みその“殺菌作用”が話題に 「古くからの知恵」「塩分のおかげ?」などの声、実際には?
みそと食中毒の関係について先日、ネット上で話題になりました。みそは「みそ漬け」に代表されるように古くから保存食として活用されてきましたが、それは、みその発酵・熟成の過程で、食中毒の原因となる細菌が死滅するからだそうです。
これについてネット上では、「すごい」「古くからの知恵ですね」「塩分のおかげ?」などさまざまな声が上がっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。
こうじ菌や乳酸菌などの「発酵菌」が存在
Q.そもそも、食中毒の原因菌が繁殖・活発化しやすいのはどのような環境でしょうか。
関口さん「食中毒の原因菌をはじめとする細菌の繁殖には、温度が最も重要です。至適温度はそれぞれ違いますが、ほとんどの細菌は20〜40度で繁殖し、35度前後の温度帯で活発化すると言われています。
加えて、細菌は水分に溶けた栄養分を分解して摂取するため、湿気を好みます。食品や残菜、有機物の汚れが栄養となりますが、特にタンパク質は最良の栄養源です。そのため、生肉や鮮魚など、水分とタンパク質の多い食品を好みます」
Q.みその中で、食中毒菌が死滅するメカニズムを教えてください。
関口さん「みそが発酵を続けている間は、生きたこうじ菌や乳酸菌などの『発酵菌』が存在します。これらの菌が異物を分解して雑菌の繁殖を抑えるとともに、高濃度の塩分による殺菌作用が関係していると考えられます」
Q.みその種類(赤、白など)によって、菌に対する効果は違うのでしょうか。また、減塩タイプでも同様の効果は得られますか。
関口さん「みその色は、大豆の糖とタンパク質が結合して起きる『メイラード反応』によるもので、褐変物質がみその色を濃くさせます。タンパク質が多い大豆の含有量が増えるとメイラード反応が起きやすくなります。逆に、色の薄いみそはコメの割合が多く、色がつきにくい特徴があります。
ともに、発酵過程においては同じ発酵菌が存在するので、殺菌作用は同じです。ただし、減塩タイプは塩の殺菌力が減るため、全体における殺菌作用は減少するのではないか、と考えられます」
Q.みそを使った料理でも、食中毒の危険性は低下するのでしょうか。
関口さん「みそは、非加熱で発酵菌が生きている場合に殺菌力を発揮しますが、調理後の料理は通常の味付けと変わりなく、環境が悪ければ雑菌の繁殖も起こります。また、調理によって塩分濃度が薄まれば、傷みやすくなります」
Q.食中毒予防の観点から、みそを上手に活用する方法はありますか。
関口さん「みそと酒、みりんなどを用いて作る『みそ漬け』は素材を長持ちさせるので、お勧め。みそに油や薬味を加えた『つけダレ』など手作り調味料のベースとして使うのもよいでしょう。
また、みそにみりんや砂糖、おろしショウガ、豆板醤などを混ぜた合わせ調味料『炒めみそ』を作っておくと、『ナスのみそ炒め』『キャベツと肉のみそ炒め』『鮭のちゃんちゃん焼き』など、冷蔵庫の食材をみそ炒めにする際に活用でき便利です」