ピリカによるマイクロプラの調査

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 海のゴミとなる廃棄プラスチック問題の解決に貢献しようと日本企業が動きだした。ベンチャーのピリカ(東京都渋谷区)は水中に漂う微細なプラスチックのゴミ「マイクロプラスチック(用語参照)」の流出調査を始めた。日本製紙が紙素材によるプラ製品の代替化を提案する部署を立ち上げたほか、すかいらーくホールディングス(HD)が日本の外食大手では初めてプラ製ストローの提供をやめることを決めるなど動きが広がっている。(編集委員・松木喬)

 ピリカは3日、東京・品川の河口でマイクロプラを調査した。同社はバケツほどの大きさのマイクロプラ収集装置を開発済み。海や河川に沈め、スクリューを回転させて水をかき集めてマイクロプラを捕捉する。

 地方議員からの依頼が増えており、これまで関東や関西で調査を実施してきた。水20トンから小瓶が満杯になるほどプラ片が集まることもあったという。

 マイクロプラのほとんどは陸で廃棄された使い捨てプラが河川から海へ運ばれ、砕けて細かくなったと考えられる。しかし、発生源について詳しい研究がされないまま対策が議論されている。同社の小嶌不二夫社長は「流出場所を特定できれば解決策も考えやすい」と訴える。2011年設立の同社は街のゴミ拾いを支援するITシステムを提供している。海ゴミ対策にも貢献しようと、マイクロプラの調査を始めた。

 そもそも、使い捨て製品でのプラの使用削減がマイクロプラ対策となる。そこで日本製紙は8月に、プラから紙素材への代替を提案する「紙化ソリューション推進室」を新設した。飲料や食品の紙容器を提供してきた知見を生かし、代替を検討する企業への相談窓口となる。

 外食チェーンでは、すかいらーくHDが20年までに国内外3200店すべてでプラ製ストローの提供をやめる。まずは12月までに日本で展開するファミリーレストラン「ガスト」の1370店で廃止する。海洋ゴミの問題が注目されており、企業として廃プラの削減に取り組むことにした。すかいらーくHDは年1億500万本、その内ガストは最も多い6000万本のプラ製ストローを使用しているという。米スターバックスコーヒーや米マクドナルドも海外店舗で廃止の方針を打ち出しており、日本の外食大手ですかいらーくHDが初めてとなる。

 欧米では使い捨てプラ製品の廃止に踏み切る企業が増えている。米マリオット・インターナショナルは、世界6500以上の傘下ホテルで19年7月までにプラ製のストローやマドラーを廃止する。

 米ヒルトンや英インターコンチネンタルホテルズグループもプラ製ストローを廃止すると発表。インターコンチネンタルホテル大阪(大阪市北区)は7月中旬、会員制交流サイト(SNS)で紙製ストローを使用していると公表した。

 こうした取り組みは、環境対策だけが目的ではない。欧州で資源循環の議論を主導する英エレン・マッカーサー財団によると、1回しか使われないプラ包装材の廃棄量は膨大で、経済価値にすると年800億―1200億ドル(約8兆8800億-13兆3200億円)が捨てられている計算になる。使い捨てプラの削減は、巨額の損失を回避する経済効果も期待できる。

【用語】マイクロプラスチック=大きさ5ミリメートル以下の微細なプラスチックゴミ。分解されずに海に漂い、有害物質を吸着する。汚染されたマイクロプラは魚や貝の体内に蓄積されるため、生態系への悪影響が懸念される。環境省の調査で、日本周辺海域では北太平洋の16倍のマイクロプラが確認された。