狐の嫁入りをストーリー仕立てで描いた江戸時代の作品「狐廼嫁以李」が面白い!

写真拡大 (全8枚)

「狐の嫁入り」という言葉を聞いたことはありますか?古くから日本の各地に伝わるもので、夜にいくつもの怪火を見た時に、その灯りが嫁入りの提灯行列のように見えることから、このような現象を”狐の嫁入り”と呼んでいました。また、怪火を狐火と呼んだりもします。

このような言い伝えが元と思われる「狐の嫁入り」に関連した伝承や伝説なども各地に存在します。また、晴れているのに雨が降っている天気雨の状態を「狐の嫁入り」と呼ぶこともありますが、これは、天気なのに雨が降るという不思議な状況まるで狐に化かされているように感じることからきています。

江戸時代、「狐の嫁入り」の言い伝えはさまざまな書物や日本画の題材にもなっており、葛飾北斎や歌川広重も「狐の嫁入り」を題材にした作品を手がけています。

今回は「狐の嫁入り」を題材にした江戸時代の日本が作品から、橘岷江(たちばなみんこう)が明和2年(1765年)に描いた「狐廼嫁以李(きつねのよめいり)」を紹介します。

橘岷江は、京都で縫箔師として活動していた時代を経て、江戸に移り絵師としての活動を行いますが、それほど多くの作品は残していないようで、情報も少ない人物です。代表作には「彩画職人部類」があり、この作品はまた改めて紹介したいと思います。

狐の嫁入り前後を時系列に紹介「狐廼嫁以李」

狐の嫁入りを描いた絵画の多くは、嫁入り行列のシーンにフォーカスして描かれているのですが、「狐廼嫁以李」は、狐が嫁入りをする前後を時系列に6図に分けて描いた、なかなか面白い趣向の作品なんです。

見初め

橘岷江「狐廼嫁以李 見初め」

旦那さんになる男性?オス?に初めて逢いに行く「見初め」のシーン。狐の世界でも、この時代は恋愛結婚は少なかったのでしょう。

結納

橘岷江「狐廼嫁以李 結納」

狐の世界でも結納の儀式はしっかりと。取り交わす品々が次々と運ばれてきます。

日照り雨

橘岷江「狐廼嫁以李 日照り雨」

日照り雨=天気雨=狐の嫁入り…ということで、結婚当日。家族でお婿さんのもとへ。

盃事

橘岷江「狐廼嫁以李 盃事」

結婚の盃事をおこない、晴れて正式な夫婦に。白無垢姿がステキです。

産湯

橘岷江「狐廼嫁以李 産湯」

元気な赤ちゃん誕生。初めてのお湯につかります。もちろん生まれてくる赤ちゃんは狐。

お宮参り

橘岷江「狐廼嫁以李 お宮参り」

元気な赤ちゃんが誕生したことの報告と今後の健やかな成長を願ってお宮参り。

当時の結婚の流れを狐で再現したユニークな作品ですね。このような作品に登場するほどに「狐の嫁入り」の伝承は、庶民の間で言い伝えられていたことがわかります。狐は日本では古くから信仰に密に関わってきましたから、身近に感じる動物だったのでしょう。

狐廼嫁以李(きつねのよめいり)