これまでの24年間の人生で、音楽フェスティバルに一度も行ったことがなかった。

音楽は「イヤホンで聴けば十分」だと考えていた。YouTubeで好きな曲を検索してどこでも聴けるし、曲でテンションが上がると、盛り上がりを「独占」できる感覚に浸れるからだ。

そんなJタウンネット記者が、2018年8月18日、都市型音楽フェスティバル「SUMMER SONIC(サマーソニック)」、通称「サマソニ」でフェスデビューした。

まさに「お祭り」

サマソニは2000年から、毎年8月の土日2日間に千葉県と大阪府で開催される、国内屈指の音楽フェスだ。19回目を迎える今年は、8月18、19日に行われた。

例年、全国から観戦する人が後を絶えず、今年は千葉で8万人、大阪で5万人が観戦した。今年の会場は、千葉は幕張メッセとZOZOマリンスタジアム(いずれも千葉市美浜区)、大阪は舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツランド、大阪市此花区)だった。

このうち筆者は、千葉の会場を訪れた。18日は快晴、気温は30度以下。今年の酷暑に身体が慣れてしまったのか、涼しく感じた。


快晴の下、入口へと向かう人々(以下編集部撮影)

会場に行くと、すでに熱気が渦巻いていた。

弾け飛ぶような声で歌うアーティスト、嬌声を上げる聴衆で空気は震えている。横一列に並ぶグルメの屋台やグッズには、長蛇の列があった。

細くて白い腕を大胆に出した美女がノズルでミストを噴射。笑顔でミストの中を切り抜ける人が見られ、夏らしさを感じる。



まさに「お祭り」だ。行き交う人皆が白い歯を見せ、楽しそうにしているのを見ると、思わずこちらも気分が上がる。



紙巻きタバコは吸えない

会場内を歩いていると、ところどころで、青色の看板が立つブースが目に付いた。フィリップモリスジャパン(PMJ)が無料で、加熱式タバコ「IQOS」(アイコス)を貸し出すブースだ。なんでも、今年のサマソニでは、一般的な「紙巻きタバコ」は喫煙できず、加熱式のみになっているそうだ。


レンタルステーション

こうしたエリアが、千葉で12、大阪に6つ設置されている。借りるには名前と電話番号を記入するだけだ。レンタルを行うアイコスのフレーバーは7種類。「お客様ご自身に合った味わいを選んでもらいたいですね」と話すのは、PMJの高橋宏さん。他人から借りたものを使ってみたところ「自分に合わない」と辞めてしまうことがあることから、今好みのフレーバーを選び使ってもらいたい、と語気を強める。千葉・大阪会場で推定2万人の成人喫煙者に対し、貸し出しを積極的に行いたいそうだ。


フィリップモリスジャパン・高橋宏さん


貸し出されるアイコス

PMJのディレクター、坂牧真美さんは、

「喫煙者の方々が紙巻タバコからより良い選択肢である加熱式タバコへのスイッチングを促進したいと思います」

と語る。

同社は昨今、紙巻きから加熱式へと軸足を移していて、18年6月時点で、すでに国内で延べ500万人がアイコスを利用しているという。

「それが喫煙者に対してはより良い選択肢であり、非喫煙者にも迷惑をかけずに済むからです」

紙巻タバコの場合、燃やすことで有害性物質が発生し、副流煙や臭いが非喫煙者の方へ流れる。だが加熱式だと、有害性物質や臭いは生じにくくなるそうだ。

「我々の実証実験で検証出来ている以上は、加熱式を促進すべきだという英断に至りました」

ビーチにもスポットがあった



勝手ながら「音楽フェスといえばタバコ」といった印象を持っていた筆者。今回サマソニがPMJと組んだ理由は、どこにあるのだろうか。サマソニを主催する、クリエイティブマンプロダクションのマーケティング・運営部で統括部長の小池邦彦さんは、こう語る。

「今回、喫煙環境が大きく変わっていく中、サマーソニックは煙のない社会の実現に賛同し、本年度より、紙巻タバコから加熱式タバコへの切り替えを始めたいと思っております」

PMJのビジネス転換や、受動喫煙防止法案など喫煙環境の変化を踏まえ、「両社の思いが一致し、開始しました」とも述べた


左:フィリップモリスジャパン社の坂牧真美さん 右:クリエイティブマンプロダクションの小池邦彦さん

ZOZOマリンスタジアム内のアイコス喫煙スポットは、屋外にある。だが、かたわらを通り過ぎても、煙の臭いはしなかった。まさに「煙のない音楽フェス」がそこにはあった。