にあり高さ約11メートルだ。

ほかにはどういった材料があり、どう使われているのか。

Jタウンネット編集部は2018年10月15日、海上保安庁交通部整備課の担当者に対して取材を行った。

まず、現存している灯台の材料を聞いた。現在、6種類が使われており、

「レンガ、石、鉄筋コンクリート(RC)、コンクリート、鉄(鉄骨を含む)、強化プラスチック(FRP)」

がその内訳だ。

この中でレンガと石については明治時代に作られており、現在新たに作られる場合の採用率は低い。また、「保存灯台」と呼ばれる歴史的、文化財的価値の高さから海上保安庁が選定し、保存処置を講じる灯台に石とレンガで作られたものが多い。こうした背景から灯台そのものが観光地として成り立っているものもあり、一般的にイメージされる灯台もこれが多い。

新たに作られるものが多いのはRC、コンクリート、鉄、FRPの4つだ。これらのどれを使うかは設置場所の波の高さは地盤といった条件を調査したうえで選定される。

それぞれのメリットデメリットもあり、それについては

「RC、コンクリート→(メリット)頑丈(デメリット)重い
鉄→(メリット)価格が安い、軽い(デメリット)塩害を受けやすく、防食処理が必要
FRP→(メリット)軽い、錆びない(デメリット)鉄より強度がない、強度確保のために素材を多く使うため値段が上がる」

といった特徴が挙げられ、設置場所の条件に耐えられる材料が選定される。

例えば、防波堤の上や地盤が弱い場所に設置される灯台であると、重さがネックになるため、RCとコンクリートは外れる。次に、設置される場所の波の高さ。波の影響を受けやすい場合、鉄は浸食が激しくなるため、防波堤の上や地盤が弱く波を受けやすい場所ではFRPが選ばれる。

名瀬港西防波堤灯台は、名瀬港の入り口付近の防波堤に設置してあり、波の影響も受けやすいことからFRPが採用されたものと思われる。強化プラスチックの灯台は一般的にあまり聞き馴染みがないものの、1978年に初めて設置されており、珍しいものでは決してないという。

香川県高松市、「ガラスの灯台」で知られる高松港玉藻防波堤灯台(せとしるべ)があるが、ガラスはあくまで装飾であり、構造は鉄骨である。

一方、調査して材料を選出してもトラブルに見舞われることはあるようで、2005年2月3日の西日本新聞によると山口県・萩港のRC製の中小畑浦沖防波堤東灯台が防波堤ごとなくなったほか、04年9月に宮崎県・細島港にあるRC製のイクイバエ灯台が台風の高波で全壊。今回の名瀬港西防波堤灯台に限らず、灯台管理は難しいようだ。